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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年6月)

「政府・半導体産業を新たな国家事業として位置付ける」

今月の特徴は1.緊急事態宣言解除、2.日銀の動向、3.ワクチンパスポートの動向、4.株主総会の動向、5.エネルギーの動向となった。                                           

 

1.緊急事態宣言解除

政府は9都道府県での緊急事態宣言解除を決めたが、まん延防止等重点措置へ移行する都道府県も多く、経済への影響が引き続き懸念されている。全国銀行協会の三毛兼承会長は会見で「長期化する感染防止措置で飲食や宿泊など、対面型サービスや食材納入卸売事業者などでは厳しい経営環境が続いている」とした上で、「今後もきめ細やかな資金支援を継続することが最重要課題だ」としている。一方、リバウンドへの懸念は、緊急事態宣言解除前から既に示されていたが、ワクチンの接種に制約がある中で、感染拡大が加速しており、東京以外でも感染者は増加傾向を示している(NHK)。

 

2.日銀の動向

日銀は6月17日、18日に行われた金融政策決定会合で、気候変動問題に対する民間の金融機関の多様な取り組みを支援するため、新たな資金供給の仕組みを導入する方針を決めた。このときの主な意見を29日、公表した。「気候変動への対応は国民経済の健全な発展や、マクロ経済の安定という中央銀行の使命と関連付けられるべきだ」とか、「気候変動の影響は経済や金融システムに及ぶ。金融政策面での対応については検討すべき要素は多いが、日銀として方向性を示す時期に来ている」などとした政策委員からの意見が出た(NHK)。

 

3.ワクチンパスポートの動向

経済界からは「ワクチンパスポート」の導入を求める声が高まっている。ドイツ、イタリア、ギリシャ、チェコなどでも既に導入済みの「ワクチンパスポート」は新型コロナのワクチンを接種したことを公的に記録、証明するもので、政府は、「ワクチンパスポート」について7月中下旬をメドに書面(紙)の形式で導入する方針。申請の際には旅券パスポートが必要となる。日本では国内でも効果的に活用し、大きな打撃を受けて落ち込んだ個人消費の回復につなげたいねらいがある(NHK)。

 

4.株主総会の動向

29日、600を超える上場企業が株主総会を開催した。今年は会社の課題を厳しく指摘する株主提案が飛び出した。三菱UFJフィナンシャルグループの株主総会の会場前では石炭火力発電への投資や融資を続ける三菱UFJに対し、抗議デモが行われていた。総会でも、株主である別の環境団体が気候変動対策を定款に盛り込むよう議事案が提出された。否決されたものの、株主のおよそ4分の1が賛成票を投じるなど、三菱UFJ側に一定の圧力を与える結果となった。近年、株主総会で存在感を増しているのが、物言う株主(アクティビスト)。東芝側が提案した取締役会議長など、2人の取締役再任について海外の物言う株主が反対を表明し、その結果、東芝側の提案が否決された(テレ東)。一方、東京電力の株主総会では、前の経済同友会代表幹事で三菱ケミカルホールディングス前会長の小林喜光を取締役に選ぶ人事案を承認し、小林が会長に就任した。小林会長の下、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備など不祥事が相次ぐ組織の抜本的な改革や、福島第一原発の廃炉や賠償、処理水の対応などにあたっていく(NHK)。NTTの株主総会では総務省幹部への接待問題について澤田社長が謝罪した。社長ら経営陣が総務省幹部へ最大1人16万円超の会食を提供したことが明らかになっている。原因は経営陣の認識の甘さにあったとして今後は利害関係者との個別会食を禁止するとしている(TBS)。

 

5.エネルギーの動向

運転開始から40年を超えた関西電力の美浜原発3号機が約10年ぶりに再稼働した。原発の運転期間は、東京電力福島第一原発の事故後「原則40年、延長は最長20年」とするルールが定められている。新基準のもとで運転開始から40年を超える原発が再稼働するのは全国初となる(TBS)。NTTは千葉市の森の中にセブンイレブン専用の太陽光パネルを建設した。作られた電力はセブンイレブンの40店舗で使用され、セブンイレブンは100%再生エネルギーのクリーンなコンビニへと生まれ変わる。店舗自体にも屋根などに太陽光パネルを設置しているが、既に現在約8700店舗に設置済であり、2030年までに全店舗の半数の約1万1000店舗に広げていくとしている。セブンイレブンは2050年には二酸化炭素の排出を実質ゼロにする目標を掲げている(フジ)。

 

 

●新潮流

「ワクチン・職場接種・再開のめど立たず」

場接種は突如、受け付けが停止となった。申請があった数がワクチンの供給量を上回ったというのがその理由。政府はモデルナ製のワクチン3300万回分を職場や大学の接種に使う予定だったが、25日の時点で3642万回分もの申請があり、340万回分も申請の数が上回ったため、菅総理はこのまま新たな受け付けは行わない方針。再開のめどは立っておらず、現場からは再開を求める声が上がっている。職場接種の手配を行っている貸し会議室大手のティーケーピーは中小企業を対象に医師やワクチンの確保、接種までの手配を行うサービスを始めており、これまで1300社、60万人分を申請したが、受け付けの停止で申請できない分が出てきた。政府自らがワクチン接種にブレーキをかけた格好の今回の事態。野党は見通しの甘さを批判している(TBS)。

 

 

●注目点

「半導体産業・“日本の強み生かした戦略を”」

府は4日、半導体産業を国家事業として位置付けた新たな戦略をまとめた。日本の半導体産業は、1980年代には世界シェア50%以上を占めていたが、現在は10%程度まで低下している。公表された新戦略では、海外メーカーと協力して日本国内に最先端の工場を設立することや、次世代製造技術の国産化を進めることを掲げている(テレ東)。20世紀の戦略物資が石油だったとすれば、デジタル化の進展で21世紀の戦略物資ともいえるのが半導体。米中両国が激しく競争する中で、日本も国際情勢に左右されない技術開発力と生産力を持つことや、経済安全保障という考え方が重要性を増している。こうした観点を踏まえ、これまでの政策を検証しながら、国を挙げた活発な議論が必要な段階に入っている。6月29日に発表された通商白書では「日本としては、半導体や希少な資源のレアアースなどの調達先の多様化を進めるとともに米国など友好国と連携しながら、グローバルなサプライチェーンの構築を急ぐことが重要」との文言が確認できる。調査会社オムディア・南川明シニアディレクターは「半導体製造に欠かせない素材や製造装置といった日本の強みを生かした戦略が必要となっている。半導体と一緒に使っている電子部品、ディスプレイ、それを作り出す製造装置とか、のせるための基板で世界でもトップシェアを持っている企業が日本には多い。半導体企業を取り込んで一緒にたたかう戦略を考えるべき」と指摘した(NHK)。 

 

 

6月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・良品計画、第2位・王将フードサービス、第3位・エーザイ」

2021年6月度におけるCM価値換算ランキングでは「良品計画」が29億6700万円で第1位に輝いた。具体的には、グリラスと共同開発した「コオロギせんべい」「MUJILabo」という性別のない服の販売開始などの紹介や、「飲料容器と再生できるアルミ缶に変更した」等のPRが貢献した。第2位は「王将・持ち帰り専門店オープン・コスト抑え売り上げ狙える理由」などの報道で「王将フードサービス」となった。第3位は「進行“変化”に期待・アルツハイマー病の新薬治療」などの報道で「エーザイ」、第4位は「コロナ禍に最高業績のスゴ腕・絶品!手巻き&定番ネタ」などの報道で「FOOD&LIFE COMPANIES」、第5位は「夏の旅行予約が回復の兆し・空の便・1日10万人超?何が」などの報道で「ANAホールディングス」、第6位は「JALも開始・進む職域接種・1回目の接種…約10%」などの報道で「日本航空」、第7位は「なるほどザ新興国・ドバイ・廃棄物発電に注目」などの報道で「伊藤忠商事」、第8位は「GUが乳幼児向け新商品・大きめボタンで活性化」などの報道で「ファーストリテイリング」となった。第9位は「コロナ禍の新生活様式に対応・ローソン“1人用惣菜”を強化」などの報道で「ローソン」、第10位は「首都圏“五輪編成”臨時列車発表」などの報道で「東日本旅客鉄道」となった。

 

6月の人物ランキング

「第1位・AMAZON・ジェフベゾスCEO、第2位・トヨタ自動車・豊田章男社長、第3位・佐々木酒店・佐々木実社長」

第1位・AMAZON・ジェフベゾスCEO36件(アマゾンCEOベゾス宇宙へなど)、第2位・トヨタ自動車・豊田章男社長23件(2023年は東京モーターショー開催へなど)、第3位・佐々木酒店・佐々木実社長21件(105年続くまかない・高田馬場の酒店など)、第4位・NTT・澤田純社長18件(NTTの太陽光発電・首都圏・セブン40店舗になど)、第5位・ソフトバンクグループ・孫正義社長16件(ワクチン接種で・ホークス観戦を半額など)、第6位・アキダイ・秋葉弘道社長15件(“ポークショック”豚肉が高騰など)、第7位・日本銀行・黒田東彦総裁14件(FOMCと日銀金融政策決定会合など)、第8位・テスラ・イーロンマスクCEO8件(オーストラリア電池材料調達・テスラ年間10億ドル以上になど)、第9位・JR東日本・深澤祐二社長7件(通勤ラッシュが大きく変わる?電車運賃にダイナミックプライシングなど)、第10位・FOOD&LIFE COMPANIES・水留浩一社長7件(東大→電通→JAL→寿司店・エリートを怒鳴った“神様”など)。

 

●テレビの窓

「オリンピックに振り回される日本企業」

近畿日本ツーリストなどを傘下に持つ旅行大手のKNT-CTホールディングスは東京オリンピックの公式観戦ツアーの販売を再開しないと発表した。東京オリンピックパラリンピックの公式観戦ツアーは大会のスポンサー企業であるJTB、KNT-CTホールディングス、東武トップツアーズの3社が取り扱っている。会社ではすでにツアーに申し込んだ人には影響はないとしている(NHK)。オリンピック期間中は、夜中に臨時列車が走ることになっている。JR東日本によると、臨時列車は開会式前の7月21日から閉会式当日の8月8日まで、首都圏の21路線で日中や終電よりも遅い時間帯に運行される予定。山手線や京浜東北線などについては、深夜2時台も電車を走らせるという。無観客開催となった場合には、臨時列車を回送にして対応することなどを検討している(フジ)。東京オリンピックの競技会場での酒の販売についても注目が集まっていたが、組織委員会・橋本聖子会長は「正式に酒類の販売を取り止める」と発表した。橋本会長は「スポンサーであるアサヒビールさんも、同じ様に大変なご心配を頂いていたが、私どもの判断については、同意を頂いている」と述べた。神奈川県・黒岩知事も「オリンピックだけが特別扱いなのは納得が得られない。適切な判断だと思う」と組織委員会の決定を支持した。組織委員会が発行したガイドラインには、競技会場で酒の販売はしないことや、持ち込みを禁止することが盛り込まれた。(テレ朝)。 

 

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