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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年4月)

「円安進行・1ドル=130円台突入」

今月の特徴は、1.20年ぶりの円安、2.物価高騰の影響、3.日銀・金融政策決定会合、4.ロシア制裁の影響、5.震度6強地震の影響、6.エネルギー対策の動向となった。                  

 

1.20年ぶりの円安

28日、東京外国為替市場の円相場は1ドル130円台となり、20年ぶりの円安水準を更新した。日銀・黒田総裁は円安が経済や物価に与える影響を注視していく考えを示した。ピクテ投信投資顧問・市川眞一シニア・フェローが「130円で止まる保証はない」「(日銀は)なるべく速い段階で出口戦略を考えていくべき」と話した(フジ)。みずほリサーチ&テクノロジーズ・酒井才介上席主任エコノミストによる試算では、年間の収入が400万円~500万円の世帯では、食料品や電気代などエネルギー関連の支出が年間1万4900円ほど増えると見られている(NHK)。

 

2.物価高騰の影響

帝国データバンクの調査によると、主要食品メーカー105社が今年値上げを行う商品は6167品目に上る。仕入れ値の値上がりは小売店の経営を圧迫することになる。賃金が上がらない中での止まらない円安に加え、更なる値上げラッシュで消費者の生活が圧迫されることになる(TBS)。サイゼリヤ・堀埜社長は、コロナ禍と原材料価格の高騰を踏まえ懸念を示した。吉野家HD・河村社長は「ただでさえ牛肉などの食材の価格が上がっているし、物流費や容器、袋などの包材費も上がっていて円安はトリプルパンチだ」と述べた(フジ)。

 

3.日銀・金融政策決定会合

日銀が金融政策決定会合を開き、大規模な金融緩和策の維持を決めた。今後も低金利政策を続ける姿勢を強調したため、円相場は一気に円安へと動いた。会見を開いた黒田総裁は「経済を下支えするため、粘り強く金融緩和を続けていく」と説明し、「今の経済政策を維持することが経済回復のために重要だ」と強調した。政府関係者からは「黒田総裁は頑なだ」などと批判の声もあがっている。給料が上がらず物価だけが上昇する悪い円安にならないよう政府と日銀が一体となった政策が求められる(日テレ)。

 

4.ロシア制裁の影響

帝国データバンクによるとロシアの企業と直接取引する日本企業は300社あまりあり、更にこれらの企業と原材料や部品などのサプライチェーンで取引関係がある企業は約1万5000社に及んでいる。全体の約3割の4653社がロシア貿易と関係していて、経済制裁などの影響を強く受ける可能性がある。輸出では10数万台を超える自動車生産の需要が当面なくなる見込みで、輸入は木材関連の業種が多く、ロシアが輸出禁止を打ち出したため、建築用の合板などが品薄になる恐れがある(テレ朝)。

 

5.震度6強地震の影響

経済産業省の来季の冬の電力需給の見通しによると、東京電力管内では、3月、東北地方で起きた震度6強の地震で発電所の設備が壊れた影響もあり、「安定供給に必要な予備率3%を大幅に下回って、マイナスになる」と極めて厳しい見通しを示した。10年に1度の厳しい寒さを想定した場合、東京電力の管内では、来年1月は-1.7%、2月は-1.5%になるとしている。経済産業省は「万が一に備えて、計画停電の準備が必要になる」とし、「追加の供給力を確保する必要がある」としている(NHK)

 

6.エネルギー対策の動向

欧米などで実用化に向けた動きが見られる新たな原子炉の開発について、経済産業省はワーキンググループのオンライン会合を開いた。会合では「“脱炭素社会”の実現やロシアによる原子力発電所への武力攻撃などの社会情勢を踏まえ、長期的なビジョンを見定めたうえで、安全の担保や廃棄物の処理などと併せて議論すべきだ」との意見が出された。引き続き議論し、利点や課題などについて、ことし夏ごろまでにまとめるとしている。一方、国が導入を進める洋上風力発電の有望な区域として指定された千葉県いすみ市沖について、千葉県は環境に与える影響などについて検討する会合を開いた。動植物の生態に詳しい複数の専門家からは「洋上風力発電は海の生態系に影響を与えるおそれがある。詳しい調査を行うべきだ」とする意見が出された。会合では今後、洋上風力発電が海の景観や眺望に与える影響などについても検討することにしている(NHK)

 

 

●新潮流

「大企業景気判断・7期ぶり悪化」

シアによるウクライナへの侵攻を背景に、日本経済の先行きに不透明感が増している。大企業の製造業の景況判断は3か月前の調査から3ポイント悪化、大企業の非製造業の景況感も1ポイント悪化した。いずれも新型コロナ感染拡大で初めての緊急事態宣言が出された2020年6月の調査以来、7期ぶりの悪化となった。大手製造業では、3か月先の見通しも5ポイントのさらなる悪化を予想し、2022年度の事業計画については、経常利益は前年度比で3%近いマイナスになると見込んでいる。今回の調査期間は2月下旬から3月までで、大半の企業がロシアの軍事攻撃開始から2週間前後にあたる時期に回答を寄せ、侵攻の影響が調査に十分に織り込まれていたものではない。現在、日本が直面している課題として、ウクライナ情勢を背景とした資源食糧価格の高騰がある。さらにエネルギー価格の高騰で、原油価格は依然として1バレル100ドル前後で高止まりしている。小麦やトウモロコシの値段も平時の1.5倍から2倍程度まで上がっている。さらに自動車や電子部品に使われるアルミニウムやパラジウムなどの資源も軒並み価格が上がっていて、こうしたものが企業の収益を圧迫していく可能性がある(NHK)。

 

 

●注目点

「強くなる円安懸念」

30円台を挟んだ取引が続いているが、その負担は家計や中小企業に重くのしかかっている。自動車部品などを作っている日進工業(東京・大田区)では新型コロナなどの影響で原料のプラスチック樹脂の価格が高騰する中、円安が追い打ちをかけた。企業を追い込む円安、その背景にあるのが日本と米国の金利の差である。米国では物価の高騰を抑えるための利上げによって長期金利が上昇。一方日銀は大規模な金融緩和策を維持することを決定。金利を低く抑えようという姿勢を鮮明にした。こうしたことから、投資家の間では金利の低い円を売り、高い利回りが見込めるドルを買う動きが続いている。経済界からも円安への懸念の声が上がる中、次に打つ手はあるのだろうか。政府・日銀ができることの1つに、政府が持つドルを売り、円を買い支える為替介入がある。しかし介入で一時的に円高になっても、日米の金利の差が大きいかぎり、円売りドル買いの傾向は変わらず効果は限定的だとみられている。次の選択肢が金利差を抑えるために日銀が利上げに踏み切るというもの。ただ、これも企業の業績や家計を圧迫し景気を冷やすなどのおそれがあるため、簡単には踏み切れないとみられている。打ち手が見えない円安。政府日銀の難しいかじ取りが続く(TBS)。

 

 

4月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・FOOD LIFE COMPANIES、第2位・セブン&アイ・ホールディングス、第3位・オリエンタルランド」

2022年4月度のテレビCM価値換算ランキングでは、「FOOD & LIFE COMPANIES」が、40億2700万円で第1位に輝いた。具体的には、「スシローの紹介」や「期間限定のこだわりイチオシ祭」、「肉の名店内山とコラボしたハンバーグの紹介」に加えて、「テイクアウト・シャリ玉で作るスシロー手巻きセットの紹介」等であった。第2位は「セブンイレブン開発担当者が選んだイチ押し商品」等の報道で「セブン&アイ・ホールディングス」となった。第3位は「TDL・進化するスペースマウンテン・開園から約40年続く人気」などの報道で「オリエンタルランド」、第4位は「無印良品の商品7千点から選ぶ最強人気番付&シャトレーゼ」などの報道で「良品計画」、第5位は「お台場にキラキラドンキ・“トレンド”揃えた新業態店舗」などの報道で「パンパシフィック・インターナショナルホールディングス」となった。第6位は「米津玄師が歌う・シンウルトラマン主題歌」などの報道で「東宝」、第7位は「からあげクン初値上げの衝撃」などの報道で「ローソン」、第8位は「ユニクロ・2WAYで着まわせる新作」などの報道で、「ファーストリテイリング」となった。第9位は「ハワイツアー再開のGW・1日600人超ホノルル便に」などの報道で「日本航空」、第10位は「ANA・営業黒字転換」などの報道で「ANAホールディングス」となった。

 

 

4月の人物ランキング

「第1位・スペースX・イーロンマスクCEO、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁、第3位・ムサシノ学生服・田中秀篤社長」

第1位・スペースX・イーロンマスクCEO269件(イーロンマスクCEO・テスラ株1兆円以上売却など)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁119件(日銀の緩和策継続決定うけ・円安進行130円台に突入など)、第3位・ムサシノ学生服・田中秀篤社長37件(背景“老舗”制服販売店に何が…コロナ禍・材料も人手も不足?など)、第4位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長22件(ユニクロ・海外進出・主人公の終わりなき闘いなど)、第5位・JR西日本・長谷川一明社長13件(きょうから新年度・JR西日本・3年ぶりに対面で入社式など)、第6位・銚子電鉄・竹本勝紀社長12件(秘策・若者層開拓へ社長も営業・経営難の銚子電鉄が挑戦など)、第7位・富士ソーラーハウス・大澤正美社長10件(ロシア発ウッドショックの衝撃・住宅に迫る制裁の影響など)、第8位・マウスコンピューター・小松永門社長8件(始まりは「ガレージ」・注文殺到!自作パソコンなど)、第9位・吉野家ホールディングス・河村泰貴社長7件(サイゼリヤ・吉野家…動揺広がる・歴史的円安で「トリプルショック」など)、第10位・オイシックスラ大地・高島宏平社長6件(ウクライナ危機 物価上昇で暮らし・経済など)。

 

 

●テレビの窓

「3年ぶりに行動制限ないGWスタート」

年ぶりとなる新型コロナ対策の行動制限のないゴールデンウィークが始まった。東京都の新規感染者は2979人で、感染が再拡大するおそれもあることから全国の駅や空港などに臨時の無料検査場が設置されている。そんな中、東京・日比谷公園で始まった「うま辛!グルメフェスティバル」では会場に無料PCR検査場が設置された。食事をするための椅子を置かず、客が同じ場所にとどまる時間を短くし、密を避けるようにしている(テレ朝)。国内の観光地も久々ににぎわいを取り戻している。今月27日にオープンした草津温泉の「おさ湯」はコロナで苦境が続く温泉街に観光客を呼び込む新名所として期待を集めている。一方、予約が急増するハワイの現地取材で意外な声が聞かれた。日本航空によると羽田からホノルルに向かう便はほぼ満席で、ゴールデンウィーク中の予約は去年の約9倍になっているという。ハワイは3回のワクチン接種を済ませていれば帰国後の隔離が免除されるため、人気が高まっているという(日テレ)。

 

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