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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年4月)

「日銀・大規模金融緩和を維持」「日銀短観・景況感5期連続で悪化」

今月の特徴は、1.日銀・大規模金融緩和を維持、2.日銀短観・景況感5期連続で悪化、3.経常収支・2カ月ぶり黒字、4.チャットGPTめぐる企業の動向、5.インバウンドの動向、6.エネルギーの動向となった。

 

1.日銀・大規模金融緩和を維持

就任後、初めて金融政策を決める会合に臨んだ日銀・植田新総裁。現在の大規模な金融緩和策を維持することを全員一致で決めた。1990年代後半以降の25年間に実施したさまざまな金融緩和策について1年から1年半程度の時間をかけて多角的にレビューを行うという。植田総裁は政策変更を意図したものではなく、将来の政策上にとって有益な知見を得るためだと説明している(フジ)。

 

2.日銀短観・景況感5期連続で悪化

今年2月27日から3月31日にかけて行われた日銀の短観・企業短期経済観測調査で、大企業の製造業の景気判断を示す指数は、プラス1ポイントと、5期連続の悪化となった。仕入れコスト増加、海外経済の減速、半導体の需要が落ち込んでいることが要因(NHK)。

 

3.経常収支・2カ月ぶり黒字

財務省発表の今年2月の国際収支によると、海外との貿易や投資で日本がどれだけ稼いだかを示す経常収支は2兆1972億円の黒字となった。石炭や液化天然ガスなどのエネルギー価格の高騰や円安の影響で、輸入額は8兆2484億円と25か月連続で増加し、貿易赤字は1年前より拡大している。一方、海外投資の利子や配当収入などを表す第1次所得収支は3兆4407億円の黒字で2月として過去最大となった(TBS)。

 

4.チャットGPTめぐる企業の動向

パナソニックコネクトは、チャットGPTの開発企業の技術を活用した「コネクトGPT」を開発し、社長そっくりのアバターがチャットGPT作成の文章を入社式でスピーチした。三井住友フィナンシャルグループは、従業員専用の対話ソフトを独自に開発し、業務への導入を始めると発表した。実証実験を始めるのは日本マイクロソフトなどと、共同開発した人工知能を使ったアシスタントツール。銀行が保有する情報の要約や文章の作成などをチャット形式で行える物で、業務の効率化を図るという。対話式AIの導入は、三菱UFJフィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループでも検討が進んでおり、各企業が自社向けにツールを開発する動きが広がりそうだ(TBS)。チャットGPTにいまや日本の企業も興味津々だが、さまざまな企業がチャットGPTをどう活用したらいいかのノウハウをわかりやすく伝えるサービスをベンチャー企業・ギブリーが始めた。「営業のメールを代わりに書いたり、新入社員の歓迎会の案内文を書いたりと身近なところから始めてはどうか」とギブリーは提案している(日テレ)。

 

5.インバウンドの動向

外国人観光客が戻り、インバウンドに期待が高まっている。外国人観光客がアクセスした観光地の第1位は神奈川・横浜・ガンダムファクトリー、第2位は神奈川・鎌倉・鎌倉高校前駅近くの踏切、第3位は東京・池袋・サンリオカフェ、第4位は東京・上野・うえの桜まつり、第5位は山梨・富士吉田・新倉山浅間公園となった。地球の歩き方・宮田崇編集長によれば「アニメのコンテンツが(外国人観光客に)強い」という(日テレ)。

 

6.エネルギーの動向

九州電力の川内原子力発電所1号機は定期検査がほぼ終わり、23日に発電と送電を再開し、来月中旬には営業運転に入る予定。薩摩川内市にある九州電力の川内原発1号機はことし2月中旬から行われていた定期検査がほぼ終了し、今月21日に原子炉を起動させて運転を再開。おとといには核分裂反応が連続する臨界の状態となった。九州電力は臨界の状態を維持したまま発電用のタービンが正常に作動するかなどの確認を行い「問題がなかった」として、発電と送電を再開させた(NHK)。再生可能エネルギーの閣僚会議で岸田首相は5月末をめどに政府の「水素基本戦略」を改定することを明らかにした。水素発電の商用化に向けた投資の方針などが具体的に明記される見通し。また太陽光発電について、軽くて折り曲げられるペロブスカイト太陽電池の普及を「2030年を待たず早期に目指す」と述べた(フジ)。

 

 

●新潮流

「マイクロソフト社長来日・AIは日本企業の課題解決できる」

イクロソフトのブラッドスミス社長が来日し、21日、都内で単独インタビューに応じた。この中でスミス社長は「AIは人手不足など、日本の中小企業の課題解決につながるものだ」と述べた。文章を自動的に作り出す生成AIのチャットGPTについて、マイクロソフトは、自社のクラウドサービスを組み合わせた企業向けのサービスを展開している。また、ワードやエクセルなどにも数か月後をメドに導入するとしている。ただ日本語の回答精度は英語に比べて低いことが指摘されている。こうした機能の改善についてスミス社長は「日本語で作られたコンテンツにもっとアクセスすることが必要だ」と述べた。その上で、事業の拡充に向けて日本国内で大量のデータの保存や処理ができるデータセンターへの投資を、継続して行う方針を明らかにした上で、データセンターで大量に消費する電力の確保については、日本政府と緊密に連携を取っていきたいとしている。AI技術をめぐっては、大手IT企業の間では競争が激化している一方、プライバシーや機密情報の保護を巡って懸念も示されている。4月29日から開かれる、G7のデジタル技術相会合では、開発や規制の在り方が初めて議論されることになっている(NHK)。

 

 

●注目点

「G7・化石燃料の取り扱いめぐり激しいせめぎ合い」

7気候エネルギー環境相会合で、最大の争点になったのが、石炭や天然ガスなどの化石燃料の取り扱いであった。風力発電などに強みを持つ欧州は、化石燃料の早期全廃を主張した。一方、水素やアンモニアを使って二酸化炭素の排出量を減らす技術に強みを持つ日本は化石燃料を活用しながら、二酸化炭素の削減対策をしていれば化石燃料が活用できると主張、共同声明に盛り込まれた。今回の合意の裏には、各国間での激しい駆け引きがあった(テレ東)。ドイツなど欧米は二酸化炭素を多く出す石炭火力発電の廃止時期の明示を強く求めたが、エネルギー資源が乏しい日本がこれに強く抵抗した。結局、廃止時期の明記は見送られ、代わりに天然ガスも加え「化石燃料を段階的に廃止する」との曖昧な表現にとどまった。自動車分野では、欧米がEVの導入目標を明記するよう主張した一方で、ハイブリッド車の多い日本が抵抗し、自動車から出る二酸化炭素の排出量を2035年までに、2000年に比べ50%削減できるよう確認することで合意した(TBS)。

 

 

4月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・三井不動産、第2位・オリエンタルランド、第3位・東急」

2023年4月度のテレビ報道CM価値換算ランキングの第1位は、46億5898万円で「三井不動産」となった。具体的には、「ミッドタウン八重洲オープン」「セレブリティーがオープニングパーティー集結!贅を尽くしたブルガリホテル」等によるものであった。第2位は「東京ディズニーランド・今日で40周年・記念のセレモニー」等の報道で「オリエンタルランド」。第3位は「東急歌舞伎町タワーで聞いたおすすめスポット」などの報道で「東急」。第4位は「GWスタート・羽田空港・国際線出国ピーク」などの報道で「東京空港事務所」となった。第5位は「セブンイレブン大型コンビニ展開へ」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」。第6位は「トヨタ・世界販売960万台・過去最高」などの報道で「トヨタ自動車」、第7位は「ANAホールディングス・3年ぶりの黒字」などの報道で「ANAホールディングス」、第8位は「マリオ・公開5日間で500億円」などの報道で「東宝」となった。第9位は「東武鉄道“新型特急”公開・7月から淺草-日光エリア結ぶ」などの報道で「東武鉄道」、第10位は「サステイナブルなサービスも・ユニクロ・電力4割削減のエコ店舗」などの報道で「ファーストリテイリング」となった。

 

4月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・ツイッター・イーロンマスクCEO、第3位・ispace・袴田武史CEO」

第1位・日本銀行・植田和男総裁97件(日銀・植田総裁・金融緩和継続も副作用出ているなど)、第2位・ツイッター・イーロンマスクCEO82件(ツイッター認証マーク・復活に条件?など)、第3位・ispace・袴田武史CEO80件(燃料切れで落下?通信途絶え・世界初の民間月面着陸は失敗など)、第4位・オープンAI・アルトマンCEO72件(ChatGPT開発企業・37歳CEOが来日など)、第5位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長36件(トヨタ・佐藤新社長単独取材など)、第6位・アキダイ・秋葉弘道社長17件(今週の値上がり&お買い得は?アキダイ社長の物価予報など)、第7位・日本経団連・十倉雅和会長16件(LGBT法案・経済界が急ぐ理由など)、第8位・JR西日本・長谷川一明社長13件(JR福知山線脱線事故18年など)、第9位・イオン・吉田昭夫社長13件(倉庫から直接配送・イオンAI活用の新ネットスーパーなど)、第10位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長12件(消費電力4割カットユニクロが新タイプ店舗など)。

 

●テレビの窓

「上海モーターショー」

ヨタはEV専用ブランドで、中国企業と共同開発した新たな2車種を発表した。来年から中国で販売されるという。1つは中国の若者を意識してスタイリッシュな印象となっている。トヨタは2026年までにEV販売台数を年間150万台にする目標を掲げており、EVの車種を増やし販売のてこ入れを目指している。一方日産も、中国ユーザーを意識したEVコンセプトカーを発表した。AIにより、人との対話が可能で、データを基にした情報提供もなされる。また会場では米国テスラとEVの世界販売台数を競う中国「BYD」が航続距離305kmのコンパクトカーを日本円にして約160万円という価格で販売すると発表し、会場から驚きの声が上がった。EVの世界販売台数は去年726万台と前の年に比べておよそ7割増えており、出遅れた感のある日本のメーカーは巻き返しを図ろうとしている。会場でトヨタ自動車・中嶋裕樹副社長は「今回の車種は中国のお客様の嗜好を捉えたバッテリーEVを目指した。今後も中国専用バッテリーEVの開発を中国現地で強化・推進していきたい」と語った(フジ)。

 

JCC株式会社