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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年9月)

「日銀・金融政策決定会合・大規模な金融緩和を継続」

今月の特徴は、1.日銀・大規模な金融緩和を継続、2.8月の貿易収支・9305億円赤字、3.人手不足の影響、4.中国・日本産水産物の輸入全面停止、5.エネルギーの動向となった。

 

1.日銀・大規模な金融緩和を継続

日銀は金融政策決定会合で最近の円安の状況や前回の会合で長期金利の上限を引き上げたことの影響などについて議論し、これまでの金融緩和策を継続することを決めた。植田総裁は会合後に行われた会見で、物価上昇の継続性を判断する上で、賃金の上昇は「最重要な要素の一つ」と述べた。また、物価目標の実現が見通せる状況になった場合はマイナス金利の解除が視野に入るとした一方、政策修正時期や具体的な対応については「到底決め打ちはできない」との認識を示した(フジ)。

 

2.8月の貿易収支・9305億円赤字

8月の貿易統計によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9305億円の赤字となった。石炭やLNG(液化天然ガス)などの輸入が減った一方、半導体製造装置などの輸出が振るわず、赤字は2か月連続となった。中国向け食料品の輸出は前年同月比-41.2%減っていて、東京電力福島第一原発の処理水放出で中国による日本産の水産物輸入の全面停止が影響しているとみられる(TBS)。

 

3.人手不足の影響

今、建設業界に関わる人の数が減っている。この25年でおよそ206万人減少した。さらには2024年の4月から、これまで建設業界で猶予されてきた時間外労働の上限規制が厳格化され、ドライバーや機械オペレーターの人手不足がより一層深刻化すると懸念されている。そうしたことから、各社は装置を導入し、生産性の向上、さらには現場での人手を少なくする、もしくは無人化することで、安全性の向上につなげようとしている(NHK)。タクシー業界も人手不足が深刻で、1日30台ほどが稼働できない。2009年度までは40万人をキープしていたものの、それ以降は右肩下がり、2021年度はおよそ25万人まで減少している。人手不足から、車両のフル稼働も困難な状況。この窮地を脱するため、白羽の矢が立てられたのが、外国人でインバウンド客が戻る中、活躍が期待されている(日テレ)。

 

4.中国・日本産水産物の輸入全面停止

東京電力・福島第一原子力発電所にたまる処理水の海への放出が始まって1か月。中国が水産物の輸入を停止した影響が市場に出ている。水産庁の調査では、北海道でホタテ1kg当たりの取引価格が、7月中下旬の平均195円から8月には173円と、20円以上も下落した。日本の水産物への影響が多岐にわたる中、国内では支援する動きが広がっている。都内に9店舗ある鮮魚店では、“常磐もの”と呼ばれる福島県産の水産品を応援するフェア「発見!ふくしまフェア」が開催された。風評の払しょくや消費アップに向け東京電力と連携し、常磐もののおいしさや魅力を伝えるのが狙い。さらに中国の禁輸措置を受け、急増しているのがふるさと納税での支援。国内屈指のホタテの生産地北海道の別海町では、ふるさと納税が6倍になったという。また外食チェーンを展開するワタミは11日から「日本の漁業応援キャンペーン」を開始した(テレ朝)。

 

5.エネルギーの動向

日本と中央アジア5か国の経済やエネルギーの関係強化に向けた初めての閣僚級会合が行われ、脱炭素に向けて協力を加速させることなどで合意した。会合は、日本からは西村経済産業大臣が、中央アジア5か国からはエネルギー大臣などが出席して開かれた。キルギスやカザフスタンなど中央アジアは、ロシアや中国などと隣接していることから、地政学的なリスクを抱えている。これらの国々は豊富な資源に恵まれていることなどから、日本にとっても、関係強化が課題となっている。西村経済産業大臣は「この機会を捉え、中央アジアの国々の皆さま方と経済、エネルギー関係をより強固なものにしていきたい」と述べ、会合では、日本と中央アジア5か国が脱炭素に向けたロードマップの策定を協力して加速させることなどで合意した。経産省幹部は、ロシアのウクライナ侵略を念頭に「現地で厳しい経営判断を迫られる日本企業にとって、中央アジアが新たな市場として重要になっている」と指摘している(日テレ)。

 

 

●新潮流

「東芝・非上場化へTOB成立」

が混乱の続く経営を安定化させる目的で進めてきた株式の非上場化。そのためのTOB株式の公開買い付けが成功したことが明らかになり、二転三転した東芝の経営問題は、大きな節目を迎える。東芝は、アクティビストと呼ばれる海外の投資ファンドを事実上、排除する目的で株式の非上場化を目指し、投資ファンドの日本産業パートナーズが8月8日から9月20日までTOBを行った。21日、TOBの最終的な結果を公表し、買い付けに応募した株式が全体の78.65%となって、TOBが成立したと発表した。今後は11月をメドに臨時株主総会を開き、残りすべての株式を買い取ったうえで、年内にも非上場化させる見通し。東芝はこれまで、会社を3つに分割する案など、事業構造の改革案を出してきたが、短期的な利益を求めがちなアクティビストからの反発で、株主総会で改革案が否決されるなど、思ったとおりの経営のかじ取りができなかった。そこで今回の非上場化で、アクティビストに口を出させないようにして、経営の自由度を高めようとした。一方で、TOBのためにおよそ2兆円の資金を必要とし、重荷も抱えることになった。経営陣は思いどおりの経営ができるようになった一方で、逃げ道の許されない重い責任を抱えることになる(NHK)。

 

 

●注目点

「タレント起用めぐり・揺れる企業」

ャニーズ事務所の問題を受け、スポンサー離れドミノが起こっている。経済同友会・新浪剛史代表幹事は「真摯に反省しているのか疑わしい」と話し、経済同友会には脅迫めいた抗議電話もあったとしている(日テレ)。人権侵害に詳しい蔵元弁護士は「会社を守るためにリスクを遮断することはコンプライアンスに即しているように見えるが、問題のある会社とビジネスで関連のある会社は影響力を行使できる力を持っている。その力で助言、支援することができるし、その責任を負っている」と指摘。企業は問題のある会社との取引を停止すれば人権侵害との関連がなくなるが、監視の目が行き届きにくくなり、さらに問題が深刻になる可能性もあるとしている。経済産業省の「人権尊重のためのガイドライン」には「直ちに取引を停止するのではなく、まずは関係を維持しながら負の影響を防止、軽減するよう努めるべき。取引停止は最後の手段として検討され、適切と考えられる場合に限って実施されるべき」と書かれている(TBS)。

 

 

9月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・イオン、第2位・すかいらーくホールディングス、第3位・西日本旅客鉄道」

2023年9月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは、34億8639万円で「イオン」が第1位に輝いた。具体的には、「イオンが31品目値下げ・カップ麺やサラダ油など」「日本最大級の冷凍食品専門店・人気の試食コーナーに行列も」「来月5日から切り替え・イオン・有料レジ袋を紙袋に」等によるものであった。第2位は「バーミヤンvs超一流中華料理人」等の報道で、「すかいらーくホールディングス」となった。第3位は「北陸新幹線・金沢-敦賀間・試験走行スタート」などの報道で「西日本旅客鉄道」。第4位は「JR東日本・新幹線に荷物載せ輸送」などの報道で、「東日本旅客鉄道」となった。第5位は「ディズニー・ハロウィーン・新定番の楽しみ方」などの報道で「オリエンタルランド」、第6位は「松坂屋の人気物産展に『つぶれない店』参戦」などの報道で「J.フロントリテイリング」、第7位は「スシローが“回転レーン”を復活!?切り札・デジロー開発に独占密着」などの報道で「FOOD & LIFE COMPANIES」、第8位は「反町隆史主演『GTO』・伝説のドラマ・来年春復活」などの報道で、「フジ・メディア・ホールディングス」となった。第9位は「ゴジラ-1.0・ド迫力最新映像」などの報道で「東宝」、第10位は「アップルが『iPhone15』発表」などの報道で「アップルジャパン」となった。

 

 

9月の人物ランキング

「第1位・ジャニーズ事務所・東山紀之社長、第2位・ジャニーズアイランド・井ノ原快彦社長、第3位・日本銀行・植田和男総裁」

第1位・ジャニーズ事務所・東山紀之社長436件(ジャニーズ・会社・社名どうなる?など)、第2位・ジャニーズアイランド・井ノ原快彦社長135件(新社長らが語った要点・ジャニーズ事務所が会見など)、第3位・日本銀行・植田和男総裁90件(日銀が大規模金融緩和策を維持など)、第4位・損保ジャパン白川儀一社長69件(金融庁・ビッグモーター・損保ジャパンに立ち入り検査など)、第5位・経済同友会・新浪剛史代表幹事53件(ジャニーズ事務所・財界トップが批判など)、第6位・アキダイ・秋葉弘道社長49件(年収の壁解消に向けて・総理の対策に期待と不安など)、第7位・経団連・十倉雅和会長41件(ジャニーズタレント起用・企業の間で見直す動きなど)、第8位・アップル・ティムクックCEO16件(アップル・iPhone15発表など)、第9位・セブン&アイHD・井阪隆一社長15件(独占密着!そごう西武・ストの真相・“決断の日”ニュースの裏側など)、第10位・日本商工会議所・小林健会頭13件(“ジャニーズ”巡り新たな動き・「社名」に経済界からの意見など)。

 

 

●テレビの窓

「異業種の参加目立つ東京ゲームショウ」

内最大級のゲームイベント東京ゲームショウ(千葉市美浜区・幕張メッセ)。今年は過去最大規模の開催となり、787の企業や団体が出展した。インターネット上の仮想空間メタバースの技術を使った最新ゲームは、仮想空間を企画運営する会社がトヨタなど自動車メーカー8社とゲームを制作した。今話題の生成AIを使った対話型コンテンツは、ビジネスマンなどが気軽に面接や商談の練習ができるように開発された。会場で目立ったのが、異業種からの参加。大手家具メーカーは初めてブースを設け、ゲーム用に設計した椅子を展示した(NHK)。メタバースプラットフォーム「cluster」のブースでは、手のひらに収まるサイズの商品、ソニー「mocopi」が展示された。これらを手首、足につけるだけで自身の体の動きとメタバース上のアバターを連動させることが出来る。ポイントは自宅でも簡単にできること。このほか、会場で注目されたのは、家族で楽しめる最新ゲーム。「桃太郎電鉄ワールド~地球は希望でまわっている!~」は、空港をイメージして作られ、旅行気分を味わえるほか、ゲームを体験すると、参加賞としてキーホルダーももらえる。今回の桃鉄の売りは球体マップ、旅行ガイドブック「地球の歩き方」が監修に入っていること。現地のリアルな情報も楽しめる(フジ)。

 

JCC株式会社