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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和元年8月)

 

「7月の貿易収支・2ヶ月ぶり赤字」「上半期の経常収支・黒字幅が縮小」

今月の特徴は1.消費増税の動き、2.米中貿易摩擦の影響、3.景気の動き、4.エネルギーの動きとなった。

                                                                                                

1.消費増税の動き

10月の増税を控え今年は冷凍食品に即席麺、生活に関わる幅広いものの値段が上昇するとみられている。消費者の節約志向が高まる中、あえて値下げすることで客を取り込もうという動きが広がっている。無印良品が始めた大規模な値下げも背景の1つにあるのが消費増税だった。ミニストップではおにぎりを一律100円に値下げ。一番人気、130円だった紅鮭ももちろん100円。リンガーハットでは長崎ちゃんぽんのセットを10円値下げ。ほかにも370円で食べられる手頃なランチも登場した。さらに、小売店でも生活に欠かせない商品の値下げが相次いでいる。西友では食品や日用品を値下げした。対象は600品目に及び、超得の値札がついたものは平均で9.3%安く販売している。消費者にとってはうれしい値下げだが、日本経済は消費増税の荒波を乗り越えることができるのだろうか。今年に入ってから値上げのニュースが相次ぎ、消費者態度指数は11カ月連続で下がり続けている。内閣府が発表した消費者心理について8月は「弱まっている」という判断がされた。物の値上げと同時に働き方改革で残業代が減り、収入が減って財布のヒモをしめかけている。前回の増税では、特に日用品の駆け込み需要があったが、今回の増税での駆け込み需要はなさそうだということがわかっている(TBS)。

 

2.米中貿易摩擦の影響

25日、日本は米国産トウモロコシを追加購入する事を約束した。追加購入するのは約275万トンで、日本が米国から輸入するトウモロコシの年間輸入量の4分の1に当たる。背景にあるのは米中貿易摩擦と来年の大統領選挙。トランプ大統領はトウモロコシの輸出が落ち込む事でトウモロコシ農家の支持率が下がる事を懸念していて、そこへ安倍総理が助け船を出した形。追加購入を決めたのは飼料用で、国内の食用トウモロコシ農家や食卓に直接影響が出るわけではない。政府が米国産トウモロコシを追加購入する理由としているのが先月、鹿児島県で見つかった外来種の蛾「ツマジロクサヨトウ」による被害で、今日までに13県で害虫が発見されている。一方、国内の飼料用トウモロコシの作付面積の6割を占める北海道では被害は見つかっていない。農林水産省は被害額や被害面積の全体像を現段階では把握していないとのこと(テレ東)。

 

3.景気の動き

財務省が発表した今年上半期の国際収支によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支は、外国人旅行者の増加などもあり、10兆4676億円の黒字となった。黒字幅は去年の同じ時期と比べて4584億円縮小している(TBS)。さらに財務省が発表した7月の貿易統計によると輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2496億円の赤字となった。2カ月ぶりの赤字で、米中貿易摩擦による中国の景気の減速を受け、中国向けの輸出が落ち込んだことなどが要因。国地域別では、米国に対しては5794億円の黒字だった一方、中国は3838億円の赤字、EUは679億円の赤字だった(TBS)。一方、概算要求が発表され、6年連続で100兆円を超える見通しで、予算の膨張に歯止めはかかりそうにない。10月には消費税率の引き上げが控えており、景気への影響を見ながら、年末までに別途景気対策を検討するという。一方で戦後最長ともいわれる景気回復が続き、税収が好調であるにもかかわらず国の借金は増え続けている。高齢化で年金や医療などの社会保障費が増大しているためで、6年後の2025年にいわゆる団塊の世代がすべて75歳以上になると、さらに歳出が増え一段と財政が悪化することが懸念されている。日本の経済を成長させるために、必要な分野に予算を使いながらどのように財政健全化に向けた道筋をつけていくのかが、今後の予算編成の焦点となる(NHK)。

 

4.エネルギーの動き

再生可能エネルギーは天候によって発電量が大きく変わりやすく、需給バランスが崩れ大規模停電のおそれがあることが課題だが、環境省は電力の需給バランスをコントロールするシステムの普及に取り組むことになった。環境省はこうしたシステムを導入した事業者に費用の2分の1を補助する方針で、来年度予算案の概算要求に約75億円を盛り込むことにしている(NHK)。

 

 

●注目点

「進む円高ドル安・対応追われる日本企業」

中の貿易摩擦に東京市場が揺さぶられている。米中貿易戦争は追加関税の応酬となり、深刻化しているが、このままの流れで行くと年内には、米国と中国が取引をする貿易の製品のほぼ全てに追加関税がかかるという状況になり、米国の経済の見通しが悪化している。リスク回避のために安全資産である円へと流れ、ドルを売って円を買う動きが加速しており円高株安になっている。第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣は「日経平均2万円割れは時間の問題となっている。トランプ大統領も振り上げた拳を下ろせない状況で、長引けば1ドル100円割れの事態も考えられる。長引けば長引くほど、正常水準へのリカバリーが困難になる」と説明している(テレ朝)。

 

 

●新潮流

「北極海プロジェクトが示す液化天然ガスLNGの未来」

源小国である日本にとって天然ガスは生活に直結するエネルギーとなっている。日本の電力のおよそ40%が液化天然ガスLNGの形で海外から輸入したガスが原料となっている。熱帯夜をしのぐ冷房の電力も液化天然ガスの輸入が不可欠。(温暖化の影響による)北極海の氷の減少によって北極海航路が生み出されている。その航路の真ん中にあるのがヤマル半島であり、ここが世界のLNG開発のフロンティアとなっている。日本の日揮千代田化工が請負業者として建設したヤマルプロジェクトが去年12月、全面稼働した。6月の日ロ首脳会談では第二期にあたるアークティック2プロジェクトに三井物産と政府系の独立行政法人JOGMECが共同で10%の権益を獲得し資本参加することで合意した。このプロジェクトの目的は北極海航路の実用化。原子力砕氷船から原油、LNGの輸送タンカーさらにプラットフォームまで北極圏の資源開発や輸送用の船の建造に特化した造船所がロシア極東に新たに作られている。この工場で日本企業の参加したプロジェクト用LNG輸送タンカーが建造される。先月末にはヤマルから中国まで北極海航路を使いわずか16日間でLNGが運ばれた。スエズ周りの航路に比べてアジアとヨーロッパの輸送にかかる期日を半分に短縮する速さである。アークティック2が稼働する2023年には北極圏のヤマルから3600万トンものLNGが世界市場に運ばれることになる。ホルムズ海峡の緊張が続く中、中東依存を減らし供給を多角化するという意味において日本のエネルギー安全保障を強化することにもなる(NHK)。

 

 

8月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・安楽亭、第2位・三井不動産、第3位・銚子丸」

019年8月度のテレビ報道月間CM価値換算値ランキングでは「安楽亭」が33億1600万円で第1位に輝いた。具体的にはTBSテレビの「ジョブチューン」で一流料理人が値段に見合っているかどうかを判定する番組やテレビ朝日の「帰れマンデー見っけ隊」の番組で取り上げられたことによるものであった。第2位は「東京大変身!日本橋・第3ステージは水の都」などの報道で「三井不動産」となった。第3位は「お得情報満載!回転寿司にハマっている大鶴義丹の熱血授業!」などの報道で「銚子丸」、第4位は「通りの達人」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第5位は「アワビが空を飛ぶ!?ANA・ドローン宅配実証実験」などの報道で「ANAホールディングス」、第6位は「通勤が変わる!?“電車時間が楽しみに”」などの報道で「東武鉄道」、第7位は「超巨大・330メートル超のタワーも・東京・港区の再開発計画発表」などの報道で「森ビル」、第8位は「回転寿司トロより人気で品薄に・絶品&映えタピオカ」などの報道で「カッパ・クリエイト」となった。第9位は「ローソン・“無人営業”の実証実験」などの報道で「ローソン」、第10位は「シニア宇宙人材をもっと企業に」などの報道で「宇宙航空研究開発機構JAXA)」となった。

 

 

8月の人物ランキング

「第1位・ジャニーズ事務所・ジャニー喜多川社長、第2位・吉本興業・岡本昭彦社長、第3位・日本郵政・長門正貢社長」

第1位・ジャニーズ事務所・ジャニー喜多川社長62件(ジャニー喜多川・お別れ会・どんな会に?など)、第2位・吉本興業・岡本昭彦社長45件(吉本・謹慎芸人が復帰・問題解決は?など)、第3位・日本郵政・長門正貢社長42件(かんぽ生命の保険問題・自粛の営業活動10月再開へなど)、第4位・森ビル・辻慎吾社長30件(高い・日本一330mのビル・都心に誕生へなど)、第5位・日本郵便・横山邦男社長26件(日本郵政トップ謝罪など)、第6位・かんぽ生命保険・植平光彦社長24件(かんぽ生命不適切契約・経営陣が初めて謝罪など)、第7位・リクルートキャリア・小林大三社長19件(リクナビ内定辞退率で是正勧告など)、第8位・ソフトバンクグループ・孫正義社長18件(最新技術で中国市場が変わる!ロボットが品定めなど)、第9位・吉本興業・大崎洋会長13件(加藤浩次“残留”ではない・エージェント契約・説明など)、第10位・日本銀行・黒田東彦総裁10件(日銀・緩和は二段構えなど)。

 

 

●テレビの窓

「高さ330m・日本一の超高層ビル・2023年港区に新“ヒルズ”」

さ330m・日本一の超高層ビル・2023年港区に新“ヒルズ”が建設される。森ビル・辻慎吾社長が東京都心の再開発計画「虎ノ門・麻布台プロジェクト」を発表した。麻布台エリアに、2023年開業に向け工事を進めている。メインタワーは地上64階建て、高さは約330mで日本一高いビルとなる。7棟のビルには住宅1400戸、オフィス、ホテル、レストランなど商業施設も入る。また地下鉄・神谷町駅と六本木一丁目駅を繋ぐ700mの地下通路も開通予定。区域面積は東京ドーム1.6倍。周辺は外国人居住者が多い地域、多言語対応の医療機関や都心最大級のインターナショナルスクールも開設し、日本初進出のラグジュアリーホテルもオープンする予定(日テレ)。

JCC株式会社