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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年7月)

「日銀金融政策決定会合・大規模な金融緩和策の維持を決定」

今月の特徴は1.日銀の動向、2.景気の動向、3.ワクチン・新薬開発の動向、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.日銀の動向

日本銀行は金融政策決定会合を開き、現在の大規模な金融緩和策を維持することを決めた。企業が発行するCP(コマーシャルペーパー)や社債の購入額の上限も約20兆円に据え置いている。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、景気判断を「極めて厳しい状態にある」に維持した。その上で、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとしている。金融政策決定会合の中では「新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ景気は底を打って回復し始めたものの、持ち直しには時間がかかる」という慎重な見方が相次いでいた。また金融政策については「今の資金繰り支援策を当面続けていくことが適切だ」という意見が多く出た一方、「新しい日常を前提に経済が動いていくのに合わせて、金融政策を考えるべきだ」との指摘も出ていた (NHK)。

 

2.景気の動向

日本の財政はすでに先進国で最悪の水準にあったが、新型コロナの影響で、一段と悪化した。今後、経済の停滞が長引けば、さらなる財政出動と税収の落ち込みも想定される。大和総研・神田慶司シニアエコノミストは「感染拡大が収まらないとなかなか経済活動が本格化できない。歳出、歳入両面で財政の悪化が長く続く。歳出を増やした分、どう財源を確保していくかもやらないといけない」と分析した。一方、米国のGDPが-32.9%と急落したことが、日本企業に暗い影を落としている。直接の影響は「自動車現地生産の落ち込み」と「対米輸出の大幅減少」の2つのケースで起きている。米国で生産している日系4社(トヨタ自動車ホンダ日産自動車SUBARU)は4月の生産台数が「ゼロ」となる異例の事態になった。6月は19%の減少まで回復してきたが、感染者が再び拡大していることもあって、生産がどれだけ戻るかは不透明(NHK)。

 

3.ワクチン・新薬開発の動向

加藤勝信厚労相は「米国ファイザー社との間で来年6月までに6000万人分のワクチンの供給を受ける基本合意に至った」と発表した。ファイザーが開発しているワクチンが完成した場合、来年6月末までに6000万人分が日本に供給される。政府は別の海外企業とも供給の合意に向け調整している。米国の医薬品大手・ジョンソンエンドジョンソンは開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンの候補について米国とベルギーで約1000人を対象に臨床試験を開始したと発表した。今後日本でも臨床試験を行う予定。ジョンソンエンドジョンソンは量産体制も整えていて安全性が確認され、実用化できれば来年には10億回分の供給を目指すとしている(TBS)。

 

4.エネルギーの動向

再生可能エネルギーを増やす切り札ともされる洋上風力の拡大に向け、政府が議論を開始した。梶山経産大臣は「洋上風力の競争力強化、コスト削減のカギとなるのが投資拡大」と述べた。メーカー、省庁などが集まり、洋上風力の投資を促進するための議論が始まった。洋上風力はヨーロッパを中心に拡大しており、英国では1000万キロワット近く(原発10基分)まで広がったが、日本では2万キロワットにとどまっている。千葉県銚子市にある洋上風力は、2000世帯分の電気を賄っているが、稼働しているのは1基だけ。東京電力リニューアブルパワー風力部・福本幸成技術士は「海を長期間使うことに関して法的な根拠がなかった。技術、ノウハウを来るべき公募に向けて導入していきたい」とコメントした(テレ朝)。

 

 

●注目点

「新型コロナ感染拡大で苦戦する日本企業」

型コロナウイルスの感染拡大は経済に暗い影を落としている。日産自動車は今期最終損益が6700億円の赤字になる見通しを発表した。日産自動車・内田誠社長は「今年度の第1四半期は世界各国で新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がった結果、需要が前年の約半分の水準にまで減り、販売台数もあわせて大幅に減少した」と述べた。コロナの影響で三菱自動車は世界で販売が減少し、今期の最終損益は3600億円の赤字になる見通し。日本航空は来年春に卒業する大学生などの採用活動について中断していたが、渡航需要が回復せず、経営に甚大な影響を及ぼしているとして採用活動を中止することを決めた(テレ朝)。花王は20年1-6月期の決算を発表し最終損益は506億円の黒字(前年比11.7%減)だったが、外出自粛やマスクの着用で、化粧品の売り上げが低迷し、訪日外国人向けの売り上げも大幅に減少した。一方でホームケア製品、衛生関連商品は好調だった。需要の拡大を受けて花王は消毒液の生産を20倍に増加させた。またANAホールディングスは8月の国内線の運航率を当初の予定88%から77%に減らすことを決定した。百貨店も苦戦を強いられている。三越伊勢丹ホールディングスは4-6月期の最終損益が305億円の赤字になった。最終損益は600億円の赤字を見込んでいる(テレ東)。

 

 

●新潮流

「次世代の暗号技術・開発プロジェクト・今月開始へ」

算能力がスーパーコンピューターを遥かに超える量子コンピューターが本格的に使われると、今の暗号は簡単に解読されるおそれがあることから、次世代の暗号技術「量子暗号通信」の開発が世界的に加速している。関係者によると、東芝NEC三菱電機の他、東京大学、国の情報通信研究機構といった12の企業や大学などが参加する量子暗号通信の大掛かりな開発プロジェクトが7月から始まる。暗号を破られずに通信できる距離を延ばし、5Gを使った場合も解読されることなく情報がやりとりできる技術を協同で開発する。この分野に強みを持つ東芝は、5年後には先進国を中心に量子暗号通信の活用が始まり、2035年には世界的に広く普及して2兆円規模の市場になると見込んでおり、世界をリードできるかが注目されている(NHK)。

 

 

7月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・セブン&アイ・ホールディングス、第2位・カルビー、第3位・ヨドバシカメラ」

2020年7月度のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、「セブン&アイ・ホールディングス」が45億1300万円で第1位に輝いた。具体的には「2020年3月~5月決算で黒字を維持したものの大幅減益になった件」や「新商品の発売」に加え「ウナギの特売」等によるバラエティ番組の紹介によるものであった。第2位は「国民的大ヒット食品のヒミツ一挙大公開SP!」などの報道で「カルビー」となった。第3位は「カスタム・ウエアラブル・ポータブル・進化する涼家電特集」などの報道で「ヨドバシカメラ」、第4位は「羽鳥vs日テレアナ・ファッション対決・父親から譲り受けたシャツで王座奪還」などの報道で「ライトオン」、第5位は「国民的大ヒット食品のヒミツ一挙大公開SP!」などの報道で「明治ホールディングス」、第6位は「開放感!隅田川の“新名所”」などの報道で「東武鉄道」、第7位は「コンビニ大手3社が実証実験・来月1日から商品を共同配送」などの報道で「ローソン」、第8位は「ウワサのお客さま 全国店員さんインタビュー!」などの報道で「ロイヤルホールディングス」となった。第9位は「騰落率ランキング」などの報道で「神戸物産」、第10位は「宅配にシフト・大手飲食店が続々」などの報道で「サイゼリヤ」となった。

 

 

7月の人物ランキング

「第1位・アキダイ・秋葉弘道社長、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁、第3位・日本郵政・増田寛也社長」

第1位・アキダイ・秋葉弘道社長39件(記録的日照不足と長雨影響・フルーツ価格や味に変化など)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁21件(日銀金融政策決定会合・大規模な金融緩和策の維持を決定など)、第3位・日本郵政・増田寛也社長13件(日本郵政グループ・新たな不適切販売か?など)、第4位・日産自動車・内田誠社長12件(日産三菱で巨額赤字・赤字決算相次ぐ…コロナ“困窮”の現状など)、第5位・日本電産・永守重信会長11件(中小企業でも逆転出来る・永守流!マル秘売上高アップ術など)、

第6位・JR東日本・冨田哲郎会長9件(感染抑制と観光支援…旅行代理店対応に追われるなど)、第7位・ANAホールディングス・片野坂真哉社長8件(「GoToトラベル」“東京外し”急転直下・舞台裏など)、第8位・JR東海・金子慎社長8件(JR東海社長・リニア“開業延期”は明言せずなど)、第9位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長7件(未来投資会議・新メンバーも参加・首相“年末に中間報告” など)、第10位・大戸屋ホールディングス・窪田健一社長7件(対立・「大戸屋」社長×筆頭株主・手作りか?効率化か?など)。

 

 

●テレビの窓

「注目集まる・ジョブ型雇用」

ョブ型雇用は仕事内容を明確に定め、その成果によって給料をもらう働き方。働いた時間の長さではなく、求められる仕事を実際に行えたかどうかで評価が決まる。日立製作所では2011年、グループ各社で独自にあった人事制度を世界共通にする方針を打ち出した。ジョブ型雇用のメリットは仕事内容が明確なので長時間労働になりにくい。契約外の残業、仕事の兼務、転勤に応じる義務が無い、仕事の専門性を深めることが可能。デメリットは育成より即戦力重視で、海外では仕事がなくなれば解雇という事態にもなる上、社内でのキャリアアップが難しい。海外では転職によってキャリアアップしていく形が主流となっている。経団連は今年の春の経済闘争の方針で日本型雇用を残しつつも、ジョブ型雇用の普及を進めるという提案を盛り込んでいる。日本企業の中には、戦後慣れ親しんできた雇用形態を一気に止めてジョブ型に移行するのは現実的ではないと考えているところもある(テレ東)。

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