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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年3月)

「1月経常収支・過去最大の赤字」

今月の特徴は、1.1月経常収支・過去最大の赤字、2.脱マスクの動向、3.春闘の動向、4.外国人観光客の動向、5.エネルギーの動向となった。

 

1.1月経常収支・過去最大の赤字

財務省が発表した今年1月の経常収支は1兆9766億円の赤字となり、比較可能な1985年以降、過去最大の赤字となった。円安の進行とエネルギーなどの資源高で輸入額は10兆45億円となった一方、輸出額は6兆8227億円。海外との取引で日本が稼げないことを反映(TBS)。

 

2.脱マスクの動向

客のマスクについては多くの業界や企業で個人の判断に委ねる一方で、従業員については対応が分かれている。JR東日本は、マスク着用を求める車内放送を打ち切ると発表。東京ディズニーリゾートでは、マスクの着用を来園者の判断に委ねると発表した(TBS)。今年の企業説明会ではマスク着用緩和により9割近くの企業が対面面接を行う。任意のマスクなし面接は7割を超える(フジ)。

 

3.春闘の動向

春闘は集中回答日を迎え、大企業では異例ともいえる大幅な賃金引き上げの回答が相次いでいる。多くの人が豊かさを感じられるようにするには、幅広い企業で、来年以降も賃金が上がるのが当たり前という社会に転換することが必要。大企業ではパートや契約社員の賃金を上げる動きも出ている。イオン、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドサッポロビールは非正規社員の賃上げを行う。金属労協では、企業内最低賃金を月額平均7000円余引き上げる。大幅賃上げの背景には物価高騰への配慮だけでなく、人材確保への強い危機感がある。コロナ禍からの経済回復で雇用を増やしたい企業が増える中、団塊世代が引退し始めている。女性の労働参加率も頭打ちとなり、円安の日本では働く魅力が減っている(NHK)。

 

4.外国人観光客の動向

6年ぶりに改定された観光立国推進基本計画。政府は2025年までに外国人観光客1人あたりの消費額を20万円に引き上げる目標を新たに設定。さらに、計画に盛り込まれたポイントの一つが海外からの観光客を地方へ呼び込むこと。どのように地方へ観光客を呼び込むのか。長野県松本市。桜が見頃を迎えた松本城は多くの外国人客でにぎわっていた。コロナ前、松本市には松本城を中心とする市街地に観光客が多く訪れていた。しかし観光客の受け入れの限界を超えたり混雑が生活の弊害になったりする、いわゆるオーバーツーリズムが懸念されている。そこで今、取り組んでいるのが客の数を追うのではなく富裕層を呼び込むこと。松本市観光プロモーション課・小口一夫課長は「(富裕層を呼び込むことで)持続可能な観光産業になっていく」とコメントした(テレ東)。

 

5.エネルギーの動向

電力広域的運営推進機関が再生可能エネルギーの導入拡大に向け、送電網の整備計画をまとめた。それによると、2050年に再生可能エネルギーを電源構成全体の5割まで高めた場合、太陽光や風力発電の多い北海道や東北と、東京を結ぶ送電網を新設することが必要になる他、西、東日本で電力を融通しあう送電網の増強などが必要になるとしている。さらに2050年までに6兆円から7兆円の投資が必要になるという(NHK)。

 

 

●新潮流

「迫る2024年問題にどう対処」

流業界に2024年問題と呼ばれる大きな課題が立ちふさがっている。来年4月に始まるトラックドライバーの時間外労働の規制強化で人手不足が一層深刻になり、輸送できる荷物の量が減ると懸念されている。このまま対策を取らなければ今後、運べる荷物が大幅に減るという試算もある。ドライバーの大きな負担になっているのが再配達だが、これを減らすためのシステムの導入が進められている。オートロックのマンションでも置き配が可能となるシステムの導入に向けて、ネット通販大手アマゾンジャパンの幹部は「マンション管理大手の三井不動産レジデンシャルリースと協力する」と発表した。ネット通販の普及を背景に宅配便の荷物の数は増え続け、昨年度は49億5300万個余りと、前の年度よりも1億1600万個以上増えている。その中で再配達になる荷物は11.8%の割合に上っている。再配達を減らす手段の1つが宅配ボックスである。今進められているのはセキュリティーを重視した開発で、大手住宅メーカーの大和ハウス工業などが開発したのは戸建て住宅向けの防犯カメラの機能がついたインターホンと一体化した宅配ボックス。専門家は配達の効率を高める仕組みを整える必要があると訴えている(NHK)。

 

 

●注目点

「通信各社・連携して通信障害に対応へ」

TTドコモKDDIソフトバンク楽天モバイルが、大規模な通信障害が発生した際、自社の利用者向けに提供しているWi-Fiサービスを、無料で相互に開放する仕組みを検討していることが分かった。通信障害時の対応を巡っては、ほかの会社の携帯回線を利用できるローミングの導入に向けた議論も行われているが、開始時期の目標は2025年度末となっている。これに対し、Wi-Fiの相互開放は、ローミングよりも早く開始できる可能性があり、各社は実現に向けて調整を急いでいる(NHK)。一方、KDDIは去年7月に大規模通信障害が発生し、60時間以上にわたり、延べ3000万人以上に影響した事態を受け、3月29日から新サービス「副回線サービス」を開始する。通信障害、災害などに備え、もうひとつSIMを入れることが出来るようになり、1台の携帯端末でソフトバンク回線を予備として利用することが出来る。回線がつながらない事態が起きた時には、手動で回線を切り替えることが出来、電話、スマホ決済などが使えるようになる。料金は月額429円で、新たな電話番号ももらえる。ソフトバンクも同様のサービスを4月12日から開始する(TBS)。

 

 

3月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・三井不動産、第2位・宇宙航空研究開発機構、第3位・日本テレビホールディングス」

2023年3月のテレビ報道CM価値換算ランキングで第1位に輝いたのは、44億5652万円で「三井不動産」となった。具体的には、「まるで“一つの街”が出現・東京ミッドタウン八重洲の全貌」「東京ドームシティに吉本新劇場」等によるものであった。第2位は「14年ぶり“宇宙飛行士”候補・日本人初・月面に降り立つ可能性も」等の報道で、「宇宙航空研究開発機構」となった。第3位は「“テレビ放送70年”NHK×日テレ」などの報道で「日本テレビホールディングス」。第4位は「回転ずし・迷惑行為をAIカメラで検知」などの報道で、「くら寿司」となった。第5位は「話題の新球場・エスコンフィールドHOKKAIDO」などの報道で「日本ハム」となった。第6位は「東京ディズニーが“多様性”推進・制服・髪型など“男女別”を廃止に」などの報道で「オリエンタルランド」、第7位は「大人気飲食チェーン対抗・アレンジバトル最強決定戦」などの報道で「大戸屋ホールディングス」、第8位は「映画ドラえもん・のび太と空の理想郷」などの報道で「東宝」となった。第9位は「大人気飲食チェーン店が意地と看板をかけて対決」などの報道で「リンガーハット」、第10位は「全国1000店舗達成記念セール」などの報道で「神戸物産」となった。

 

3月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長、第3位・日本航空・赤坂祐二社長」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁83件(異次元の金融緩和を推進・日銀・黒田総裁・10年の軌跡など)、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長26件(ニッポンの社長が景気を考えるSPなど)、第3位・日本航空・赤坂祐二社長12件(日本航空・格安航空券キャンペーン来月再開へなど)、第4位・セブン&アイ・ホールディングス・井阪隆一社長11件(セブン&アイHDが決定・イトーヨーカドー30店超削減へなど)、第5位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長10件(サントリー7%賃上げで合意など)、第6位・経団連・十倉雅和会長9件(政労使会議”8年ぶり開催など)、第7位・楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長8件(楽天G株主総会など)、第8位・三井不動産・菰田正信会長8件(三井不動産の大いなる野望とは?など)、第9位・浅野撚糸・浅野雅己社長7件(なぜ今福島に新拠点?岐阜の町工場・知られざる闘いなど)、第10位・東急・高橋和夫社長7件(鉄道ビジネスは転換期!?沿線外でも商機をつかめなど)。

 

 

●テレビの窓

「デジタル給与・4月解禁へ・経費の精算がスピードアップ!?」

マホ決済サービス最大手のPayPayがデジタル給与事業に参入する方針を固めた。給与の支払いはこれまで、現金や銀行口座への振り込みに限られていたが、4月からはスマホ決済アプリに支払う「デジタル給与払い」も可能になる。決済事業者がデジタル給与事業に参入するには厚労省の認可が必要。スマホ決済サービス最大手のPayPayは、できるだけ早期に厚労省に申請を行い、デジタル給与事業への参入を目指すという。日本のキャッシュレス決済の普及率は30%程度と、各国と比べて低い水準だが、最大手のPayPay参入でデジタル給与払いがどこまで定着するか注目される(TBS)。給与のデジタル払いに前向きな日本瓦斯では2018年から送金アプリ「プリン」を社内の経費精算で使用している。経費について、以前は月1回、給与と同時に振り込んでいたが、この送金アプリを使うことで銀行振り込みと比べ手数料が下がり、社員が経費を立て替える期間が短くなり利便性を実感しているという。日本瓦斯では今、デジタル給与の導入に向けて着々と準備を進めている。PayPay・柳瀬将良金融戦略本部長は「なるべく早く申請できるように準備している。働き方改革みたいなことが言われている。副業やギグワーカー、即時払いなど、そういう働き方を後押しすることで採用が増えたり従業員の満足度があがったりすればいい」とコメントした。(テレ東)。

 

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