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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年5月)

「GDP年率換算マイナス1.8%」「長期金利上昇・12年ぶりの高い水準」

今月の特徴は1.GDP年率換算マイナス1.8%、2.長期金利上昇・12年ぶりの高い水準、3.円安の動き、4.人手不足の動向、5.外国人観光客の動向、6.エネルギーの動向となった。

 

1.GDP年率換算マイナス1.8%

内閣府が発表したことし1月から3月までのGDPの改定値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてマイナス0.5%だった。これが1年間続いた場合の年率に換算するとマイナス1.8%となり、先月16日に発表された速報値から0.2ポイント上方修正された。GDPの伸び率がマイナスとなるのは2期ぶりとなる。企業の設備投資は今月3日に発表された最新の統計を反映した結果、前の3か月からの伸び率が速報値のマイナス0.8%からマイナス0.4%に引き上げられた。一方、GDPの半分以上を占める個人消費の伸び率はマイナス0.7%と、速報値と同じ水準となった。また、モノやサービスの輸出はマイナス5.1%と速報値から0.1ポイント引き下げられる一方、輸入はマイナス3.3%と0.1ポイント引き上げられた。物価の上昇が続く中、賃上げや定額減税などによって消費を上向かせることができるかが焦点となる(6/10NHK)。

 

2.長期金利上昇・12年ぶりの高い水準

24日の東京債券市場では長期金利の代表的指標である10年もの国債の利回りが1.005%をつけた。12年ぶりの高水準。日銀による追加利上げや国債の買い入れ減額など「金融政策の正常化が早まる」との観測が広がったほか、米国の長期金利の上昇が要因。市場関係者は「長期金利の上昇圧力は今後も続くだろう」との見方を示している。長期金利の上昇は住宅ローンの固定金利などに連動して家計に影響するほか、企業の資金借り入れ時の負担にもつながる(TBS)。

 

3.円安の動き

財務省は28日、日本政府や企業・個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産残高が、2023年末時点で471兆3061億円となり、過去最大を更新したと発表した。円安で外貨建て資産の評価額が上昇したのが主な要因で、33年連続で世界首位となった(NHK)。一方、長引く円安の影響で中価格帯がなくなり、価格の二極化が起きている。中価格帯商品が利益を取れないため。円安で稼げなくなった外国人労働者がオーストラリアやカナダに転職するケースが増えている。円安になっている理由は、日本と米国の金利差で、米国と日本の金融政策が違うことによるもの。日本が大規模緩和策を続ける限り円安は続く(日テレ)。

 

4.人手不足の動向

1970年にオープンしたTOCビルは都内最大級の商業施設として多くの人でにぎわったが、2021年に建て替えを発表。テナントとして入っていた全ての店は退去した。ところが、閉館直後の先月9日、ビル側が突然、建て替えを9年ほど延期すると発表。今の建物をリニューアルし再開させる考えを示した。不動産コンサルタント・長嶋修氏は「工事費の上昇と人手不足で建て替えを延期するビルが今後増える」と予測する。一方、今年春に卒業した大学生の就職率は98.1%で、前の年より0.8ポイント増えた。統計が始まった1996年度以降で最も高くなった。文部科学省は、深刻な人手不足で企業の求人が増加し売り手市場となっていると分析(フジ)。

 

5.外国人観光客の動向

インバウンド急増で訪日外国人が2か月連続で300万人を超えている。外国人観光客の目当ての一つが、富士山。7月からの山開きを目前に様々な問題が巻き起こっている。山梨県富士河口湖町にあるコンビニに注目が集っているのは店の上に富士山がのっているような美しい風景が撮影できるからだが、ここに外国人観光客が殺到し、迷惑行為が繰り返されたため富士山を隠す黒い幕を設置することになった(テレ朝)。

 

6.エネルギーの動向

東北電力は、宮城県・女川原子力発電所2号機の安全対策工事が27日に完了したと発表した。東北電力は女川原発2号機の再稼働に向けて、2013年から地震や津波などの際の事故に備えた安全対策工事を進めてきた。これまでに、想定される最大クラスの津波に備えて、防潮堤の高さを海抜29メートルにかさ上げ、事故が起きても原子炉を7日間冷やし続けられる量にあたる約1万トンの水をためられる貯水槽を設置、ケーブルを入れる管を燃えにくい素材で覆う工事などを行った。女川原発2号機は、事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型と呼ばれるタイプで、今後はことし7月ごろに原子炉に核燃料を入れた上で、沸騰水型では目標時期が発表されている中で最も早い、ことし9月ごろの再稼働を目指すことにしている(NHK)。

 

 

●新潮流

「トヨタ・マツダ・SUBARUが共同発表・次世代エンジン」

ヨタ自動車、マツダ、SUBARUの3社が、共同で環境性能を高めた次世代エンジンに関する説明会を開いた。3社が共同開催した説明会には、それぞれの社長も出席した。この中で、トヨタはプラグインハイブリッド車などの電動車に搭載することを想定して開発を進めている、小型で高燃費のエンジンの模型を披露した。また、マツダは小型で軽量なロータリーエンジンの開発を継続し、幅広い燃料に対応できる特徴を生かして、バイオ燃料などと組み合わせていく方向性を示した。一方、SUBARUは重心が低く、振動を抑えられる水平対向エンジンと電動ユニットを組み合わせて、燃費性能の高い車を開発していく方針を明らかにした。今回、3社が共同でエンジンの説明会を開いた背景には、車の電動化が進む中、エンジンの分野でも、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強化し、アピールするねらいがある。トヨタ自動車・佐藤恒治社長は「今だからこそできる内燃機関のあり方をもっと追求できる」と述べた(NHK)。

 

 

●注目点

「商社各社・業績好調・円安で海外事業増益」

手商社の昨年度1年間の決算が、2日、相次いで発表された。当初の想定より円安が進み、海外事業の利益が押し上げられたことなどから各社とも好調な業績となっている。このうち三菱商事は、昨年度1年間のグループ全体の決算で、最終的な利益が9640億円となり、これまでで2番目に高い水準となった。LNG液化天然ガスの取り引きに関する利益などが増えたほか、円安によって最終利益が押し上げられたという。このほか、丸紅は最終的な利益が4714億円となり、過去最高だった前の年度を13.2%下回ったが、海外での発電事業が増益となったことや、円安による利益の押し上げ効果などによって、過去2番目に高い水準となった。また住友商事は、最終的な利益が前の年度を31.7%下回ったものの、海外での自動車販売が好調だったことなどから過去3番目に高い水準となる3863億円となった。一方、航空大手の日本航空が2日に発表した、ことし3月までの1年間の決算では売り上げが1兆6518億円と、前の年よりも20%増加し、最終的な利益は955億円と前の年の2.7倍に増えて、大幅な増益となった。国際線の旅客収入がインバウンド需要を背景に、前の年の1.5倍と大幅に増加したことが主な要因(NHK)。 

 

 

5月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東日本旅客鉄道、第2位・テレビ朝日、第3位・オリエンタルランド」

2024年5月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは「東日本旅客鉄道」が44億6322万円で第1位となった。具体的には、「JR東日本がネット銀行開始」「JR東などQRコード切符に」「訪日客増加などで窓口混雑・JR東日本・みどりの窓口・当面維持」等によるものであった。第2位は「Believe君にかける橋・テレビ朝日開局65周年記念」等の報道で、「テレビ朝日」となった。第3位は「東京ディズニーシー新エリア“ファンタジースプリングス”公開」などの報道で「オリエンタルランド」。第4位は「JAL全面協力で最新機をTV初公開!」などの報道で、「日本航空」となった。第5位は「セブンイレブン1号店から50年」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」、第6位は「京成バラ園では、バラ1万株が見頃」などの報道で「京成電鉄」、第7位は「自動運転バス実証実験・京急・東急バスが共同で」などの報道で「京浜急行電鉄」、第8位は「イオン トップバリュvs超一流料理人」などの報道で、「イオン」となった。第9位は「日本企業初・トヨタ営業利益5兆円超」などの報道で「トヨタ自動車」、第10位は「ニトリ再雇用70歳まで・給与9割維持も」などの報道で「ニトリホールディングス」となった。

 

5月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長、第3位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長」

第1位・日本銀行・植田和男総裁69件(日銀・植田総裁2%物価目標・持続的・安定的実現へ注意深く進めるなど)、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長42件(物価高で続々!飲食店くら替え消える輸入肉”…スーパーにも変化など)、第3位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長37件(EV成長鈍化の中「次世代エンジン」開発へなど)、第4位・JR東海・丹羽俊介社長31件(リニア・首都圏・きょうからトンネル本格工事など)、第5位・アップル・ティムクックCEO25件(iPhoneにマイナ機能搭載へなど)、第6位・日本航空・鳥取三津子社長21件(国交省がJALを厳重注意など)、第7位・日産自動車・内田誠社長19件(法令違反確認されず・外部調査でなど)、第8位・ホンダ・三部敏宏社長18件(EVシフトの鈍化・日本メーカーの戦略はなど)、第9位・テスラ・イーロンマスクCEO17件(米国テスラ・充電器部門で再雇用かなど)、第10位・経団連・十倉雅和会長13件(任期最後の4年目・経団連・十倉会長賃上げ加速・デフレ脱却など)。

 

 

●テレビの窓

「未来の東京を体感できる展示会」

050年、未来の東京での生活をイメージした最新テクノロジーの展示会が東京都内で開催された。交通渋滞や少子高齢化など、都市が抱える社会問題を解決しながら持続可能な社会を作っていこうと、日本科学未来館(東京・江東区)で催された展示会「SusHi Tech Tokyo 2024」には、国内外から120点以上の最先端の技術が集まった。展示品の目玉には、「JobyS4(空飛ぶタクシー)」や、未来の祭りで使うという「ツナグルマ(未来の山車)」が含まれている。「ツナグルマ」は電動でアシストするため、大人4人ほどでひくことができる。会場には、さらに最先端の技術を体験できるコーナーもあった。全長約2m50cm、重量400kgの人型ロボット「ファイバリオン」や、実用化に向けて急ピッチで開発が進む空飛ぶクルマのシミュレーターも展示され、VRを使って実際に東京の空を飛んでいるような体験ができた。ほかにも全身を撮影し、自分の3Dモデルを作ることができるカメラなども展示された。開催の狙いについて、東京都政策企画局・横山智行氏は「テクノロジーの進化もありつつ、生活している方々が少しずつサステナブルな取り組みを進めていただく。それによって、世の中が良くなっているというのを実感していただきたい」とコメントした(フジ)。

 

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