テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年6月)
「1ドル161円台に・37年半ぶりの円安ドル高水準を更新」
今月の特徴は1.円安ドル高進む、2.日銀・国債買い入れ減額の方針決定、3.株主総会の動き、4.外国人観光客の動向、5.人手不足の動向、6.エネルギーの動向となった。
28日の東京外国為替市場で円相場は1ドル161円台まで値下がりし、およそ37年半ぶりの円安ドル高水準を更新し、円安に歯止めがかからない状態が続いている。背景には米国の金融政策に対する市場の思惑。米国のFRB(連邦準備制度理事会)が利下げを急がないとの見方が強まったことがある。これについて鈴木財務大臣は「急激な、しかも一方的な為替相場の変動が経済に与える影響について深く懸念している。政府としては為替市場の動向を高い緊張感で注視していて、過度な変動に対しては適切な対応を取っていきたい」と発言した。市場では政府日銀の市場介入への警戒感が高まっている(NHK)。
2.日銀・国債買い入れ減額の方針決定
14日、日銀は国債の買い入れの規模を減らす方針で、現在、月間6兆円程度としている国債の買い入れの規模を減らす方針を賛成多数で決めた。計画の決定にあたっては、市場参加者の意見も確認するとしていて、債券市場の参加者と日銀の担当者による会合を開くとしている。日銀・植田総裁は「予見可能な形で」という言葉を何度も使い、丁寧に進めていく必要があるという考えを強調した(NHK)。具体策は市場の意見を聞いて慎重に決めるという日銀だが、結構具体策を言っている。一気に策を出すとその瞬間だけ円高に動くかもしれないが、材料が出尽くすとまた円安に振れてしまう。円安を牽制するというのは日本銀行にとって非常に重要な要素になってきている(テレ東)。
3.株主総会の動き
東洋証券は26日、株主総会の開催前に取締役会を開き、会社が提案する予定だった取締役8人を選任する議案のうち、桑原理哲社長の再任案を撤回したと発表した。理由について会社は事前投票の状況から株主の十分な信任が得られていないとしており、桑原社長が取締役の再任の辞退を申し出たためだとしている。桑原氏は26日付けで社長を退任した。東洋証券に対しては企業に積極的に経営改革を促す投資家・アクティビストが議決権ベースで合わせて30%近くの株式を保有し、このうちUGSアセットマネジメントが業績不振に加え、株主軽視の態度が目立つとして桑原氏を含む会社の取締役選任案に反対する意向を表明していた。株主総会の開催直前に会社が社長の取締役再任案を撤回するのは異例のこと(NHK)。
4.外国人観光客の動向
期待されるのが、外国人観光客の増加。消費額が増えることも予想される中、外国人観光客向けのサービスや商品の価格設定が変わってきている。世界遺産・姫路城に昨年度訪れた人は約148万人。このうち3割余は外国人。兵庫・姫路市の清元市長は17日、「今後、文化財として保護していくために多額の費用が見込まれる」として、料金設定の見直しを検討していく考えを示した。現在は18歳以上で一律1000円と設定されているが、海外の事例も参考にしながら、外国人観光客と市民などとの間で差をつける二重価格も含めて検討するという(NHK)。
5.人手不足の動向
JR西日本が7月から人形ロボットの使用を始める。開発したのは人のような外見のロボットと鉄道工事用の車両が融合した重機。操縦者とロボットの動きを連動させて樹木の伐採など様々な作業ができ、作業にかかる人員を3割減らせるとしている(テレ朝)。
6.エネルギーの動向
三井物産は、アブダビ国営石油会社が主導するUAEでのプロジェクトに出資する形でアンモニア製造事業に参加する。プロジェクトでは2027年から年間100万トンのアンモニアを生産し、一部を船の燃料や発電向けなどアジア中心に供給し、日本にも輸出する。三井物産は米国でもアンモニアの生産を計画するなど安定供給に向けた体制づくりを進めている(NHK)。
●新潮流
「日本の中小企業がカンボジアに熱視線」
日本の中小企業が注目するカンボジア。現在は、驚くような発展を遂げ、首都プノンペンには高層ビルが建ち並び、夜になるとライトアップされ街は華やかになる。国民の生活もかなり豊かになっている。カンボジアの過去25年のGDP・年平均成長率は7.6%。世界で最も成長した国の一つとなった。めざましい経済成長の理由は世界でも類を見ない人口構成。若い世代が多く、国民の平均年齢は26.5歳。カンボジアには今、日本企業が数多く進出しており、特徴的なのは中小企業が多いこと。カンボジアフレッシュファームでは日本の養殖技術を応用し淡水魚のティラピアを養殖。養殖から加工まで一貫して行っている。日本の中小企業にとってカンボジアは進出しやすい環境で、外資100%の出資で現地法人を設立でき税制面でも優遇を受けることができる。更に通貨もドルが使われている為、為替リスクも低い。インドシナ半島の真ん中にあるのでビジネスを東南アジアで広げていくには最適だという。日本企業にとって何よりありがたいのが親日国であること。カンボジアでは、日本のODAが浸透している。特に感謝されている日本の支援は浄水場。実は近年、中国による支援が増え、2010年以降、しばらく中国が日本を抜いていた。多くのインフラが中国の支援で整備され、さらにカンボジアは中国の一帯一路にも参加している。結果、国際社会からガンボジアは中国寄りと見られてきたが、コロナをきっかけに中国人客が激減。その後も中国の不況の影響で戻ってきていない。地元の副知事は投資国の多様化が必要と語っている。フンマネット首相は去年、来日した際の講演で、日本企業向けの経済特区の設立を表明し、国民が日本の技術を習得することに期待している(TBS)。
●注目点
「上場企業の株主総会・ピーク迎える」
上場企業の株主総会は27日がピークとなり、東京証券取引所に上場する660社以上が株主総会を開いた。このうち三菱UFJフィナンシャルグループでは傘下の銀行と証券会社が顧客企業の非公開情報を無断で共有していたことが明らかになり、今月銀行と証券会社に対し金融庁から業務改善命令が出された。総会の冒頭で亀澤宏規社長は「株主様をはじめ関係者の方々にご迷惑・ご心配をおかけし、深くお詫び申し上げる。処分を厳粛に受け止め、信頼回復に向け改善、再発防止にグループ一丸となり取り組んでいく」と述べ、陳謝した。また株主からの質問に対し「役員の処分についてこれから社内手続きを進めるが、報酬の減額も含めて必要な対応を検討したい」と述べた。一方、今月株主総会を開く上場企業のうち、アクティビストなどからの株主提案を受けたのは91社と過去最多となっている。27日は社長の解任の提案を受けている製紙会社の北越コーポレーションや東京ディズニーリゾートの運営会社の株式の一部を売却するよう求められている私鉄大手の京成電鉄の株主総会も行われ、決議の行方や会社側の対応が注目された(NHK)。
●6月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)
「第1位・オリエンタルランド、第2位・ニトリホールディングス、第3位・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」
2024年6月度のテレビ報道CM価値換算ランキング第1位は69億6871万円で「オリエンタルランド」となった。具体的には、「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングス満喫SP」「不朽の名作『ライオンキング』30周年記念映像公開」等によるものであった。第2位は「熱狂マニアさん・便利で時短!!最強ニトリ夏の陣SP」等の報道で、「ニトリホールディングス」となった。第3位は「成増に3月誕生・MEGAドンキ・マーボカレー焼きそば完成」などの報道で「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」。第4位は「無印良品・全国の従業員が・本音ぶっちゃけ!私はコレ買う・15選」などの報道で、「良品計画」となった。第5位は「スカイツリーのスゴ腕たち!東京をメンテナンスする仕事人」などの報道で「東武鉄道」、第6位は「飲食チェーン“強み”生かす新業態・うどんの“新食感ドーナツ”で勝負」などの報道で「トリドールホールディングス」、第7位は「リニア新幹線開業への道・トップは何を語る?」などの報道で「東海旅客鉄道」、第8位は「業務スーパー『横浜いずみ店』で出口調査」などの報道で、「神戸物産」となった。第9位は「窓際族が世界規格を作った・VHS・執念の逆転劇」などの報道で「JVCケンウッド」、第10位は「3日連続3都市で開催・映画『キングダム』完成披露試写会」などの報道で「東宝」となった。
●6月の人物ランキング
「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・マツダ・毛籠勝弘社長、第3位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長」
第1位・日本銀行・植田和男総裁84件(日銀・植田総裁・インフレ予想2%には“少し距離がある”など)、第2位・マツダ・毛籠勝弘社長48件(マツダ・定時株主総会・認証不正問題で毛籠社長が株主に謝罪など)、第3位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長41件(“豚肉ショック”過去20年で最高値など)、第4位・ホンダ・三部敏宏社長35件(自動車メーカーなど5社・性能試験で不正など)、第5位・テスラ・イーロンマスクCEO19件(米国電気自動車大手テスラ・イーロンマスクCEOに“8兆8000億円報酬”など)、第6位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長18件(トヨタ自動車社長・認証不正問題を陳謝など)、第7位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長17件(人工超知能実現を強調・孫氏が示したビジョンなど)、第8位・日本経団連・十倉雅和会長17件(経団連が夫婦別姓提言など)、第9位・JR東日本・喜勢陽一社長17件(JRが値上げ申請へ・鉄道運賃今後どうなるなど)、第10位・アップル・ティムクックCEO12件(iPhoneにマイナ機能搭載へなど)。
●テレビの窓
各社が生成AIを軸に様々なビジネスを打ち出している。ソフトバンクは米国の生成AI系スタートアップ、パープレキシティと組んだ新サービスを発表した。パープレキシティはアプリなどで使えるAI検索エンジン。AIの回答に加えて、情報源を参照することが可能になっていて、回答が間違っていないかどうかを確認できる仕組みになっている。スーパーで買った食材のレシートを撮影し「これで献立を考えて」と質問すると、複数の献立をレシピつきで提案してくれる。今回、月3000円ほどの有料サービスをソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOのユーザーに対して1年間、無料で利用できるようにする。パープレキシティの検索サービスはすでに日本でも利用可能で、一部のユーザーからは「ググる」ではなく「パプる」という言葉も出ている。ソフトバンクでは、このパプるサービスで他のキャリアとの差別化を図る狙い。さらに27日、孫正義会長兼社長が会見し、AI=人工知能で、個人の遺伝子情報や医療データを解析し、がんなどの治療に役立てるサービスを国内で始めると発表した。孫会長兼社長は「本当にAIが医療に役立てるタイミングがきた」と述べた。ソフトバンクグループは、米国の医療系スタートアップと合弁で、新会社「SBテンパス」の設立を発表。遺伝子検査で得られた個人のゲノムデータや電子カルテなどの医療データを収集してAIで解析し、患者ごとに最適な治療の提案を目指す。一方、マイクロソフトが18日に発売の生成AIを内蔵したというパソコン「サーフェスプロ」「サーフェスラップトップ」を公開した。新たな機能の一つが、AIによる画像の生成。ほかにも過去に見たウェブページやメールなどをAIがすぐに見つけてくれる機能などもある。これまではインターネット回線につないでクラウド上でAIの機能を利用することが一般的だったが、ネットにつながなくても利用が可能となる。パソコンに内蔵させることによって生成AI利用のハードルを下げると同時に自社製品の普及につなげたいとしている。日本マイクロソフト・コンシューマー事業本部長・竹内洋平執行役員は「パソコンへの向き合い方が大きく変わってくるだろう」とコメントした(テレ東)。
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