テレビ情報のデータベース化、知識化、ネット情報の収集、多角的分析が現実世界を浮き彫りにします

テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年12月)

「日銀が異次元緩和を修正」「原油高・円安で経常収支641億円赤字」

今月の特徴は、1.日銀が異次元緩和を修正、2.原油高・円安で経常収支641億円赤字、3.物価高の影響、4.中国・ゼロコロナ政策撤回の影響、5.東証で大納会、6.エネルギーの動向となった。

 

1.日銀が異次元緩和を修正

日銀は20日に開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を修正する方針を決め、長期金利の上限を従来の0.25%から0.5%に引き上げた。市場では事実上の利上げと受け止められている。日銀・黒田総裁は「緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、一部見直すことを決定した」と述べた。日銀は長期金利が0%程度で推移するよう政策運営するうえで、±0.25%程度の変動幅を認めていたが、これを±0.5%程度に変更した。これは事実上の利上げを意味し、アベノミクスの象徴だった異次元緩和が10年目で転換点に差しかかったということを意味する(テレ東)。

 

2.原油高・円安で経常収支641億円赤字

財務省が発表した10月の国際収支速報によると経常収支は641億円の赤字だった。赤字は今年1月以来、9か月ぶり。赤字の主な要因となったのが貿易収支。10月は円相場が一時1ドル151円台をつけるなど32年ぶりの歴史的な円安水準となり、輸入額は過去最大を記録。特に10月の原油の輸入価格は、1年前と比べて80%近く上がるなどエネルギー関連の輸入額が膨らんだ(テレ東)

 

3.物価高の影響

今年の日本経済を苦しめたのは、40年ぶりの物価高だった。ロシアによるウクライナ侵攻によってエネルギー価格が値上がりし、中国のロックダウンで工場が停止し、値上がりは家電製品にも広がった。さらに、日米の金融政策の違いから急速な円安が進行し、食品をはじめとした生活のあらゆる商品にまで値上がりが波及した結果、消費者物価の伸び率は40年ぶりの水準となる3.7%に達した(財務省より)。こうした中、日銀は事実上の利上げに踏み切り、年明けには固定型の住宅ローン金利が引き上げられる(NHK)

 

4.中国・ゼロコロナ政策撤回の影響

中国のゼロコロナ政策の撤回による新型コロナウイルスの急激な感染拡大の影響で半導体大手「ルネサスエレクトロニクス」北京工場が16日から操業を停止した。供給には大きな影響はないとしている。北京市内の別の日本企業でも在宅勤務に切り替えるなどの影響が出ている。中国政府はゼロコロナ政策撤回以降、感染が急拡大する中、死者数をゼロと発表してきたが、19日には2人の死亡を発表した(テレ朝)。

 

5.東証で大納会

東京証券取引所では岸田総理大臣が出席する中、今年の取引を締めくくる大納会が行われた。岸田首相は「来年は新しい資本主義を本格起動させていく年だ。資産所得倍増プラン元年として貯蓄から投資へのシフトを大胆、抜本的に進めていく」と述べた。ことしの日経平均株価は2万6094円で取引を終え、年末の終値は4年ぶりに値下がりとなった(テレ朝)

 

6.エネルギーの動向

政府は、脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給に向けた基本方針を取りまとめた。政府のGX(グリーントランスフォーメーション実行会議)で決定した基本方針では、再生可能エネルギーや原子力など「脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」と明記され、次世代型原子炉への建て替えも推進するとしている。原発の運転期間については、安全審査などで運転停止した期間を除外することで、稼働から60年を超えても運転が可能になるとして、実質的な運転期間の延長を認めることなどが盛り込まれた(フジ)。三井物産伊藤忠商事、発電会社・JERAは、中東・オマーンからLNG(液化天然ガス)を新たに購入する長期契約に合意した。期間は2025年から10年程度で、年間235万トンを調達する。ロシアのウクライナ侵攻後、LNGの需給が世界的にひっ迫し輸入先の多角化が急がれる(テレ東)。

 

 

●新潮流

「どうなる?2023年の経済」

年、最後の取引となった30日は昨年末と比べて8.7%の下落と4年ぶりに前の年を下回り、下落幅はリーマンショック以来の大きさとなった。ムーディーズアナリティックス・マークザンディチーフエコノミストは、来年の米国経済について、FRBは政策金利を5%程度の高水準で維持すると予想した上で、厳しい年になるとの見通しを示し、「インフレは和らぐが、景気後退のリスクが高い。どんなシナリオでも米国経済は減速する」と述べた。一方、来年の日本経済については、欧米の急速な利上げや中国経済が減速していることを理由に「世界のほとんどの国が厳しい年になるのと同じように(日本も)苦しい状況になるだろう」述べている。来年の世界経済、さらに日本経済への影響について第一生命経済研究所・熊野英生首席エコノミストは「2022年はウクライナ侵攻により原油が上がった。対ロシアの経済制裁、エネルギー市場からロシアを締め出すことで供給が少なくなり、物価が上がっている。構造的な物価上昇要因もある。来年前半の物価上昇率も下がりにくい。そういう中で欧米の中央銀行が非常に厳しい利上げを開始した。少なくとも来年前半の景気はかなりスローダウンが目立ってくるのではないか」「2023年の日本にとって、海外経済の悪化は、北風が吹くような形。日本から欧米への輸出が、数量ベースでもマイナスに転じていく可能性がある。企業部門は海外の売り上げ、輸出が減る形で、だんだん企業収益にも悪化が波及してくる可能性が懸念される。国内にとっては、企業収益が減っても来年春以降の賃上げで個人消費が回っていけば、設備投資、企業収益が悪化したとしても個人消費で支えられていく。北風に対する耐久力、企業が家計に分配をきちんとするかどうかにかかっている」と述べた(NHK)。

 

 

●注目点

「産業革新投資機構・スタートアップ企業向け新ファンドの設立を発表」

府は今、世界で戦えるスタートアップ企業を増やす目標を掲げていて、特に「ユニコーン」と呼ばれる未上場で企業評価額が10億ドル(1300億円)以上の企業を100社作るとしている。その実現に向けて産業革新投資機構(JIC)は16日、スタートアップ企業向け新ファンドの設立を発表した。総額2000億円をディープテックなどの先進技術分野に投資する方針。ディープテックは大きなエネルギーが得られる「核融合」の技術や、複雑な計算を可能にする「量子コンピューター」などの社会を大きく変える技術。世界の投資額は約130億ドル(約1兆8000億円)にのぼるが、日本での投資はこれまで活発ではなかった(出所:THE Engine)。2018年創業のキュナシスは量子コンピューターを使い分子レベルで物質を再現するソフトウェアを開発している。この技術が実用化すれば、今までなかった新薬や素材を早く開発することが可能になるという。幅広く使えるまでには10年以上かかり、政府系ファンドなどの支援が今後も重要になるという(テレ東)。

 

 

12月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・味の素、第2位・東宝、第3位・オリエンタルランド」

2022年12月のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、「味の素」が28億9755万円で第1位となった。具体的には、「冷凍食品総選挙・味の素冷凍食品の『ギョーザ』が3年連続でグランプリを受賞」「ジョブチューン・味の素の社員が選んだ『Cook Do』のイチオシ商品を、超一流料理人がジャッジ」等によるものであった。第2位は「『ブラックナイトパレード』・吉沢亮、中川大志、渡邊圭祐をLiLiCoが直撃」等の報道で、「東宝」となった。第3位は「ディズニー名物の巨大ツリー・3世代家族や外国人も大興奮」などの報道で「オリエンタルランド」。第4位は「不二家の巨大お菓子工場で『ホームパイ チョコだらけ』の秘密に迫る!」などの報道で、「不二家」となった。第5位は「回転ずしチェーン店『スシロー』の激安&激ウマの裏側を大解明」などの報道で「FOOD & LIFE COMPANIES」となった。第6位は「JR東日本・来年3月18日から・混雑緩和へ『オフピーク定期券』」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第7位は「イトーヨーカドーアリオ橋本店で6種類のロボットを試験的に導入」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」、第8位は「Xmasに活躍&70%オフも!ピザハットベスト5を当てましょう」などの報道で、「日本KFCホールディングス」となった。第9位は「狙いは“オンライン診療から薬配送”LINEが一貫して実施へ」などの報道で「Zホールディングス」、第10位は「三井不動産12年ぶり社長交代」などの報道で「三井不動産」となった。

 

 

12月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・ツイッター・イーロンマスクCEO、第3位・アキダイ・秋葉弘道社長」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁146件(日銀総裁“出口の一歩では全くない”など)、第2位・ツイッター・イーロンマスクCEO102件(イーロンマスク・アップル非難「ツイッターCEO後任見つかり次第・マスク・辞任の意向表明」など)、第3位・アキダイ・秋葉弘道社長34件(物価高の年末商戦!「少しでも安く!」など)、第4位・ラピダス・小池淳義社長18件(国産半導体のラピダス・トップ研究機関と提携の狙いはなど)、第5位・アップル・ティムクックCEO18件(小学校にアップル社CEO・児童と一緒など)、第6位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長14件(経済同友会次期トップ・サントリーHD・新浪社長・法人税増税に「説明責任がある」など)、第7位・ぐるなび総研・滝久雄社長10件(グルメ「今年の一皿」は?コロナ禍で進化など)、第8位・トヨタ自動車・豊田章男社長10件(トヨタ・微笑みの国で水素エンジン車・広がる共感など)第9位・銚子電鉄・竹本勝紀社長9件(銚子電鉄第8弾・竹本勝紀社長・監督兼主演のドラマ制作など)、第10位・デロンギジャパン・杉本敦男社長6件(ヒーター&コーヒーマシン・ファン熱狂の“おしゃれ家電”など)。

 

 

●テレビの窓

「セミコンジャパン2022に岸田総理が来場」

やスマートフォンなど暮らしに欠かせない半導体について。半導体が「経済安全保障」上最大のリスクになる中、14日から始まった46回目となる半導体の展示会に、現職の総理大臣が初めて来場した。車の電気自動車化やスマートフォンの高性能化で半導体需要は年々上昇している。しかし、半導体生産は台湾の一強状態。今年、世界の半導体の受託生産は台湾が66%に上るとの予測もある。米国のペロシ下院議長の台湾訪問「ペロシショック」がそのリスクを浮き彫りにした。更に中国政府は12日、米国・バイデン政権による半導体の輸出規制措置が「世界のサプライチェーンの安定を脅かしている」としてWTOに提訴したと発表した。米中対立などにより台湾から半導体が供給されなくなると、突然半導体を使う商品が作れなくなったり、値上がりしたりするリスクがある。トヨタ自動車NTTなどが出資し立ち上げた半導体の新会社「ラピダス」は米国・IBMの技術で、世界でも実用化されていない2ナノメートルの半導体量産を2027年に目指す(TBS)。イベントの目玉となるテスラの電気自動車が到着したが使われている半導体の多くは海外製で、世界で繰り広げられる半導体の覇権争いに日本は入っていない(テレ朝)。大和大学・佐々木正明教授は「世界が(半導体の輸出を)ブロック化していくことで日本はいま調達しているルートが取れなくなる可能性がある。日本政府が(半導体産業を)復興させることはしなくてはいけない」と話している(フジ)。

 

JCC株式会社