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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年3月)

「1都3県で緊急事態宣言解除・東京五輪・海外客の受け入れ断念へ」・新たに「まん延防止措置」発動へ

今月の特徴は1.1都3県で緊急事態宣言解除、2.東京五輪・海外客の受け入れ断念へ、3.日銀政策点検、4.ワクチン・検査の動向、5.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.1都3県で緊急事態宣言解除

1都3県で緊急事態宣言が解除された。国立国際医療研究センター・大曲貴夫医師は「宣言が解除されて、主要駅や繁華街の人の流れはさらに増えている。人の流れが増加すれば第3波を超える感染の急激な拡大が危惧される」と述べた(日テレ)。増加傾向が続く中、東京都・小池百合子知事は「東京の場合1000人いってもおかしくない」と述べ、リバウンドへの警戒を強め、緊急事態宣言が解除されてからも引き続き不要不急の外出自粛を呼びかけている(テレ朝)。こうした中、国土交通省は都道府県が独自に行っている観光支援策に対し1人につき1日あたり最大7000円を補助すると発表した。国土交通省は自治体が独自に行っている同一都道府県内の旅行代金割引事業について、1人につき1日あたり5000円を上限に、旅行代金の5割まで補助する他、地域内の土産物店や飲食店などで使えるクーポンの発行のために最大2000円を補助する。対象となるのは感染状況がステージ2以下の自治体の4月1日から5月末までの旅行で、国のGoToトラベル事業が再開できなければ延長も検討することにしている(TBS)。

 

2.東京五輪・海外客の受け入れ断念へ

海外からの観客の受け入れ断念が決まった東京オリンピックパラリンピックだが、大会に参加する関係者についても、大幅に削減される見込みとなった。IOC(国際オリンピック委員会)は26日、大会運営で役割がある人にのみ大会のIDカードを発行すると発表した。発行が制限されるのは、すべての関係者の同伴者やIOC委員の招待客、それにかつてのメダリストなどとしている。この決定はパラリンピックにも適用される(NHK)。東京都が導入したロボットコンシェルジュは観光や乗り換えの案内を英語や中国語でも対応している。ロボットの開発費用は、1台当たり2500万円。およそ100万人と想定していた海外の観客が見込めなくなったことで1500億円もの経済効果が失われるとの試算もある。更に指摘されているのが、海外の観客向けに国が開発を進めている健康管理アプリ。ワクチンや14日間の隔離なしでの入国を可能にするためのもの。日本滞在中の健康状態や行動記録など各省庁のシステムと連携しながら管理する。去年12月に突如政府が開発を打ち出したが、海外客を断念した今、73億円をかけてこのまま開発を進めるのかが、疑問視されている。平井大臣はコストの縮小を検討する一方で、五輪後も訪日外国人に活用できるとして開発を進めると強調した。6月にリリースされる予定で開発期間が短すぎると指摘するエンジニアもいる(TBS)。

 

3.日銀政策点検

日銀は19日まで開いた金融政策決定会合で、より効果的・持続的な金融緩和を実施するための「点検」結果を公表し、ETF(上場投資信託)買い入れの柔軟化など政策を修正した。政策委員からは金融緩和の長期化を見据え、金融機関の収益悪化など副作用にも注意しながら今の大規模な緩和策を継続すべきという意見が相次いでいたことがわかった。目標とする2%の物価上昇率の達成が見通せない中で、企業や家計の成長期待、インフレ期待の改善につながる企業の変革やそれを支える金融機能の強化を支援すべきとの意見も出された。新型コロナウイルスの影響で経済や物価の下押し圧力がかかり、金融緩和策の長期化が見込まれる中、日銀は引き続き難しいかじ取りを迫られている(NHK)。

 

4.ワクチン・検査の動向

新型コロナの影響で制限を受けている国境を越えた移動の再開につなげようと、全日空は飛行機に搭乗する際、スマホのアプリで表示するデジタル証明書でPCR検査の結果を確認する実証実験を国内の航空会社で初めて行った。実証実験は世界経済フォーラムなどが開発するアプリ・コモンパスを使って行われた。アプリは指定の医療機関で受けたPCR検査の結果がスマホの画面に表示され、訪問先の入国条件を満たしていることを示すデジタル証明書の役割を果たす。羽田空港のカウンターで全日空のニューヨーク行きの国際線を利用する2人の乗客が実験に協力し、陰性の検査結果を示すスマホの画面を航空会社の担当者が確認していた。このアプリは全日空など世界の航空会社8社が実験に協力していて、将来的にはワクチンの接種履歴も確認できるようにして世界共通の仕組みにすることを目指すとしている(NHK)。

 

5.エネルギーの動向

日本など各国が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げる中、大手商社の間では脱炭素に関連する事業の創出に取り組む新たな部署を立ち上げるなど、脱炭素ビジネスに力を入れる動きが活発になっている。このうち住友商事は来月、新しい社内組織を設立し次世代のエネルギーとして期待される水素の製造と活用や大型の蓄電池の開発など、脱炭素に関連する事業を集約して新たな事業の創出につなげるとしている。三井物産は二酸化炭素を回収、地中にためる技術開発を進め、英国企業に出資。日本での事業展開も検討している。三菱商事は電気自動車の普及で需要拡大が見込まれるアルミの原料ボーキサイトの鉱山事業に参入する(NHK)。セブン&アイホールディングスNTTグループが千葉県内に作る太陽光発電所から、コンビニなどで使う電気を調達すると発表。6月から首都圏にあるセブンイレブンの40店舗に供給し、来年1月にはアリオ亀有への供給を始める方針。セブン&アイは2050年までにグループの店舗から排出する二酸化炭素を実質ゼロにする計画を立てている。また再生エネルギー事業の拡大を目指すNTTにとっても、今回の太陽光発電によるセブン&アイへの電力の供給は初の大型契約となる(テレ朝)。

 

 

●新潮流

「脱炭素社会の実現に向け動き出した新エネルギー」

府は2050年までの脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーを主力電源化する方針を固めた。ただ、その代表格ともいわれる風力発電や、太陽光発電については、必要なときに必要な出力を確保するのが難しいといった課題がある。そこで国が力を入れているのが水素である。再エネの発電量が多いときには、水を分解して水素を製造し、必要なときにその水素を燃やして発電する。さまざまな方法で、効率よく水素を輸送し、貯蔵する方法の検討も進んでいる。福島県浪江町の水素の製造施設は世界最大級の施設で、政府が掲げた福島新エネ社会構想によって整備され2020年に開所した。水素を自動車に使うことを想定しているだけでなく、別の用途にも使用できる。一方、オーストラリアで品質の低い石炭、褐炭から水素を作り出す実証実験や、オーストラリアで生産した水素を船で海上輸送する世界初の実証事業も、日本企業が始めている。水素の特許出願数は日本が世界でトップ。今後、日本が世界で主導力を発揮できるかが注目されている(NHK)。洋上風力発電にも注目が集まっている。政府は洋上風力発電について2040年までに最大4500万キロワットの導入を目指しており、経済産業省は海底に送電線を整備する検討を始めた。梶山大臣は会見で海底の地形が問題だと指摘し、「効率のいいもの、できるだけコストもかからないという中でどうしたらいいか考えていきたい」と述べた(テレ朝)。

 

 

●注目点

「世界で半導体が足りない!米国で巨額投資…日本は?」

月中旬、米国・テキサス州を襲った大寒波。氷点下の気温が1週間以上続き、湖は完全に凍結した。400万世帯以上に停電の被害が出たほか、半導体メーカー・サムスン電子の工場が停電し製造ラインがストップした。世界的なテレワークの拡大でパソコンの売り上げが伸びたほか、中国などでの自動車生産が急回復する中で半導体不足に深刻な打撃となった。バイデン大統領は半導体の製造強化に約3兆8000億円の投資を表明し、これを受けインテルは23日、アリゾナ州に2つの工場を建設すると発表した。投資額は2兆円超となる。アリゾナ州には台湾TSMCの工場もできる予定。一方、日本でもルネサスエレクトロニクスの工場で火災があった。4-9月の国内自動車大手の生産は165万台の生産が減少(三菱UFJモルガンスタンレー証券の試算)となる。経済産業省は半導体の安定供給に向けた方策などを話し合う初の半導体デジタル産業戦略検討会議を開催した。参加企業は半導体のルネサス、キオクシア、自動車部品のデンソーなど11社で生産拠点の国内建設を促すことが確認された。かつて半導体の売り上げの半分を握っていた日本は80年代をピークに10%に落ち込んだ。一方、半導体の需要は5Gや自動運転車などの市場拡大によりますます伸びる見込み(テレ東)。 

 

 

3月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ファーストリテイリング、第2位・コメダホールディングス、第3位・日本KFCホールディングス」

2021年3月期のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、「ファーストリテイリング」が23億400万円で第1位となった。具体的には、「作家・村上春樹とコラボした商品を発売」したことや、ジルサンダーとのコラボ新作品、「+J」の春夏コレクションの再発売の話題、加えて「ハノイでユニクロのダウンジャケットが人気になっている」等の報道が大きく寄与した。第2位は「名古屋発の喫茶店チェーン・コメダ珈琲店」などの報道で「コメダホールディングス」となった。第3位は「外食業界の最新動向」などの報道で「日本KFCホールディングス」、第4位は「無印が新店舗・生鮮・冷凍食品が充実」などの報道で「良品計画」、第5位は「ANA・飛ばない飛行機を活用・レストラン開業の舞台ウラ」などの報道で「ANAホールディングス」、第6位は「コロナ禍も…回転寿司進化・養殖でも“オーガニック”」などの報道で「くら寿司」、第7位は「NTTが都内“セブン”などに電力供給」などの報道で「日本電信電話」、第8位は「一度は食べてみたくなる!濃厚過ぎるモスの食パン」などの報道で「モスフードサービス」となった。第9位は「期待・ヤフー×LINEで生活は?」などの報道で「Zホールディングス」、第10位は「USJ・任天堂エリア開業・ゲームの世界観そのまま再現」などの報道で「任天堂」となった。

 

 

3月の人物ランキング

「第1位・NTT・澤田純社長、第2位・東北新社・中島信也社長、第3位・LINE・出澤剛社長」

1位・NTT・澤田純社長152件(総務省幹部・NTT社長とも会食など)、第2位・東北新社・中島信也社長116件(衛星放送事業の認定取り消しへなど)、第3位・LINE・出澤剛社長90件(ヤフーとLINE統合・利用者にメリット?新サービスはなど)、第4位・東京電力ホールディングス・小早川智明社長22件(福島への責任全うする・東電社長が訓示など)、第5位・楽天・三木谷浩史社長22件(日本郵政・楽天・資本・業務提携など)、第6位・Zホールディングス・川邊健太郎代表取締役社長20件(巨大IT企業誕生・ヤフーとLINE経営統合など)、第7位・日本郵政・増田寛也社長19件(日本郵政・楽天・資本・業務提携など)、第8位・トヨタ自動車・豊田章男社長16件(トヨタ・いすゞが資本提携へなど)、第9位・アキダイ・秋葉弘道社長14件(価格表示変更にお店は?など)、第10位・ソフトバンク・孫正義社長12件(ソフトバンクグループ・コロナ禍もどん底からの急回復のワケなど)。

 

 

●テレビの窓

「商品価格の総額表示が義務化」

品価格の総額表示が義務化される。一皿100円を売りの一つにしているくら寿司では、これまでメニューなどには税抜き価格の100円だけが記載されていたが、先週からは一新して税込み価格の110円も合わせて表示することにした。4月1日から消費税込みの総額表示が義務化されるため。これを機に価格を改定する会社も相次いでいて、ユニクロGUは消費者が求めやすい価格表示を維持するため、全商品のおよそ9%値下げに踏み切った。強いコシのさぬきうどんが味わえるはなまるうどんは、総額表示の義務化に合わせ、先週、価格を改定。値上げするものと値下げするものに分かれた。博多発祥のラーメンチェーンの一風堂。店のメニューが総額表示に変わるあさってに料金を改定する。店の原点の味である豚骨ラーメン白丸元味は、税込み825円から35円値下げされ790円に。自家製の辛みそなどを加えた赤丸新味も12円値下げされる。ラーメン類がお得になるのとは反対に、原材料の高騰などの影響でチャーハンやサイドメニューは1円から8円の値上げ。人気の替え玉も100円から150円に値上げされることになる(TBS)。 

 

JCC株式会社