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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年8月)

「4-6月GDP・2期ぶりに年率プラス1.9%」

今月の特徴は1.4-6月GDP・2期ぶりにプラス、2.景気の動向、3.コロナ倒産1900社に、4.エネルギーの動向となった。                                                      

 

1.4-6月GDP・2期ぶりにプラス

内閣府が発表したことし4月から6月までのGDP(国内総生産)の改定値は年率に換算した実質の伸び率が+1.9%となった(9/8NHK)。好調だったのは設備投資と輸出で、デジタル化に向けた企業の投資が増えた他、米国や中国向けの輸出が伸びた。個人消費は正常化には程遠い状態。半年間、東京で緊急事態宣言下でなかったのは2か月足らずで製造業などの企業でもちこたえたというのが実情。夏の初め頃にはワクチン接種が加速し秋以降には感染症に一定の収束がみられ、外食や宿泊の分野でリベンジ消費が起きてV字回復を期待する声が多かったが、従来型の2倍以上の感染力のデルタ株の出現と医療体制のひっ迫で、シナリオが崩れた形(NHK)。

 

2.景気の動向

政府が26日に発表した8月の月例経済報告では「持ち直しの動きが続いているものの一部で弱さが増している」と4カ月連続で景気の判断を据え置いた。第一生命経済研究所・藤代宏一は「内閣府が景気判断にあたって方向感を重視した。コロナで景気がどんなに落ち込んでいても数カ月前に比べ、景気が持ち直しているのであれば楽観的判断をする傾向にあるといえる。先行きの回復にある程度の自信を持っているため判断を据え置いている。問題は景気がいいから景気対策は不要というメッセージを同時に発信してしまうこと」と指摘した(テレ東)。

 

3.コロナ倒産1900社に

新型コロナウイルスの影響で倒産した企業が、去年2月からの累計で1900社となった。業種別では飲食店が314社と最も多く、今年に入って増加傾向があるという。この他、建設工事業が190社、ホテル旅館が106社、食品卸が100社などとなっている。月別ではことし3月が175社と最も多く、4月と7月が164社と春以降増加傾向になっている。信用調査会社・帝国データバンクは「緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大で、飲食店などの倒産がさらに早いペースで増えるおそれがある」と指摘している(NHK)。

 

4.エネルギーの動向

高浜原子力発電所1、2号機はテロなどに備える特定重大事故等対策施設の建設が国が定めた設置期限までに完成しなかったため関西電力が再稼働を見送っていたが、テロ対策施設を完成して運用を開始できるめどが立ったことを明らかにし、1号機を2023年の6月に、2号機を7月に順次再稼働させるとする新たな計画を発表した。一方、すでに再稼働している美浜原発3号機でもテロ対策施設が未完成のため関西電力はいったん運転を停止したうえで施設の完成を待って2022年10月に運転を再開させる計画を示した(NHK)

 

●新潮流

「日本経済がコロナ禍の前の水準に戻るのはいつになるのか」

HKが日本企業100社にアンケートを行ったところ、「前の水準に戻るのは2022年以降」と回答した企業が7割を超えた。政府は2021年中にGDPがコロナ前の水準に戻るという見通しを示しているが、変異ウイルスによる感染急拡大や、ワクチン接種の遅れを理由に企業は、経済の回復に厳しい見方を示していることがうかがえる。みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部・山本康雄は「ワクチンが普及したからといって、直ちに経済活動の制限を解除できない可能性が出てくる。回復時期というのは遅くなってくるというリスクはある」と述べた。新型コロナの影響が長期化する中、日本企業の業績が鮮明に二極化している。経済が堅調に持ち直している米国や中国では車の需要が高まっていて、感染拡大前の水準を上回っているが、トヨタ自動車の今年4月から6月までのグループ全体の決算は、最終的な利益が過去最高となった。この他、いわゆる巣ごもり需要で、ソニーグループも、音楽配信の売り上げなどが好調だったため、営業利益がこの時期としては過去最高となった。その一方で、航空や鉄道、小売りや外食などでは、業績の落ち込みが続いている。航空大手のANAホールディングスと、日本航空のグループ全体の決算は、いずれも最終的な損益が500億円を超える赤字となった。JR東日本も769億円の赤字。三越伊勢丹ホールディングスは86億円の赤字で、厳しい状況が続いている(NHK)。

 

 

●注目点

「米国・環境車新目標で日本メーカーに迫られる対応」

国・バイデン大統領は走行中に排気ガスを出さないゼロエミッション車の新車販売に占める割合を2030年に50%に引き上げる目標を定めた大統領令に署名した。目標の達成に向け、電気自動車の充電設備の拡大や、燃費規制の強化に取り組んでいくとしているが、国土の広い米国では、充電や価格に課題がある電気自動車は不向きだという指摘や、エンジンや石油などの産業の雇用減少を懸念する声もあり、目標の達成に向けては曲折も予想される。ゼロエミッション車は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車、燃料電池車(FCV)などが含まれるとみられる。GMゼネラルモーターズフォードなどは、米国政府に賛同する共同声明を発表し、2030年までに年間販売台数の40%から50%を、ゼロエミッション車に切り替える目標を示した。また、米国での販売が全体の3割を占めているホンダはバイデン政権の目標について「目標を支持し、電気自動車に対する消費者の需要を喚起していきたいと」いうコメントを出した。トヨタ自動車は今年5月に発表した2030年の新車販売計画で、北米地域の電気自動車と燃料電池車の割合を全体の15%に設定している。新たな目標を受けて各メーカーは戦略の見直しを迫られると見られる(NHK)。 

 

 

8月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・伊藤忠商事、第2位・ワークマン、第3位・オリエンタルランド」

8月度におけるテレビ報道CM価値換算ランキングでは「伊藤忠商事」が34億5000万円で第1位に輝いた。具体的には、「処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)を24時間店舗で受け取れるサービスを開始した」「ファミリーマートがJAとともに全国47都道府県の新米の宅配サービスを開始した」等、ファミリーマート関連の露出が大きく寄与した。第2位は「進化・最新防災アイテムの性能・相次ぐ災害で新商品続々」などの報道で「ワークマン」となった。第3位は「メモリアル・東京ディズニーシー・20周年・記念イベントも!」などの報道で「オリエンタルランド」、第4位は「感染防止の外出自粛に宅配持ち帰りを強化」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第5位は「大容量、低価格がスゴイ!業務スーパーの大ヒットの5つの秘密」などの報道で「神戸物産」、第6位は「寺田心・9.8メートル大魔神に興奮」などの報道で「東宝」、第7位は「無印人気商品を値下げ・値上げの秋にナゼ実現?」などの報道で「良品計画」、第8位は「ガスト&日高屋!人気番付SP」などの報道で「ハイデイ日高」となった。第9位は「1人2席!?東武の新特急券」などの報道で「東武鉄道」、第10位は「“光の演出”舞台裏…独占取材」などの報道で「パナソニック」となった。

 

8月の人物ランキング

「第1位・アキダイ・秋葉弘道社長、第2位・みずほフィナンシャルグループ・坂井辰史取締役兼執行役社長、第3位・北海道日本ハムファイターズ・川村浩二社長」

第1位・アキダイ・秋葉弘道社長25件(相次ぐ臨時休業・生活に影響もなど)、第2位・みずほフィナンシャルグループ・坂井辰史取締役兼執行役社長22件(みずほ“システム障害”で会見・機器に障害・バックアップ機能せずなど)、第3位・北海道日本ハムファイターズ・川村浩二社長20件(チームメートに暴力行為・中田翔に出場停止処分など)、第4位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長10件(ローソンから来た“外部社長”新浪流「やってみなはれ」とは?など)、第5位・トヨタ自動車・豊田章男社長10件(トヨタ・地熱発電で製造の水素・工場などで活用へなど)、第6位・テスラ・イーロンマスクCEO10件(テスラ・人型ロボット開発へ・自動運転の技術を転用など)、第7位・アフロフォトカメラマン・青木紘二社長9件(東京五輪フォトカメラマン・アフロ社長・青木紘二・“歓喜の瞬間と奇跡の構図”熱狂を切り取った一枚など)、第8位・平安伸銅工業・竹内香予子社長9件(自宅は“突っ張り実験場”利用者のアイデアを実践など)、第9位・ソフトバンクグループ・孫正義社長9件(ワクチン2回・PCR陰性で観戦可能・ソフトバンクなど)、第10位・安川電機・小笠原浩社長7件(世界経済見通しと安川電機の成長戦略など)。

 

 

●テレビの窓

「国内企業100社アンケート・半導体不足影響ある・6割」

HKが国内の主な企業100社に行ったアンケートで世界的な半導体不足が事業に影響を与えていると回答した企業が6割にのぼった。「影響がある」と答えたのが20社、「やや影響がある」と答えたのが37社で、全体の6割近い企業が事業に影響が出ていると回答した。また、この57社に具体的な影響について複数回答で尋ねたところ、「半導体を使った部品の調達困難」が45.6%、さらに「減産」と回答した企業が22.8%に上った。運輸業界からは、「自動車の生産が減ったことで輸送量が減少した」という声が寄せられたほか、情報通信、金融、メーカーなども「半導体を使った製品の調達が難しくなっている」と回答していて、幅広い業種に影響が広がっていることがうかがえる。また、いつまで続くと考えるか尋ねたところ、「わからない」が45社に上った。半導体市場の動向に詳しい英国の調査会社「オムディア」南川明シニアディレクターは今後の見通しについて、「半導体不足はこの秋から年末にかけてが、ピークではないか」と分析し、「新たな分野で需要が高まり、再び半導体不足になる可能性もある」と指摘している。また「カーボンニュートラル、風力発電、太陽光発電、車のEV化、予想以上の大きな需要が立ち上がってくる。これを国としてどうするか、税制上の優遇措置を一時的に行うなどの対策が必要となる」と指摘した(NHK)。

 

JCC株式会社