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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年10月)

「コロナからの経済急回復を物価高が直撃」

今月の特徴は1.コロナからの制限緩和、2.エネルギー価格高騰と需要の高まりで物価急上昇、3.日銀短観、4.ワクチン新薬の動向、5.地球温暖化&コロナ・G20COP26となった。    

 

1.コロナからの制限緩和

政府はイベント開催の人数制限緩和を決め、上限1万人の制限を解除した。新たな基準では定員50%以内、または5000人のどちらか多い方となる。東京ディズニーランド東京ディズニーシーは入園者数の制限を段階的に緩和する一方で、本来の収容人数の50%以下を目安に制限を継続する。ディズニーランドでは、全身仮装姿で開演前のパークに入園が可能な「ハロウィーンモーニングパスポート」が2年ぶりに始まった。一方、東京都の認証を受けている飲食店では、時短営業や酒類提供の制限が解除されたが、国内外1500店舗を展開する「サイゼリヤ」は時短営業を継続し、夜10時の閉店となる。その理由として、「深夜営業に対する客のニーズが減少している」ことと、「従業員の労働環境の改善」を行ったり、「公共交通での通勤が可能になり、駐車場代や寮費などが削減できる」ことをあげている(日テレ)。

 

2.エネルギー価格高騰と需要の高まりで物価急上昇

コロナからの回復で世界経済は急激な回復を見せている。これによって米国や中国などで需要が旺盛になり、住宅関連の原材料の価格が軒並み上昇している。鉄板の仕入れ価格がこの1年で3割も値上がりし、鉄製の外壁材で国内シェアトップのメーカーはことし8月から外壁材や屋根材の価格を17%値上げした。一方、壁紙の卸売りで国内シェアトップの商社は、壁紙や床材に加え、カーテン生地などを最大で18%値上げした(NHK)。経済の回復によって食肉の需要も増加しているが、原油高による輸送コストの上昇なども合わさって、「ミートショック」と呼ばれる食肉価格の高騰が起きていて、日本が米国から輸入する牛肉などの価格が軒並み上昇している。食肉価格の高騰は来年まで続くとされており、懸念されている(フジ)。最も懸念されるのはエネルギー価格の高騰である。LNG液化天然ガスや原油の価格が軒並み値上がりしている。火力発電の燃料や都市ガスの原料として使われるLNGは短期で取り引きするスポット価格は春以降、値上がりしているが、現在は過去最も高い水準となっている。また、国際的な原油価格も上昇し、ガソリン価格はおよそ3年ぶりの高値水準となっている。グローバルマーケットエコノミスト・鈴木敏之は「世界全体で原油価格が上がっていて、インフレの心配がある」と指摘した(テレ東)。

 

3.日銀短観

日銀短観では大企業の製造業の景気判断が5期連続の改善となったが、ここにきて先行きに不透明感が出ている。影を落としているのは、コロナ禍でも日本経済を引っ張ってきた自動車産業の急ブレーキである。自動車メーカー各社は、東南アジアの感染拡大によるロックダウンの影響で、部品の調達が滞るなどして、大規模な減産に追い込まれている。先月の国内の新車販売台数も、去年の同じ月に比べ、32%余り下回り、大幅な減少となった。日銀の短観で自動車の景気判断を示す指数は、マイナス7ポイントと大幅に悪化し、大企業の製造業全体では、5期連続で改善したものの、自動車の減産が長期化すれば、幅広い産業に影響が及びかねず、先行きには不透明感が出ている(NHK)。

 

4.ワクチン新薬の動向

熊本の製薬会社・KMバイオロジクスは開発中の新型コロナワクチンが3回目接種用に使えるかどうかを調べるため、年内にも臨床試験を始める方針を発表した。国の承認を得て2022年中の実用化を目指す。開発しているのはウイルスの感染力をなくした「不活化ワクチン」で、副反応のリスクが低いとされている。2022年春には18歳未満を対象とした臨床試験を始めることを計画している(テレ東)。国産ワクチンをめぐってはこの他、塩野義製薬が今年度中の実用化を目指していて、第一三共が来年中の実用化を見込んでいる(フジ)。

 

5.地球温暖化&コロナ・G20COP26

2年ぶりに対面形式での開催となったG20サミット。初日は世界経済について議論し、多くの首脳から、新型コロナからの経済の回復には各国の協調が必要だという認識が示された。また先進国と途上国の間でのワクチン接種の格差解消が欠かせないとの認識で一致した。オンライン形式で参加した岸田首相は、自らの経済政策について「成長と分配の好循環」を基本理念とし、国民が経済成長の恩恵を実感できる「新しい資本主義」の実現を目指すと説明した。新型コロナ対策をめぐっては、各国や地域に約6000万回分のワクチン供給などを決定した日本の取り組みを説明し、今後もG20が連携してワクチンの普及に取り組む必要があると強調した。中国・習近平国家主席もオンライン方式で参加し、途上国へのワクチン提供の強化や、購入に向けた金融支援を提案した。G20サミットの2日目の議論のテーマは気候変動対策で議長国のイタリアは、英国でのCOP26に向けて前向きなメッセージを打ち出したい考え。しかし、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする時期を巡り、米国や日本などが2050年を目標とする一方で、中国やサウジアラビアなどは2060年とするなど先進国と新興国や途上国の間でばらつきがある(NHK)

 

 

●新潮流

「TSMC・ソニー・熊本に半導体新工場」

導体の受託生産で世界最大手の台湾のTSMCが日本に新しい工場を建設する方針を明らかにした。TSMCは先端半導体に強みを持ち超微細な加工技術を誇る半導体の受託生産会社。関係者によるとTSMCはソニーグループと共同で、熊本県内に工場を建設する方向で協議しており、自動車向けなどに使われる先端半導体の生産を検討している。日本がTSMCの進出を働きかけたのはコロナ禍でIT機器のニーズが高まり、半導体不足が深刻な問題となる中、国内で安定的に半導体を調達するねらいがある。一方、TSMC側には生産拠点が台湾に集中している中で半導体関連の技術者を豊富に抱える日本への進出でリスクを分散したい思惑がある。半導体はスマホ、パソコン、自動車、人工呼吸器などの医療機器まで生活を支える多くの製品を作るのに欠かせない。さらに将来5G高速大容量の通信技術の普及で取り扱うデータの量が増えたり、高機能のセンサーが求められる車の自動運転化が進めば、高度な半導体が今まで以上に必要になると言われている。その一方で日本の半導体メーカーは研究開発に十分な投資を行ってこなかったことで先端のロジック半導体で競合メーカーに追いつけないほどの後れをとっているのが現状。こうした中で政府は日本企業同士で組んで対抗するというかつての日の丸主義から転換し、海外の企業に国内で生産拠点をつくってもらうという新たな戦略で先端半導体を安定的に確保しようと考えている(NHK)。

 

 

●注目点

「約100年ぶり新たな国際課税ルール・法人税最低税率15%で合意」

人税の最低税率を15%に定め、「GAFA」に代表される巨大グローバル企業に適切に課税できる新たな国際ルールについて、OECD(経済協力開発機構)の加盟国など136の国と地域が最終合意に達した。日本をはじめ、OECDの加盟国を中心とした国と地域で構成するグループは8日、オンライン会合を開き、2013年から本格的な交渉を続けてきた新たな国際課税ルールについて、136の国と地域で最終合意に達したと発表した。合意の柱の1つが、企業誘致を目的とした法人税の引き下げ競争に歯止めをかけ、課税逃れを防ぐために15%の最低税率を導入すること。もう1つの柱はグーグルやアップルなど「GAFA」に代表される国境を越えてサービスを展開する巨大グローバル企業のビジネスモデルに即して課税できるようにすること。具体的には、これらの企業の売り上げの10%を超える利益のうち、25%については、サービス利用者がいる国に課税の対象として配分するとしている。合意内容は、一部を除いて再来年に実施することを目標としていて、製造業中心の考え方に基づき、約100年前に整備された今の国際課税ルールが転換されることになる。最終合意には、低い税率で企業を呼び込んできたアイルランドやハンガリーが加わった一方、スリランカやケニアなど4か国は加わらなかった。日本としては、新たな国際課税ルールの実効性をより高めるため、こうした国への働きかけを続けていく方針(NHK)。 

 

 

10月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・日本マクドナルドホールディングス、第2位・安楽亭、第3位・壱番屋」

2021年10月度のテレビ報道CM価値換算ランキングでは「日本マクドナルドホールディングス」が33億2400万円で第1位に輝いた。具体的には、「ごはんバーガー」の紹介や、「世界のマクドナルド」「米国マクドナルドが代替肉を使った『マックプラント』を11月3日から、米国国内8店舗で試験販売を開始した」こと等の露出が大きく寄与した。第2位は「ワンコインでボリューム満点・お得に美味!朝食がアツい」などの報道で「安楽亭」となった。第3位は「毎週火曜日はコンビニ新作発売日!」などの報道で「壱番屋」、第4位は「鉄オタ憧れの“夢の国”・新幹線の修繕作業の秘密」などの報道で「東海旅客鉄道」、第5位は「路線図にはない!研修専用駅のお金のヒミツ」などの報道で「東京地下鉄」、第6位は「観光列車で乗客増やせ!“昭和”が誘う秋のSL旅」などの報道で「東武鉄道」、第7位は「コロナ禍で戦う企業戦士・小林純・坂本守孝」などの報道で「ニトリホールディングス」、第8位は「CAINZ・Dcm・ビバホーム・コメリの超便利アイテムが勢揃い!」などの報道で「アークランドサカモト」となった。第9位は「待望・パレード再開&新ホテル」などの報道で「オリエンタルランド」、第10位は「コストコ&業務スーパー・今売れている人気商品」などの報道で「神戸物産」となった。

 

 

10月の人物ランキング

「第1位・フェイスブック・ザッカーバーグCEO、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁、第3位・ジャパネットHD・高田旭人社長」

第1位・フェイスブック・ザッカーバーグCEO63件(フェイスブック・社名を「メタ」に変更など)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁33件(日銀・大規模な金融緩和策の維持決定など)、第3位・ジャパネットHD・高田旭人社長12件(世界基準×理想のスタジアム・ジャパネットHD社長・高田旭人など)、第4位・テスラ・イーロンマスクCEO11件(米国テスラ・本社をテキサス州に移転へなど)、第5位・塩野義製薬・手代木功社長8件(新型コロナ「飲み薬」・塩野義製薬が最終治験開始など)、第6位・ファミリーマート・細見研介社長7件(ファミマ新ブランド“ファミマル”誕生の理由は?など)、第7位・フジクラ・伊藤雅彦代表取締役社長6件(光ファイバーでトップクラスの会社など)、第8位・SBI・北尾吉孝社長6件(銀行初の敵対的TOBへ・新生銀行トップに単独取材など)、第9位・アークランドサービスホールディングス・坂本守孝代表取締役社長6件(コロナ禍で戦う企業戦士・小林純・坂本守孝など)、第10位・A.L.I.Technologies・片野大輔社長6件(SFの世界が現実に「空飛ぶバイク」とは?など)。

 

 

●テレビの窓

「アジア最大級のIT見本市・CEATEC2021ONLINE」

ジア最大級のIT見本市「CEATEC2021ONLINE」が新型コロナの影響でオンライン開催となった。京セラは「無人レジシステム」を出展。AIに商品を登録するだけでカメラに映った商品を瞬時に認識する。手に持ったままの商品や筒状の商品を縦に置いても認識する。皿の色や形も認識できるため、飲食店などの会計にも活用できる。京セラのシステムは青果店などの小さな店舗でも一般的なパソコンとカメラ1台、ディズプレイがあれば導入可能。大手電機メーカー・シャープはコロナで目にする機会が増えた「透明パーティション」と、指を浮かせた状態で操作ができる「静電ホバータッチディズプレイ」を出展した。2つの技術が組み合わされることによって、コロナ感染を防ぎつつ、受付や飲食店でパーティションに情報を表示しながら客は必要な操作を行うことができる。一方、楽器などを扱うヤマハと東京藝術大学は1本の指でメロディーを奏でるとそれに合わせて伴奏が付き、プロの気分が味わえる「だれでもピアノ」を出展した。この技術を使い実際にコンサートが行われた(TBS)。

 

JCC株式会社