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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年1月)

「日銀・大規模金融緩和を維持」「見えないピークアウト・いつまで続く?オミクロン株」

今月の特徴は1.日銀の動向、2.景気の動向、3.ステルスオミクロンの脅威、4.新薬・ワクチン接種の動向、5.春闘の動向、6.エネルギーの動向となった。                                        

 

1.日銀の動向

日銀は18日までの2日間、金融政策を決める会合を開き、短期金利についてマイナスにし長期金利を0%程度に抑えるよう国債を買い入れる「大規模な金融緩和策の維持」を賛成多数で決めた。国内の景気の現状については「引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」というこれまでの判断から「感染症の影響が徐々に和らぐもとで持ち直しが明確化している」に引き上げた。また物価について生鮮食品を除いた消費者物価指数の新年度2022年度の見通しを政策委員の中央値でプラス1.1%と、去年10月に示したプラス0.9%から引き上げた。原油をはじめとした原材料価格の上昇などを受けて企業の間で商品価格に転嫁する動きが出てきているため。一方、新年度の実質GDP(国内総生産)の伸び率については政府の経済対策の効果などを踏まえ、去年10月時点のプラス2.9%からプラス3.8%に引き上げた(NHK)。

 

2.景気の動向

世界経済の回復による需要の持ち直しやウクライナを巡る緊張を背景にWTI(ニューヨーク原油先物価格)が高水準で推移している。エコノミストはさらなる価格の上昇が続くかどうかは、ウクライナ情勢が左右するとみている。ムーディーズアナリティックス・ライアンスイート氏は「最も可能性の高いシナリオは、原油価格が1バレル100ドルを超えないこと。100ドルを超えるとすれば、主な原因は東ヨーロッパなどの地政学リスクの高まり。おそらく原油価格は3月か4月の初めにピークを迎えるだろう。2022年の後半には75ドル台に近づく。そうすればインフレも緩和する」と分析した(テレ東)。一方、政府経済対策などの効果で国内総生産(GDP)がコロナ禍前水準に戻ると期待された1~3月期、景気は(オミクロン株拡大の影響で)再び低迷を余儀なくされそうだ。打撃が大きい飲食などサービス業を中心に、失業者が4万4千人増加するとみられる(テレ朝)。こうした中、6割を超える企業で新型コロナウイルスによる経営への悪影響が続いていることが日本商工会議所の早期景気観測調査で分かった。「影響が続いている」と回答した企業は61.1%で、去年12月の調査から0.3ポイント増加した。また「現時点で影響はないが、今後マイナスの影響が出る懸念がある」と回答した企業が27.9%で、「影響が続いている」と合わせると89%が新型コロナによる経営への悪影響に不安を抱いている(TBS)。

 

3.ステルスオミクロンの脅威

すでにピークアウトした国では、その多くが1か月余でピークに達し、その後緩やかに減少している。まだまだ先の見えない状況ではある。世界では少し希望が見える情報も出てきており、WHOの幹部が欧州では各国が集団免疫を獲得し、パンデミックが収束の方向に向かっているとの見解を示した。英国・ジョンソン首相は、マスク着用の義務など大半の規制を撤廃する方針を打ち出し、新型コロナとの共生を目指すと表明した。感染後の隔離措置を定めた法律も延長しない(TBS)。そんな英国でいま、新たな脅威として注視されているのがオミクロン株の亜種。英国の保健当局はこの亜種を従来型のオミクロン株「BA.1」が変異した「BA.2」とし、これまでに426件確認されている。英国と同じくオミクロン株のピークアウトが見られる米国でも「BA.2」が、25日までに22の州で計92件確認されている。「BA.2」は増殖率がオミクロン株より高い可能性がある上、感染力もオミクロン株の2倍との分析結果もある。検査での判別が難しいことから「ステルスオミクロン」とも呼ばれ、これまでに日本を含む48か国で確認されている(NHK)。

 

4.新薬・ワクチン接種の動向

ワクチンの3回目接種について、政府は31日までに1470万人への接種を目標に掲げているが、実際は408万人と3割にも達していない(TBS)。こうした中、自衛隊が運営する東京・大手町の大規模接種会場では3回目接種を希望する人を対象とするワクチン接種が31日から開始された。対象となるのは18歳以上で2回目接種から6カ月以上経過している人。午後6時から東京の会場での来週分の予約が専用サイトで開始されたが、1万2960人分の予約枠が15分で埋まった(フジ)。新型コロナの治療薬の1つとして期待される国産の飲み薬について塩野義製薬は最終段階の治験中である飲み薬の有効性を示すデータを初めて明らかにした。この薬を服用したグループは偽薬のグループと比べてウイルスを持つ患者の割合が服用開始から3日後に6~8割減少した。既に国内での生産に着手していて、厚生労働省の承認が得られれば3月までに100万人分の供給を目指すという(テレ朝)。

 

5.春闘の動向

経団連と労働組合の重要組織である連合のトップが会談し、春闘が本格的にスタートした。岸田総理大臣が「好業績の企業に3%超の賃上げを求めていることを受け、経団連は「業績のよい企業は積極的な賃上げを進めるように」と呼びかけたが、数値目標は掲げなかった。連合は基本給を定期昇給合わせて4%程度の賃上げを求めた。取引価格の適正化や男女格差の是正なども交渉の焦点となっている。経団連・十倉雅和会長は「企業の責務として、賃金引き上げと総合的な処遇改善に取り組んでいくことが極めて重要」、連合・芳野友子会長は「月例賃金にこだわり、底上げ、底支え、格差是正を図る必要がある」と述べた(テレ朝)。

 

6.エネルギーの動向

政府はインドネシアの脱炭素化を進めるため、アンモニアを石炭に混ぜて燃やす火力発電技術の導入支援を決めた。インドネシアを訪問中の萩生田経産相は10日、二酸化炭素を排出しないアンモニアを石炭に混ぜて燃やす技術について協力する覚書を取り交わした。アンモニアの混焼は既存の火力発電所を活用し、アンモニアを燃料にする脱炭素技術。二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電は国際的に批判されているが、インドネシアでは石炭火力が発電量の6割を占めている。日本は石炭火力が当面必要で早期の再生可能エネルギーへの切り替えは困難との立場で、アンモニアとの「混焼」を支援することで石炭火力への国際社会への理解を深める狙いも見える(フジ)。

 

 

●新潮流

「2022年・東証市場再編・企業の改革につなげるには」

の4月に東京証券取引所が新たな3市場へ再編される。1月12日、東証が各企業の移行先を発表した。市場の魅了を高め投資資金を呼び込むことが再編の狙い。新市場はプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つ。プライム市場はグローバル企業を想定し、上場基準も厳しく設定された。コーポレートガバナンスの面でも独立社外取締役が全体の3分の1以上必要など、高い水準が求められている。スタンダード市場は、一般投資家が円滑に売買できる中堅、安定企業を想定。グロース市場は、高い成長性を有する新興企業向け。企業の移行先の選択からは、それぞれの戦略や将来像が伺える。エバラ食品工業井筒屋は、スタンダード市場への移行を決めた。どちらも自らの身の丈に合わせて最適な市場を選んだという点で、筋の通った戦略的判断といえる。マザーズからプライム市場を目指すと宣言したのが、フリマアプリ「メルカリ」とオンライン診療システムなどを手掛ける「メドレー」。まずはグロース市場に移った上で、申請を準備するとしている。今回の移行では経過措置も設けられた。多くの企業が計画書で業績改善、企業価値向上、株主還元策などを掲げている。しかし経過措置には期限がなく、中には実現可能性に疑問符がつくものもある。みずほ信託銀行企業戦略開発部は「東証の新市場は再編後のこれからが大事」とアドバイス。経過措置の計画書を出した企業は、この先毎年度進捗状況を報告しなければならない。その後に脱落する企業もあるかもしれない。基準自体が引き上げられる可能性もある。グローバル企業のためのプライム市場では、企業に株主、投資家との建設的な対話が求められる。成長戦略の練り直し、脱炭素化やその情報開示も必要となる。従業員や取引先、地域社会を大切にする姿勢も不可欠で、高い次元での経営改革を行っていくべき。岸田内閣が掲げる成長と分配の好循環や、新しい資本主義実現への一歩になる(NHK)。 

 

 

●注目点

「米国FRB“3月に利上げ決める”」

国・FRB(連邦準備制度理事会)は定例の会合で新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2年近くにわたってゼロから0.25%の幅の極めて低い水準に抑えてきた政策金利について、「まもなく引き上げることが適切だ」として、近くゼロ金利政策を解除する方針を示した。パウエル議長はそのペースについて「労働市場を脅かすことなく、利上げをする余地は十分ある」と述べた。FRBは量的緩和策を3月上旬に終了させた上で、この政策のもとで市場から買い入れてきた国債などの資産を圧縮する量的引き締めを進めていく方針も示した。米国では景気の回復に伴って記録的なインフレが続いていて、この抑制を優先して金融引き締めを急ぐ姿勢を明確にした。ただ急激な引き締めは景気を冷やすという警戒感も根強く、混乱を招かない形での政策運営が問われることになる。みずほ証券・上野泰也チーフマーケットエコノミストは「FRBが金融引き締め、利上げ、量的な縮小を諦めるとは思えない。プラスアルファでウクライナ問題、米中対立、原油価格をめぐる駆け引きも。下落リスクが大きい不安定なもみ合いが続くぐらいの振れが激しい動きがこの先、数か月は続くだろう」と分析した(NHK)。

 

 

1月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ローソン、第2位・FOOD & LIFE COMPANIES、第3位・セブン&アイ・ホールディングス」

2022年1月のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、「ローソン」が31億3200万円で第1位に輝いた。具体的には、「ゴーストレストラン始動・注文受け調理・ローソンの宅配」「ローソンが実証実験を開始・NYで人気の屋台メシ」「ローソン・14種類のいちごスイーツ登場」等によるものであった。第2位は「日本初公開!寿司ネタ工場」などの報道で「FOOD & LIFE COMPANIES」となった。第3位は「ノータッチ無人レジで感染予防・セブンイレブン・空中ディスプレー実験開始」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」、第4位は「デニーズ・ロイヤルホスト売上番付SP」などの報道で「ロイヤルホールディングス」、第5位は「太陽光・商社の参入進む」などの報道で「伊藤忠商事」となった。第6位は「パナソニック空調売上高・1兆円目標」などの報道で「パナソニック」、第7位は「挑戦・電気自動車本格参入・ソニー“2つの強み”」などの報道で「ソニーグループ」、第8位は「2万点以上から厳選!ドンキホーテの神アイテム」などの報道で「パンパシフィックインターナショナルホールディングス」となった。第9位は「外食産業直撃“ポテトショック”マックM・Lポテト販売再開は?」などの報道で「日本マクドナルドホールディングス」、第10位は「100均インスタグラマーおすすめ・今買うべき・3COINSの大ヒットアイテム」などの報道で「パルグループホールディングス」となった。

 

 

 

 

1月の人物ランキング

「第1位・日本経団連・十倉雅和会長、第2位・日本銀行・

黒田東彦総裁、第3位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長」

第1位・日本経団連・十倉雅和会長54件(“春闘”始まる・賃上げは?など)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁33件(黒田総裁“物価の上昇率徐々に高まっていく”など)、第3位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長31件(ウィズコロナの新仕事術など)、第4位・ANAホールディングス・片野坂真哉社長22件(“賃上げ”“脱炭素”トップに聞くなど)、第5位・大和証券グループ本社・中田誠司社長20件(証券大手3社のトップ・“業績改善伴う株価上昇に期待”など)、第6位・みずほフィナンシャルグループ・坂井辰史社長18件(みずほFG社長の後任・みずほ銀行・木原正裕常務を起用へ調整など)、第7位・ローソン・竹増貞信社長15件(ウィズコロナの新仕事術など)、第8位・東京証券取引所・山道裕己社長11件(東証再編で日本経済は?新市場・何が変わる?など)、第9位・伊藤忠商事・岡藤正広会長9件(企業トップを直撃!今年の景気はどうなる?など)、第10位・テスラ・イーロンマスクCEO8件(世界の富豪10人・資産倍増など)。

 

 

●テレビの窓

「経済3団体新年祝賀会・企業トップ今年の景気展望は?」

済界のトップや総理大臣も出席して行われる恒例の経済3団体新年祝賀会(日本商工会議所経団連経済同友会/東京都千代田区)が開催された。岸田文雄総理大臣は「コロナ克服のめどをつけた上で経済のV字回復を為し遂げたい」と述べた。オミクロン株の拡大や悪化する米中関係など大きな不安要素もある中、日本の大企業のトップは景気の動向をどう見ているのか。ローソン・竹増貞信社長は「曇り時々晴れ。ここから快晴に向かっていきたい」とコメントした。コロナ禍でも熊本や北海道の災害現場を回った竹増社長は、「平時はより効率的に、有事は災害に強いデジタルで解決していく」と話した。去年「45歳定年制にして会社に頼らない姿勢が必要」と発言し、物議を醸したサントリーホールディングス・新浪剛史社長は「あまりにも円安過ぎる。サプライチェーンも東南アジア、中国が厳しい。原料も高い。業界発展のためには革新的商品、それを届ける仕組みをやっていきたい」とコメントした。ANAホールディングス・片野坂真哉社長は「航空一本足打法ではパンデミックに弱いので、ことしは春におもしろいアプリなどを含めたプラットホーム事業に力を入れる。第2の柱を作っていきたい」とコメントした。去年は緊急事態宣言による入場制限や時短営業、値上げラッシュなどもあり、取り巻く環境が厳しかったデパート業界だが、松屋・秋田正紀社長は「年末年始の商戦は非常に好調なので、晴れ間が見えてほしい」、大和証券グループ本社・中田誠司社長が「基本的に晴れでたまに土砂降り。米国大統領の中間選挙、日本も参議院選挙がある。地政学的なリスクが顕在化した時には瞬間土砂降りになる可能性もある」とコメントした(テレ朝)。

 

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