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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年3月)

「6年7か月ぶり・一時1ドル125円台の円安ドル高に・止まらない物価高騰」

今月の特徴は1.過去最大107兆円新年度予算成立、2.物価高騰の影響、3.日銀・大規模金融緩和策を維持、4.春闘の動向、5.まん延防止全面解除、6.エネルギーの動向となった。   

 

1.過去最大107兆円新年度予算成立

一般会計の総額が過去最大の107兆5964億円となる、新年度令和4年度予算の採決が参議院本会議で行われ、自民党、公明党両党などの賛成多数で可決成立した。戦後では4番目に早い時期の成立となった。脱炭素では電気自動車購入の補助金最大80万円に増加するなど155億円。省エネ性能の高い住宅の新築、リフォーム費用の補助に1113億円などが計上された(NHK)。

 

2.物価高騰の影響

去年後半から新型コロナ後を見据えて世界で原油と原材料が値上がりし、さらにウクライナ情勢の影響で原油や原材料、穀物価格がさらに高騰した。急激な円安も物価の高騰に拍車をかけている。円安が輸入コストの増加を招いている。世界中の投資家は資産を利回りのいい米国に向け、円を手放している。円の価値は急激に下がり、輸入品の高騰につながっている。欧米が金利を引き上げた一方、日本は金利引き上げに慎重だったため金利差が大きくなり、円売りドル買いが加速した。日本の借金は約1000兆円あり、金利を2%上げると年間の利払いが将来的に20兆円増えるため、金利を上げられない状態となっている(テレ朝)。

 

3.日銀・大規模金融緩和策を維持

日銀は18日まで開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた。また国内の景気の現状について「一部に弱めの動きも見られるが、基調としては持ち直している」として判断を引き下げた。29日に日銀が公表した会合の主な意見によると、「物価を巡って原油など、エネルギー価格の上昇を背景に4月以降、目標とする2%程度の伸びが続く可能性がある」という指摘が相次いだ。一方で物価上昇の持続性については「小売価格への転嫁は限定的で、内需の回復が十分でない」とか、「家計の購買力が高まらないもとでは一時的なものにとどまる」といった指摘も出された。その上で「日本は米国や英国とは異なり、賃金の上昇などを伴って物価上昇率が目標の2%を継続的に上回っていくような状況にはない」という指摘が出されたほか、「ウクライナ侵攻による先行き不透明感が高まっている」という意見が出され、大規模な金融緩和を継続することを確認したとしている(NHK)。

 

4.春闘の動向

春闘の回答集中日を迎えた16日、コロナ禍で落ち込んだ業績が回復したことなどから自動車メーカー各社(トヨタ自動車日産自動車ホンダ)はそろって賃上げを実施する満額回答となった。大手電機メーカー3社(日立東芝NEC)でも月額3000円のベースアップとなり異例の満額回答となった。鉄鋼大手の日本製鉄神戸製鋼所では定期昇給と合わせて、賃上げ率は3%以上になった。金属労協によると賃上げを要求した53の組合のうち、40社が賃上げの実施を決めたという。ただ、中小企業へこの流れがどこまで波及するかは未知数で、業界によっては厳しい企業も有り得る。コロナによる打撃が続く外食産業の賃上げ交渉は今年も難航し、結論は日付をまたぐ企業も多くある。自動車総連・金子晃浩会長、経団連・十倉雅和会長は「政府は成長の分配の好循環をうたった。その期待を受け止めての結果だと思う」と述べた。UAゼンセン総合サービス部門・原田光康事務局長は「客が戻ってきていない状況がある」とコメントした(テレ東)。

 

5.まん延防止全面解除

新型コロナ新規感染者の下げ止まりが指摘される中、東京など18都道府県に出されていたまん延防止等重点措置が解除された。一方、ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパの複数の国で新規感染者が急速に増加している。感染拡大の理由としてオミクロン株の亜種で感染力が高いとしているBA.2が広がっており、「規制緩和が早すぎた」と言われている(TBS)。こうした中、政府はワクチンの4回目接種について、早ければ5月にも始める方向で検討していることが分かった。4回目もファイザーモデルナを使用する方針で今後、接種間隔や対象者の優先順位などを議論するとしている(テレ朝)

 

6.エネルギーの動向

日本政府は、再生可能エネルギーを増やし原子力発電所の再稼働を促進していく計画である。再エネのうち、風力は5%を目指す。日本では、洋上風力発電が向いていると言われている。洋上風力発電には、着床式・浮体式の2種類があり、日本では着床式を増やすことは難しいと言われている。秋田県、千葉県では、3つの海域を請け負う企業連合が発足し、欧州で洋上風力の経験がある三菱商事・電力ソリューショングループ・エネルギーサービス本部長・岡藤裕治氏がプロジェクトを束ねている(テレ東)。11年前の福島第一原発の事故後に“縮原発”を掲げていたフランスだが、マクロン大統領は2月に「原発回帰」ともいうべき大きな決断を下した。脱炭素とエネルギーの自立を掲げ、約20年ぶりに原発建設に舵を切る形である。今回、ヨーロッパはロシアのウクライナ侵攻で深刻なエネルギー不足に直面し、それをしのぐため原発を利用すべきとの声が出てきた(NHK)

 

 

●新潮流

「“日の丸連合”で開発加速・ソニー・ホンダ・EV新会社設立へ」

ニーグループホンダがEV(電気自動車)の領域で提携することを発表した。ことし共同出資会社を設立し2025年の販売開始を目指す。2年前に試作車を公開し、公道での走行試験を実施してきたソニーはこれまでEVの事業化のタイミングを探ってきた。ことし1月に公開した最新車両にはソニーの強みである画像処理半導体を含むセンサーを40個搭載し、安全運転実現に向けたソニーの強みをアピールした。センサー以外にも映画や音楽ゲーム事業などを展開するソニーグループは、移動する車内をエンターテインメント空間と捉え、音楽やゲームなどを楽しみながら移動できる車を目指している。EVの分野には、世界で異業種からの参入が相次いでいる(テレ東)。ソニー・吉田憲一郎社長は「他の企業を排除せず、ぜひ広げていきたい。ソニーはネットワークサービスのプラットフォームを目指したい」と述べ、ホンダ以外のパートナー企業との協業にも意欲を示した。EVを巡っては、中国のネット検索大手・バイドゥや台湾のホンハイ精密工業が開発に乗り出している他、米国のアップルの動向も関心を集めている。ソニーとホンダは独創性のある開発で業界をけん引してきたが、その両者がそれぞれの強みを結集した新ブランドのEVが市場で存在感を高められるかが焦点となる(NHK)。

 

 

●注目点

「電力ひっ迫警報・停電の危機・今後も続くのか?」

月22日、東京都心では、午後2時台、電力供給力に対する需要の割合を示す「使用率」が107%だった。政府は、東京電力管内に初めて「電力需給ひっ迫警報」を発令した。理由の一つは、3月16日に起きた最大震度6強の地震で、一部の火力発電所が停止し、電力供給量が低下したことが大きな要因となった。さらに、真冬並みの冷え込みとなり、暖房の使用などによる電力不足によって最大300万軒規模の停電が発生する恐れがあったことが大きかった。22日、港区・東京タワーは上半分を消灯し、墨田区・東京スカイツリーは、2012年の開業以来、初めて夜間のライトアップを中止した。さらに営業中のコンビニエンスストアやファミリーレストランが看板などを消灯するなどした。オリエンタルランドは、東京ディズニーランドとシーで、自家発電設備を稼働した。ベルク足立新田店では、飲み物を常温で販売、冷蔵が必要な商品は、商品棚の照明を暗くするなどして対応した。節電対策をした千葉県旭市の松山鋼材・向後賢司社長は「停電になっちゃうと機械も止まって仕事もできません」とぼやいた。売り場で節電対策を行った新宿区・ビックロ・ビックカメラ新宿東口店・冨高優副店長は停電を心配した客から、ポータブル電源の問い合わせが増えていると話した(フジ)。「電力ひっ迫警報」は東日本大震災の計画停電をきっかけに作られたルールだが、警報が出されるのは今回が初めて。無理のない範囲で節電のお願いをし、状況が変わらなければ次の段階の「緊急速報メール」が発出され、電気の利用を極力控えることを要請することになる。それでも変わらなければ計画停電となるという(TBS)。

 

 

3月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ニトリホールディングス、第2位・パンパシフィック・インターナショナルホールディングス、第3位・ローソン」

022年3月のCM価値換算ランキングでは、「ニトリホールディングス」が、22億7201万円で第1位に輝いた。具体的には、「カチタスとの資本業務提携」や「ニトリHOME’S」の紹介、「ニトリの家電紹介」などでの露出が寄与した。第2位は「ドンキホーテ・避難民受け入れへ」などの報道で、「パンパシフィック・インターナショナルホールディングス」となった。第3位は「美味しくて安い!進化を続けるコンビニ弁当」などの報道で「ローソン」、第4位は「人気チェーン新作持ち帰り・丸亀製麺・カレーうどん弁当」などの報道で「トリドールホールディングス」、第5位は「ミシュランガイド掲載の一流シェフ採点によるかつやのメニューランキング」などの報道で「アークランドサービスホールディングス」となった。第6位は「東京五輪5000時間の記録」などの報道で、「東宝」、第7位は「吉野家・ミシュランシェフが選ぶ一番美味しいメニューは?」などの報道で「吉野家ホールディングス」、第8位は「鳥貴族を人気芸人が熱烈リポート」などの報道で、「鳥貴族ホールディングス」となった。第9位は「激安&大容量の業務スーパー・家庭用か業務用か?どっち」などの報道で「神戸物産」、第10位は「日本航空・“新たな収益源に”パイロットが講師」などの報道で「日本航空」となった。

 

 

3月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・SMBC日興証券・近藤雄一郎社長、第3位・スペースX・イーロンマスクCEO」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁37件(日銀・大規模金融緩和策を維持など)、第2位・SMBC日興証券・近藤雄一郎社長30件(SMBC日興証券・近藤社長が陳謝など)、第3位・スペースX・イーロンマスクCEO28件(イーロンマスク・情報戦に“参戦”世界一の大富豪が何故など)、第4位・花畑牧場・田中義剛社長27件(ベトナム人従業員と対立・ストライキめぐり両者に“溝”など)、第5位・東芝・綱川智社長15件(会社分割案めぐる混乱で・東芝・綱川智社長が退任へなど)、第6位・アース製薬・川端克宜社長8件(芳香剤&入浴剤に口腔ケア・日用品メーカーに大変貌など)、第7位・テクニカン・山田義夫社長7件(美味しいまま保存出来る!知られざる冷凍革命の全貌など)、第8位・日本経団連・十倉雅和会長7件(経団連・エンデミック宣言をなど)、第9位・ファーストリテイリング・柳井会長兼社長7件(継続から一転・ユニクロ・ロシア事業を一時停止へなど)、第10位・日野自動車・小木曽聡社長7件(日野自動車・エンジン性能の試験で不正確認など)。

 

 

●テレビの窓

「企業向けのサイバー攻撃対応訓練」

シアによるウクライナ侵攻を受けて、世界中でサイバー攻撃の脅威が高まっている。日本企業が深刻な被害を受けるケースも相次いでいて、企業は対応を迫られている。2月、企業を対象にサイバー攻撃への対応訓練が行われた。攻撃役は、イスラエル国防軍のサイバー部隊出身のハッカー。参加した企業のセキュリティー担当者たちは、システムの防衛を試みる。訓練開始からおよそ1時間半後、すべてのパソコンが乗っ取られてしまった。今、世界では、ウクライナへの侵攻を巡り、双方を支持するハッカー集団の活動が活発化している。その混乱に乗じて、犯罪組織も暗躍する事態になっている。国内で記憶に新しいのが、トヨタ自動車と、取引のある部品メーカーへのサイバー攻撃。この影響で、トヨタは国内のすべての工場の稼働を停止する事態に陥った。さらにこの1か月だけを見ても、大手企業などへの不正アクセスや、情報流出の疑いが次々と明らかになっている。国内1500社余りを対象に行われた調査では、1か月以内にサイバー攻撃を受けたと回答した企業が、28.4%にも及んだ(帝国データバンク調査)。中でも脅威が高まっているのが、「エモテット」というコンピューターウイルス。感染すると、過去のやり取りを基にした、本物そっくりのメールを勝手に送信し、感染を広げ、さらに悪質な身代金要求型のコンピューターウイルスなどを送り込むという(NHK)。

 

JCC株式会社