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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年5月)

「GDP1月~3月年率-0.5%・消費者物価指数2%上昇」

今月の特徴は、1.GDP2期ぶりマイナス、2.消費者物価指数2%上昇、3.決算の動向、4.エネルギーの動向となった。                                                                                                

 

1.GDP2期ぶりマイナス

内閣府は、今年1月から3月までのGDPの改定値を発表し、物価の変動を除いた実質の伸び率は前の3か月と比べてマイナス0.1%と2期ぶりのマイナスとなった。これを年率に換算するとマイナス0.5%となった。あわせて昨年度1年間のGDPの改定値も上方修正され、実質の伸び率が前の年と比べてプラス2.2%となった(6/8NHK)。要因は個人消費。この期間は、まん延防止等重点措置が各地に適用され、外食や旅行などサービスの需要が低迷したことが大きい。個人消費の回復の動きは、経済活動が正常化しつつある現在も鈍い状態が続いている。さらに景気の先行きに影を落としているのが、急速な円安である。大和総研・神田慶司シニアエコノミストは「4-6月期のGDPの水準は(コロナ前)の2019年10-12月期を超えると思うが、個人消費の中でも特にサービス消費はまだ超えない。日本は資源に頼っている為、あらゆる原材料が上がりやすくなる。中長期的には資源高が長く続くかもしれない。成長戦略をもう一度練り直して、名目賃金、給料が上がるような構造をより早く実現していく必要がある」と分析した(NHK)。

 

2.消費者物価指数2%上昇

総務省が発表した全国の4月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が101.4となり、昨年4月より2.1%上昇した。上昇は8か月連続となり、2%を超えるのは、消費増税の影響を除くと、約13年7か月ぶりとなる。原油価格の高騰を背景に、電気代が21%、ガソリン代が15.7%上昇するなど、エネルギー価格の上昇が目立った。また原材料価格の高騰や円安による影響で、食用油やパンなど、輸入に頼る食料品価格が上昇した。松野博一官房長官は、「日銀には、引き続き政府との連携のもと、必要とされる措置を適切に講じていくことを期待している」と述べた(TBS)

 

3.決算の動向

5月13日は3月期決算発表の集中日となった。日経新聞などによると資源高や円安を追い風に3割の企業が最高益となった。コロナ前とは程遠い状況にある中国が各社の懸念材料となっている。上海に続き、北京でも13日から3日間、事実上の都市封鎖(ロックダウン)となり、市民らに自宅待機を要請したという。13日、決算を発表した日本企業の経営にも影響が出ている。三越伊勢丹ホールディングスは中国で6店舗を運営しているが、外出規制がさらに広がれば利益の押し下げにつながりかねないという。また、上海のロックダウンの影響で部品の供給が滞り、国内工場が停止した。マツダは今期すでに(国内工場を)11日間休業しているという。ドラッグストア大手のマツキヨココカラ&カンパニーは日本から中国の顧客向けにeコマースを展開しているが、最近は注文件数が増えているという。さらに、牛丼のすき家などを展開する外食大手のゼンショーホルディングスは中国で営業できない店舗が出ている一方で、牛丼に欠かせない、牛肉の仕入れには明るい兆しも出ており、中国の仕入れが減り牛肉価格が少し下がってきているという(テレ東)。

 

4.エネルギーの動向

火力発電所の休廃止などで今年の夏と冬は東京電力の管内などで電力の需給が非常に厳しくなる見通しである。こうした中、経済産業省が専門家会議を開き、対応策をまとめた。休止している火力発電所を稼働させるほか、地元の理解を前提に原子力を最大限活用することなどを盛り込んでいる。さらに、ひっ迫の可能性がある場合には「警報」に先んじて、新たに「注意報」を出し、広く節電を呼びかける方針である。政府は6月上旬に関係閣僚会議を開き、対策を決定する見通し(日テレ)。一方、三菱商事などで作る事業体が千葉県銚子市沖で6年後に洋上風力発電の開始を目指して総出力39万キロワット余りの風車31基を建設する計画を進めている。富士山を眺めることができる国の名勝・屏風ヶ浦の景観を妨げないよう風車をおよそ2キロの沖合に設置する予定。千葉県は事業体のもとで施設の建設工事や部品の製造、維持管理などの事業に地元企業の参入を促すため5月18日、オンラインで説明会を開くことになった。千葉県は「地元の金融機関による融資や従業員の宿泊なども含めて幅広い分野で大きな経済効果が生まれるので、多くの企業に参入してもらい地域経済の活性化につなげたい」としている(NHK)

 

 

●新潮流

「外国人観光客の入国・6月10日再開」

田首相が6月10日から外国人観光客の受け入れを再開すると表明した。6月1日から変わるのは、1日あたりの入国者数の上限を2万人にし、感染リスクの低い米国、英国、中国など98の国と地域から、ワクチン接種の有無に関わらず入国時の検査・待機を免除する。それに合わせて羽田、成田、関西、中部、福岡の5つの空港に加え、新千歳、那覇の空港も国際線の受け入れが再開されることになった。日本の観光客受け入れにニューヨーク在住の米国人女性は「日本のカワイイものを円安の今なら安く買える。感染者数が少ないから安全。この時期に行きたい!」と話した。一方、今月、世界経済フォーラムで旅行観光開発ランキングが発表され、日本が初の首位となった。2位は米国、3位はスペイン、4位はフランス、5位はドイツとなった。日本の評価が高かった理由は航空インフラや文化資源、地上港湾インフラが評価された為である。このランキングや円安が日本の観光にとって追い風になるかもしれない。10年前の日本は1年間で835万人だったが、政府が観光立国を掲げ、右肩上がりに外国人観光客が急増し、コロナ前の2019年には3188万人まで増えた。それがコロナで100分の1に下がり2020年には411万人、そして2年連続で24万人という数字になった。これを少し700万くらいに戻そうという思惑である(TBS)。

 

 

●注目点

「上海ロックダウン解除へ・消えない経済への影響」

か月以上ロックダウンが続いてきた中国・上海市は感染者が最近確認された一部地域を除きロックダウンを解除すると発表した。市民の外出制限を原則撤廃し、市内の地下鉄や路線バスを全面的に再開し、すべての車の走行を認めるとしている(日テレ)。上海ロックダウンは日本経済にも大きな打撃を与えており、日系企業の工場稼働状況は未稼働と3割以下を合わせると91%で、工場はほとんど稼働できていない。さらに日本国内の工場でも部品調達が出来ず、トヨタ自動車では6月6~10日は国内10工場の一部稼働を停止する。この状況下、コロナ禍で世界的に半導体が不足している。日本でも車やスマートフォンが品薄になっているが、世界の半導体生産能力は中国が世界3位。中国国内の半導体生産能力は上海が約40%を占めているため、世界的な半導体不足となっている。日本では夏に需要が高まるエアコンが買えないおそれもある。半導体を使う家電で、部品を作る工場も稼働していないというのがその理由。光明電機・高野亨社長は「今の時期、メーカーには100台くらい在庫がある。在庫をためる時期にこんな状況になるのは見たことがない」と話した。メーカーの受注・発注サイトにエアコンを登録しようとしても、メーカー自体に在庫が全くない状態だという。エアコン不足に備え、シャープもツイッターで注意喚起している。経済産業省も、本格的な夏を迎える前に試運転を行って、エアコンの設置、修理を早めに行うことで、熱中症対策を進めることが重要としている。第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミストは「家電や自動車など工場で複数の過程があるものは、生産途中でまたロックダウンになるとロスにつながる。本格的な復調までは3か月くらいかかるのではないか」と指摘する(TBS)。

 

 

5月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ローソン、第2位・東武鉄道、第3位・オリエンタルランド」

2022年5月期のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、「ローソン」が52億2200万円で第1位に輝いた。具体的には、「ローソン全国店舗で無印良品の商品を販売する」や「累計4億4000万個以上を販売したプレミアムロールケーキが4倍のサイズになって登場」、「東京等で調剤薬局を併設した店舗」等の紹介が大きく寄与した。第2位は「東京スカイツリーで社会科見学」等の報道で「東武鉄道」となった。第3位は「東京ディズニーランド・スペースマウンテンがリニューアルへ」などの報道で「オリエンタルランド」、第4位は「ローソンで無印良品、全国展開へ」などの報道で「良品計画」、第5位は「100年に一度の大開発の現場へ・渋谷編」などの報道で「.フロント リテイリング」となった。第6位は「伊勢丹&大丸2大デパ地下SP!一番、売れている和菓子は?」などの報道で、「三越伊勢丹ホールディングス」、第7位は「JALフライトシミュレーター・初の一般向け有料体験」などの報道で「日本航空」、第8位は「お菓子だけ集めたドンキ・ドンドン尖った店を作れ!」などの報道で、「パンパシフィック・インターナショナルホールディングス」となった。第9位は「老朽化した建物を劇的再生・骨組み再利用コストも削減」などの報道で「三井不動産」、第10位は「銀座中継・ワークマン女子が“初出店”」などの報道で「ワークマン」となった。

 

 

5月の人物ランキング

「第1位・テスラ・イーロンマスクCEO、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長」

第1位・テスラ・イーロンマスクCEO55件(イーロンマスク・ツイッター買収など)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁32件(日銀総裁・消費者物価指数2.1%上昇になど)、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長18件(ソフトバンクG・赤字最大など)、第4位・楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長15件(楽天モバイル“月額0円”を廃止など)、第5位・吉野家ホールディングス・河村泰貴社長15件(吉野家社長・相次ぐ不祥事を謝罪など)、第6位・日産自動車・内田誠社長13件(日産が巻き返しへ・新型EV投入で勝負など)、第7位・カンデオホスピタリティマネジメント・穂積輝明社長11件(顧客満足度ナンバーワン・1泊5000円以下の宿など)、第8位・三菱自動車・加藤隆雄社長8件(日産自動車・三菱自動車工業“軽EV”200万円以下で夏に販売へなど)、第9位・リビングハウス・北村甲介社長7件(お値打ち&高品質で大人気・急拡大!家具店の新勢力など)、第10位・ダイドーグループHD・高松富也社長6件(コンビニに頼らない!ダイドーの自販機特化戦略など)。

 

 

●テレビの窓

「EV・電気自動車など世界販売2.2倍に拡大」

年、世界で販売されたEV(電気自動車)とプラグインハイブリッド車は、前の年の2倍余りになったという調査結果をIEA国際エネルギー機関がまとめた。ほとんどを中国と欧米が占め、日本と比べて普及が大きく先行している。IEAによると去年のEV、プラグインハイブリッド車の販売台数は世界では約660万台で前年の2.2倍、新車販売台数全体の9%を占めた。国別では中国が333万台で前の年のおよそ2.9倍、米国が63万台でおよそ2.1倍、ドイツが68万台でおよそ1.7倍、英国が31万台でおよそ1.8倍、フランスが30万台でおよそ1.7倍。日本は1.5倍に増えたものの4万4000台にとどまった。要因についてIEAは、各国でガソリン車の新車販売を段階的に減らしたり将来的に禁止したりする方針が打ち出されたことに加え、補助金制度が大幅に拡充されたことを挙げている。伊藤忠総研深尾三四郎上席主任研究員は「EVは中古車として下取りに出しても価格が比較的高いため新車で購入する人が増えている」と分析した(NHK)。一方、SUBARUが日本国内では初めてとなるEV(電気自動車)の専用工場を新設すると発表した。SUBARUは12日の決算会見で、国内でEV(電気自動車)の工場を新設し、2027年以降の稼働を目指すと明らかにした。国内でEV専用工場の新設計画が発表されるのは初めてとなる。SUBARUはトヨタ自動車と共同開発したEV「ソルテラ」の受注を始めているが生産は委託であり、自社では生産していない。ガソリン車の比率が高いSUBARUだが、新工場新設でEVの生産能力を引き上げたい考えで、総投資額は2500億円の予定(TBS)。

 

JCC株式会社