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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年9月)

「政府・日銀24年ぶり円買い市場介入」

今月の特徴は、1.政府・日銀24年ぶり円買い市場介入、2.日銀短観の民間予測・大企業製造業の景気判断“3期ぶり改善”、3.日本貿易会会長・貿易赤字拡大に懸念、4.新型コロナ第7波の動向、5.エネルギーの動向となった。  

 

1.政府・日銀24年ぶり円買い市場介入

22日、政府が24年ぶりの為替介入を実施した。政府は持っているドルのうち約2兆円で円を買い、円安に歯止めをかけたところ、5円近く円高に振れ、一時140円台に戻った。鈴木財務大臣は為替介入について「一定の効果」があったと強調し、さらなる為替介入の可能性について「為替相場の投機的な動きを強く憂慮している。必要に応じて対応を取る」と述べた。野村総合研究所・木内登英氏は「あまり効果は大きくないのではないか。もう一度145円に戻っていく動きだろうと思う。(円安は)最終的には150円くらいまで行く可能性があるのではないか」と話した(TBS)。

 

2.日銀短観の民間予測・大企業製造業の景気判断“3期ぶり改善”

民間のシンクタンクなど13社が日銀短観予測を発表した。景気を見る上で特に注目される大企業製造業の景気判断を示す指数については13社のうち11社が改善すると予測した。各社の予測の中央値はプラス11ポイントで前回6月の調査結果のプラス9ポイントを上回っている。実際に大企業製造業の景気判断が改善すれば3期ぶりとなる。半導体など、部品の供給不足が徐々に解消していることや、中国の上海で実施された外出制限などが解除されて経済活動が再開し、生産や輸出が増えていることを理由として挙げている。一方で大企業の非製造業の景気判断は第7波の感染拡大や、物価上昇の影響などもあって前回より悪化するという見方が多くなっていて、予測の中央値はプラス12ポイントと前回を1ポイント下回っている(NHK)。(※10/3に発表された日銀短観では大企業製造業の景気判断を示す指数は3期連続で悪化、一方で大企業の非製造業の景気判断は2期連続で改善した

 

3.日本貿易会会長・貿易赤字拡大に懸念

日本貿易会の國分文也会長は、エネルギー価格の上昇や円安の加速で貿易赤字が膨らんでいる現状について「円安によって輸出が増えるという、これまでの貿易の構図が崩れ始めている」と懸念を示した。日本の貿易収支はウクライナ情勢を背景に原油など、エネルギー価格の上昇や、円安の加速によって赤字が膨らんでいて、8月は1か月として過去最大の貿易赤字となった。円安が貿易赤字の拡大につながっている現状について國分会長は「企業が生産拠点を海外に移してきたことによってこれまでのように円安によって輸出が増え、貿易収支が改善していくという構図が崩れ始めている」として懸念を示した上で、「商社業界でも会社ごとに対応するのは難しい状況だ」と述べ、政府の支援策なども必要になるとの認識を示した(NHK)。

 

4.新型コロナ第7波の動向

厚生労働省は12日、米国のファイザー社とモデルナ社が、それぞれ開発した新型コロナのオミクロン株に対応したワクチンを薬事承認した。今回承認されたモデルナワクチンはオミクロン株の中で、年明けから始まった第6波で感染が拡大したウイルス「BA.1」に対応している。現在の第7波で感染が拡大したのは、そこから派生した「BA.5」。ファイザー社は13日、「BA.5」と「BA.4」に対応した新しいワクチンを厚労省に承認申請したと発表した。モデルナ・バンセルCEOは、「現在主流のオミクロン株、BA.5に対応したワクチンについても数週間以内に必要なデータが揃うだろう」との考えを示した。モデルナは、新型コロナだけではなくインフルエンザなど、様々なウイルスに対応するワクチンを1回でまとめて接種できるように計画を進めているという。将来、日本に製造拠点を建設し新たなパンデミックが起きた際にも、迅速に対応できるような供給体制を整えたいとしている(テレ東)

 

5エネルギーの動向

西村経済産業大臣は原子力発電新設について「今後検討する」としている。公明党・山口代表も「新設について地域の理解を得ることは簡単ではない」と話していたが、今後の重要な課題は国民の理解である。ピクテジャパン・市川眞一シニアフェローは「原子力規制委員会が規制基準に適応していると判断した原子力発電所についてはまず順次再稼働していく。建て替えや新設を国の方針としても考えていく必要がある」と指摘した(テレ東)。一方、長崎・五島市では、日本初の浮体式の洋上風力発電が行われている。浮体式洋上風力発電は水深が深くても可能で、台風でも倒れないという日本の海に適した技術である。約2000世帯分の電気を島に送り続けている。作った電気は市民生活、特産品の製造などにも使用されており、五島市はこれらのブランド化に成功している(NHK)。

 

 

●新潮流

「脱ロシア化進める日本の自動車メーカー」

ヨタ自動車は、ロシア・サンクトペテルブルクの工場を閉鎖すると発表。トヨタによると現地の従業員約2400人に対し、退職金の積み増しや再就職など、最大限の支援をするとしている。メンテナンスサービスや販売ネットワークなどは維持し、モスクワの拠点は規模を縮小しつつ再編成する。トヨタはロシアのウクライナ侵攻後の3月、部品の調達が難しいとしてサンクトペテルブルクの工場での生産を停止していた。工場は2007年に生産を開始し、去年は約8万台を生産した。トヨタはロシアの従業員に対して十分な支援ができなくなることから「このタイミングしかなかった。苦渋の決断だった」としている(テレ朝)。一方、マツダもウラジオストクにある現地企業との合弁工場で生産していたロシア向けのSUV車を、ウクライナ侵攻の長期化で再開のめどが立たないと判断し、生産終了の協議に入ったとしている。マツダは今年3月からロシア工場への自動車部品輸出を停止し、4月から現地工場での生産を休止していた(TBS)。

 

 

●注目点

「入国緩和で期待ふくらませる観光業界」

府は10月11日から現在5万人の入国者数の上限の撤廃や、外国人観光客の個人旅行の解禁、ビザ免除の再開などを行うことを発表した。さらに現在は一部の空港に限っている国際線の受け入れについて、松野長官は「今後の就航予定に応じ、準備が整い次第、再開する」ことを明らかにした(フジ)。これを受けて外国人観光客の回復を期待する航空業界や観光地からは歓迎の声が上がっている。全日本空輸・井上慎一社長は「待ちに待った規制緩和だ」と語った。10月11日からの水際対策の緩和では外国人観光客のビザなし渡航や個人旅行が再開される。全日空ではこの1週間で日本への便の予約が倍増するなど、すでに緩和への期待が表れていたが、更に予約が増えるとみている。観光地でも喜びの声が聞かれた。東京・浅草・甘味処「梅園」・羽山健雄営業部長は「本当に期待している」、浅草東武ホテル宿泊部・村上見和支配人は「コロナ禍(2020年)のオープンだったので、海外のお客様はほとんどお見受けできなかった。ようやくという感じだ」と語った。政府は10月11日から全国を対象とした旅行支援策も始める。水際対策の緩和や、旅行支援策の実施が発表されるなか、国内外の旅行会社などが一堂に集まる旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン2022」が4年ぶりに東京の会場で始まった。会場には、国内外からおよそ1000の旅行会社や観光局などが出展している。バーチャルリアリティー・仮想現実の技術を使って星空を見られるほか、足湯を体験できるなど、各地の魅力をアピールしている。水際対策の緩和で、新たなビジネスチャンスを期待する事業者にとっては外国人観光客をどう増やしていくかということや、日本人に海外旅行をどう売り込むかなどが課題になっている(テレ朝)。

 

 

9月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・神戸物産、第2位・オリエンタルランド、第3位・大戸屋ホールディングス」

2022年9月度のテレビCM価値換算ランキングは、「神戸物産」が、29億6041万円で第1位となった。具体的には、「業務スーパー総力祭・安さの秘密はひよこから育てる」「独占!業務スーパーの舞台裏・買収“極秘チーム”に初潜入!」などの露出が大きく貢献した。第2位は「3年ぶり仮装全面再開・TDLでハロウィーンイベント」等の報道で「オリエンタルランド」となった。第3位は「大戸屋の従業員が選んだメニューを、超一流料理人が値段に見合った味かどうかをジャッジする」などの報道で「大戸屋ホールディングス」、第4位は「出前ロボットにジムまで・最新オフィスビル公開」などの報道で、「三井不動産」となった。第5位は「長崎と佐賀を結ぶ西九州新幹線開業」などの報道で「九州旅客鉄道」となった。第6位は「規格外野菜を活用・くら寿司がビームスとコラボしSDGsメニュー」などの報道で「くら寿司」、第7位は「ガリレオ最新作公開・福山雅治もだまされた?」などの報道で「東宝」、第8位は「少量にして価格抑制など・食品メーカー・家計の節約ニーズに対応」などの報道で「日清製粉グループ本社」となった。第9位は「アップルiPhone14をインドで生産へ」などの報道で「アップルジャパン」、第10位は「東京ゲームショウ・3年ぶりリアル開催・ソニーグループのVR向けゴーグルが展示」などの報道で「ソニーグループ」となった。

 

9月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・辻豊・辻賀光社長、第3位・くら寿司・田中邦彦社長」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁131件(円買いドル売りとしての為替介入は過去最大の3兆円規模など)、第2位・辻豊・辻賀光社長36件(下関・倉庫が倒壊など)、第3位・くら寿司・田中邦彦社長26件(「創業以来の大改革」・くら寿司・看板「100円ずし」終了へなど)、第4位・カッパクリエイト・田辺公己社長23件(かっぱ寿司社長ら逮捕へ・営業機密・なぜ入手?など)、第5位・日本経団連・十倉雅和会長16件(日中国交正常化50年・経済界が記念式典など)、第6位・KADOKAWA・夏野剛社長16件(元理事KADOKAWAも仲介かなど)、第7位・リクルートホールディングス・出木場久征社長11件(年商2兆8000億円!トップを独占直撃など)、第8位・ジーユー・柚木治社長11件(原材料高騰で値上げラッシュ・GUは低価格を維持など)、第9位・スノーピーク・山井梨沙社長10件(スノーピーク社長突然の辞任など)、第10位・アップル・ティムクックCEO9件(米国アップル・iPhone14シリーズを発表など)。

 

 

●テレビの窓

「ハッカー集団・キルネットが日本に宣戦布告」

政機関などの複数のホームページがサイバー攻撃を受け、接続できなくなった。犯行声明を出したグループは親ロシアのハッカー集団「キルネット」を名乗り、SNS・テレグラム上でロシア語でメッセージを出し続け、ロシアのウクライナ侵攻に反対の立場を取っている国に対しサイバー攻撃を仕掛けたと表明している。サイバー攻撃で閲覧できなくなったサイトは、デジタル庁が所管する行政情報のポータルサイト・イーガブ、地方税のポータルシステム・エルタックスなど4省庁管理の23サイト。また東京メトロ大阪メトロMIXIなども閲覧できなくなった。アカマイテクノロジーズ・中西一博プロダクトマーケティングマネージャーは「彼らは従来の手口で効果がないとわかると、手口を変更し攻撃を続ける」と分析。多少のコストをかけても実行していることから、支援者が存在している可能性がある。複数の専門家は、東京五輪に備えたサイバー攻撃対策で(日本は)被害を抑えることができたとみている。国や企業などサイトを運営する側には、攻撃手法の変化に合わせた対策が今後、求められる。例えば情報セキュリティーの専門家を育成するなどして、情報共有を進める必要があり、被害を想定した対策シナリオを作り訓練することも必要になる。インターネット以外の方法も含めた事業継続計画を作り上げることが求められている(NHK)。(※共同通信9/30によるとキルネットはその後、資金難により、攻撃活動を停止しており、同団体広報担当者は「新たなスポンサーが見つからない限り攻撃できない。日本人はもう心配しなくてもいい」と話している)

 

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