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テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成31年4月)

「日銀短観・大企業製造業2四半期ぶり悪化」

 

今月の特徴は1.日銀短観・大企業製造業2四半期ぶり悪化・金融緩和を維持、2.米中貿易摩擦の影響、3.大手企業決算の動き、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.日銀短観・大企業製造業半年ぶりに悪化・金融緩和を維持

日銀が4月1日に発表した企業短期経済観測調査で、代表的な指標とされる大企業の製造業の景気判断は、プラス12ポイントと、前回の調査を7ポイント下回り、2四半期ぶりに悪化した。中国経済の減速などが背景で、悪化の幅は6年3か月ぶりの大きさになった。先行きについては、大企業の製造業がプラス8ポイント、非製造業がプラス20ポイントと、いずれも今よりも悪化すると見込んでいる(NHK)。一方、4月25日に開かれた日銀金融政策決定会合で、日銀は現在の超低金利政策を「少なくとも来年春ごろまで維持する」ことを決定した。黒田総裁は会見で「2020年春ごろまで金利を引き上げる検討は全くない。2020年春に何が何でも金利を見直すとは全く考えていない」として、不透明感を増す海外経済の動向や、10月の消費税増税の影響を見極めるまでは、金融緩和で景気の下支えを続ける姿勢を強調した。発表した物価見通しでは、2020年度は1.4%と前回1月の発表から0.1ポイント引き下げた。2021年度の見通しも1.6%にとどまっていて、日銀が目標に掲げる2%の物価上昇には届かないと見込んでいる(テレ東)。

 

2.米中貿易摩擦の影響

2018年度貿易統計によると貿易収支は1兆5854億円の赤字だった。年度ベースの赤字は3年ぶりで、この要因としては原油高による輸入額増加、米中貿易摩擦の悪化による中国経済の減速で中国向け輸出の伸びが鈍化したことなどが挙げられる(テレ東)。米中貿易摩擦による中国経済の低迷は、日本企業にも影響を及ぼしている。中国から米国への輸出が減少し、日本企業の部品販売が減少、中国市場における販売も減少している。このため日本国内で、中国向けの輸出を行う製造業などで設備投資にブレーキがかかっている。米国との交渉が決裂すれば、トランプ政権は中国製品に対する関税をさらに引き上げ、中国経済が大きな打撃を受けることになる。米中交渉の行方は依然予断を許さない情勢にある(NHK)。

 

3.大手企業決算の動き

オリエンタルランドの2019年3月期の決算は純利益が902億8600万円(↑11.2%)となり2年ぶりに最高益を更新した。東京ディズニーランドの開業35周年関連のイベント人気が追い風となった。野村ホールディングスの2019年3月期の決算は最終損益が1004億円の赤字となった。赤字はリーマンショックがあった2009年3月期以来、10年ぶりとなる。ニトリホールディングスが発表した2019年2月期の純利益は、1年前に比べて6%プラスの681億円となった。20年連続で最高益の更新となる(テレ東)。日産自動車は主力の米国市場などで販売が落ち込んでいるため、今年3月期の決算の見通しを下方修正した。本業の儲けを示す営業利益はことし2月時点の見通しと比べて29%少ない3180億円になるとしている。キヤノンが発表した先月までの3か月間の決算は中国でのデジタルカメラの販売が落ち込んだことなどから営業利益が前の年よりも40%以上の大幅な減益となった。デジタルカメラの高級モデルの販売が落ち込んだことやスマートフォン向けのディスプレーの製造装置の受注が減ったことが主な理由となっている(NHK)。

 

4.エネルギーの動向

米国がイラン産原油の輸入禁止の制限をこれまで除外してきた日本などにも適用すると発表した。国内の石油元売り各社はすでにイランからの輸入を停止している他、輸入元を他国に置き換えるなど対応を進めていて、国内の供給への影響は限定的とみられる。世耕弘成経済産業大臣は「国内での量的な供給への影響は限定的」とコメントした。一方で原油取引の国際的な指標となっているWTI先物価格が半年ぶりの高値水準となっていて、今後、世界的な供給不安の広がりから原油価格がさらに上昇する可能性もある(TBS)。一方、今月は原発に関しても動きがあった。4月24日、原子力規制委員会は原発に義務付けたテロ対策施設の設置について、期限の延長を認めず間に合わない原発は稼働中でも停止を求めることを決めた。鹿児島県の川内原発1号機は来年3月に、2号機は来年5月に設置期限を迎えるが、九州電力はテロ対策施設の設置が約1年遅れるとしていて、完成が間に合わず対応が取られなければ原発は運転を停止することになる(フジ)。

 

 

●注目点

「有明アリーナ・最先端のIT技術活用した施設」

京都が約370億円をかけて江東区に整備している有明アリーナ。この施設では東京五輪、パラリンピックでバレーボールと車いすバスケットボールが行われ、閉幕後は大規模なスポーツやコンサートなどのイベント会場として活用される予定である。都は運営する企業に電通NTTドコモなど7社を選定し、企業グループは大会後、この施設に高速の無線通信技術や大型スクリーンなどを導入し、観客が最先端のIT技術を活用してスポーツやイベントを楽しめる施設として運営していく方針。障害者スポーツ団体がサブアリーナを利用する際、優先的に予約を受け付けたり、料金を安くしたりするなどアマチュアスポーツが利用しやすい施設を目指す。都は都議会の議決を得た上で、ことし7月に正式に契約する予定(NHK)。

 

 

●新潮流

「アップルとクアルコム・特許紛争で“全面和解”」

ップルクアルコムが突然和解した。両社は過去2年間にわたって特許訴訟で争っていたが、訴訟をすべて取り下げ、数年に渡る半導体供給のライセンス契約を結んだ。泥沼化する可能性も指摘されていただけに和解のニュースは市場関係者にとって大きなサプライズとなった。アップルはこれまで5Gの分野でライバルのサムスンなどに遅れを取っていたが、背景の一つがこの訴訟問題だったといえる。5G関連の半導体に強みを持つクアルコムとの関係悪化を背景にインテルサムスンファーウェイの5GのチップがiPhoneに搭載されるのではないかと指摘されていたが今回の和解によってiPhoneの5G対応が早まる可能性も出てきた。5Gについては米国・トランプ政権も力を入れており、トランプ大統領は5G普及のための補助金や規制緩和の計画を発表した(テレ東)。

 

 

4月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・宇宙航空研究開発機構(JAXA)、第2位・三井不動産、第3位・オリエンタルランド」

019年4月度のテレビ報道月間CM価値換算ランキングでは「宇宙航空研究開発機構JAXA)」が101億800万円で第1位に輝いた。具体的には「はやぶさ2」がリュウグウの表面にクレーターを作るという世界初のミッションに挑戦し、成功したことが一部始終報道されたことが中心となり、「NASAのプロジェクトチームがJAXAを訪問」したことなども合わせて報道され、大きな露出効果となった。第2位は「新たな“街”が晴海に・選手村マンションは5000万円台から」などの報道で三井不動産となった。第3位は「ディズニーリゾート・入園者が過去最多!!」などの報道でオリエンタルランド、第4位は「銀座に無印良品の超大型店舗」などの報道で良品計画、第5位は「渋谷再開発の目的・原点回帰??」などの報道で東急不動産ホールディングス、第6位は「つぶれないお店のスゴイ社長」などの報道でオイシックス、第7位は「日本人の夢をつくった男・小林一三の逆転人生」などの報道で阪急阪神ホールディングス、第8位は「ドコモ“新料金プラン”発表・端末代と通信料金を“分離”」などの報道でNTTドコモとなった。第9位は「豪華列車・四季島ツアーを初取材」などの報道で東日本旅客鉄道、第10位は「平成最後の晩餐~日本人と“食”の30年~」などの報道でくら寿司となった。

 

4月の人物ランキング

「第1位・ルノー・ジャンドミニクスナール会長、第2位・セブンイレブンジャパン・永松文彦社長、第3位・日産自動車・西川廣人社長」

第1位・ルノー・ジャンドミニクスナール会長65件(1対1で対等を強調・日産統合・ルノー案判明など)、第2位・セブンイレブンジャパン・永松文彦社長64件(大手コンビニ・行動計画を発表など)、第3位・日産自動車・西川廣人社長61件(日産・新たな役員人事決定・統合問題は「議題ではない」など)、第4位・大塚家具・大塚久美子社長48件(大塚家具“お家騒動”和解へ・親子が4年ぶり再会なぜ?など)、第5位・NTTドコモ・吉澤和弘社長26件(ドコモ通信料最大4割値下げなど)、第6位・ソフトバンク・孫正義会長兼社長25件(情報革命ふたりの軌跡~インターネットは何を変えたか~など)、第7位・ローソン・竹増貞信社長17件(密着!コンビニ24時・便利さの裏で何がなど)、第8位・楽天・三木谷浩史会長兼社長14件(楽天が参入で携帯料金どうなる?など)、第9位・ファミリーマート・澤田貴司社長14件(24時間営業でコンビニ行動計画など)、第10位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長12件(「長者番付」1位はユニクロ柳井氏など)。

 

 

●テレビの窓

「ジャパンディスプレイ・台湾・中国の企業連合が800億円支援」

ソニー日立製作所が手を組んだ“日の丸連合”ジャパンディスプレイが台湾・中国の企業連合から800億円の金融支援を受け、傘下に入ることが決まった。ジャパンディスプレイは経産省が所管する当時の産業革新機構が2000億円出資し誕生した会社で、統合後、スマホ液晶に注力し3カ月で黒字となった。わずか2年で東証1部に上場したが、過剰な投資などがあだとなり5期連続最終赤字となる見通し。これによって政府主導の日の丸液晶が頓挫したことになる。ジャパンディスプレイの上場時の公開価格は900円だったが、中国・台湾連合での新株発行価格はわずか50円だった。早稲田大学大学院・長内厚教授は「技術がすぐれていれば商売でも勝てるという読みの甘さがあった」と指摘している。日の丸液晶が外国の傘下に入るのはこれが初めてではない。ジャパンディスプレイには加わらなかったシャープも海外勢との価格競争に敗れ、台湾・鴻海精密工業の傘下に入った(TBS)。

JCC株式会社