テレビ情報のデータベース化、知識化、ネット情報の収集、多角的分析が現実世界を浮き彫りにします

テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和元年9月)

 

「日米貿易協定・スピード決着」「米中貿易摩擦の影響・金融緩和に舵を切る欧米」

今月の特徴は1.消費増税の動き、2.日米貿易協定・スピード決着、3.米中貿易摩擦の影響、4.エネルギーの動きとなった。

                                                                                                

1.消費増税の動き

10月1日の消費税引き上げに合わせて始まるポイント還元制度を周知しようと、経済産業省がキックオフイベントを行った。日本のキャッシュレス決済比率は海外と比べ大きく遅れており、政府はキャッシュレス決済の普及を促進したい考え(TBS)。駆け込み購入の動きも見られていて、大手家電量販店「ビックカメラ」では、洗濯機など高額な商品が、去年の9月と比べて約2倍売れているという。一方、東京・中央区・松屋銀座では、高級ブランドの定番商品や時計など、高額品の伸びが大きく、9月の売り上げは去年の約2割増しとなっている(テレビ朝日)。今回、消費税が2%引き上げられることで見込まれる税収は、軽減税率分を除くとおよそ4兆6000億円となる(フジ)。

 

2.日米貿易協定・スピード決着

日米貿易交渉がようやく合意に至った。TPP並みの実現が危ぶまれていたが、最終的に牛肉・豚肉などの農産物に関しては、TPPと同様の関税引き下げで合意した。日本にとってはTPPよりも有利な内容となった(NHK)。一方、日本が求めてきた自動車や自動車部品の関税は、事実上の先送りとなった。さらに、米中貿易摩擦の影響で売れ残った米国産のトウモロコシを日本は購入することになった。こうした日本側の譲歩によって、トランプ大統領がちらつかせる自動車の制裁関税などは回避できる見通しになったものの、ニッセイ基礎研究所・矢嶋康次チーフエコノミストは「日本は米国にかなり押し切られたという印象は免れない」と分析した。協定は国内手続きを経て、早ければ年内にも発効する見込み(TBS)。

 

3.米中貿易摩擦の影響

10月10日から再開予定の米中閣僚級協議、互いに関税を掛け合う応酬はすでに1年以上に及び、泥沼化の様相を呈しているが、一方では中国が追加関税の標的としてきた米国産大豆を大量に購入したと発表するなど歩み寄りもみられている(テレ東)。米中貿易摩擦の影響で世界経済は減速し、頼みの綱としてきた米国経済にも変調の兆しがみられる。欧米はともに景気を支えるために金融緩和に舵を切った。FRB・米国連邦準備制度理事会は19日、追加の利下げを決め、ヨーロッパ中央銀行も米中貿易摩擦の影響でドイツがマイナス成長に陥り、景気後退が避けられそうにもないことや、英国がEUから離脱するブレグジットへの懸念が高まっていることなどを背景に3年半ぶりの利下げを決定した。その一方で景気後退や世界同時不況といった事態は避けられるのではという楽観論も強まっている(NHK)。

 

4.エネルギーの動き

サウジアラビアの石油施設2か所が、ドローンによる攻撃を受けて炎上した。世界の原油供給量の5%を占めるこの石油施設の生産が止まったため、ニューヨークの原油先物相場は、一時、約15%も価格が高騰するなど石油関連で大きな動きがあった(フジ)。再生エネルギー関連の動きでは、神奈川県のセブンイレブン10店舗が店舗運営の電力を100%再生可能エネルギーでまかなう実証実験を始めたことが注目を集めた。日中は太陽光パネルで発電、夜間は電気自動車で使われていた中古のバッテリーを再利用した蓄電池を利用する仕組みで、足りない電力は一般家庭などでつくった太陽光発電の電力を調達し、停電が起きても3時間は通常営業が可能だという。約4200台のスマートフォンを30分間充電することも可能である。セブン&アイホールディングス・井阪隆一社長は「災害が起きた時に地域の非常用電源の供給拠点としてお使いいただくことも可能になる」と話した(TBS)。

 

 

●注目点

「中国ファンドの支援見送りで苦境・日の丸液晶JDI」

営再建を進めるべく、中国と香港のファンドから最大800億円の金融支援を受けるとしていたジャパンディスプレイだったが突如、中国のファンド・ハーベストグループが支援を見送ると伝えてきた。金融支援をめぐっては、今年6月に台湾企業2社が金融支援の枠組みから離脱し、8月になってやっと、ハーベストと香港のファンドによる金融支援にこぎつけたばかりだった。二転三転するジャパンディスプレイの再建策だが、なぜ、ここまで追い込まれたのか。2012年、ジャパンディスプレイは、ソニー東芝日立のディスプレー部門が統合して誕生。スマホ向けの需要を見込み、中小型液晶パネル事業に力を注いできた。しかし、アップルのiPhoneなどに採用されている有機ELディスプレーの量産化に出遅れたことなどで、経営が悪化した。さらに追い打ちをかけたのが、iPhoneの販売台数の落ち込みだった。製造拠点である石川県の白山工場の稼働も落ち込み、無期限の操業停止に追い込まれた。菊岡稔次期社長は会見で、今後の経営再建について繰り返し、「問題はない」と強調しているものの、調達総額が800億円まで到達しない場合、事業継続が困難となる可能性がある。ジャパンディスプレイは設立以来、官民ファンドINCJから4620億円の金融支援を受けている。この資金は国民の税金である(テレ東)。

 

 

●新潮流

「ヤフーがZOZOを子会社化」

フトバンク傘下のIT大手ヤフーは、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOを買収すると発表した。ZOZOの創業者・前澤友作前社長は「私の意向をもとにヤフー社ならびにZOZO社の承諾を得て、本日をもって辞任させていただく運びになりました」と頭を下げた。ヤフーは10月上旬にもTOB・株式公開買い付けを行い、ZOZOの株式の過半数を取得し子会社化する。前澤友作はおよそ36%の株式を保有しているが、その大半を売却し買収金額は4000億円規模に上る。ZOZOの社長を退任する理由について「宇宙に行きたい。その準備やトレーニングに時間を割きたい」などと述べた。ヤフーは今回の買収によってお互いのサービスの顧客を増やしたい考えで、「ソフトバンクグループの総力をもって、ZOZOの購入者数を爆発的に増加させたい」としている(TBS)。

 

 

9月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・Zホールディングス、第2位・東京ドーム、第3位・ローソン」

019年9月度のテレビ報道月間CM価値換算値ランキングでは「Zホールディングス」(旧ヤフー)」が42億9500万円で第1位に輝いた。具体的には「ZOZO」の株式公開買い付けを行い傘下に収める動きにより大きく扱われた結果であった。第2位は「多くの著名人も訪れる・ジャニー喜多川お別れ会映像を公開」などの報道で「東京ドーム」となった。第3位は「からあげくんなど客が取り出し」などの報道で「ローソン」、第4位は「明日から“知ってる感”が出せる雑学SP・第2弾」などの報道で「パイロットコーポレーション」、第5位は「増税・終夜営業のファミレスは?」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第6位は「パナソニック・最も売れてるヘアドライヤー」などの報道で「パナソニック」、第7位は「新海誠監督・インドで熱い歓迎」などの報道で「東宝」、第8位は「エコでセクシー?なコンビニ」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」となった。第9位は「ヤフーがZOZOを買収へ」などの報道で「ZOZO」、第10位は「こうのとり・ISSに到着」などの報道で「宇宙航空研究開発機構JAXA)」となった。

 

 

9月の人物ランキング

「第1位・関西電力・岩根茂樹社長、第2位・関西電力・八木誠会長、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義社長」

第1位・関西電力・岩根茂樹社長72件(関西電力・3.2億円金品受領・役員の名前と金額を公表へなど)、第2位・関西電力・八木誠会長69件(関西電力が再び会見へ…受領の役員・金額等公表など)、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義社長49件(前澤社長退任会見・孫社長も登場など)、第4位・日産自動車・西川広人社長44件(日産自動車・西川広人社長・辞任を発表など)、第5位・日本銀行・黒田東彦総裁40件(日本の超長期国債・金利急上昇は続くかなど)、第6位・東京電力パワーグリッド・金子禎則社長38件(限界・東電・行政・ボランティア混乱の復旧作業など)、第7位・トヨタ自動車・豊田章男社長12件(レクサス初のヨット・日本は4.5億円など)、第8位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長12件(9月に続いた台風被害・食卓にも・トマト・ナス…野菜価格に影響など)、第9位・Yahoo!川邊健太郎社長12件(ヤフー・ZOZO買収で何が?など)、第10位・アップル・ティムクックCEO10件(アップルiPhone11発売へ・シェア奪還の鍵は価格?など)。

 

 

●テレビの窓

「アリババ・ジャックマー会長退任・正式表明」

ロから立ち上げたIT企業・アリババをわずか20年で時価総額約50兆円に成長させた創業者・ジャックマーが、10日、経営トップから退いた。去年4月に東京・新宿区・早稲田大学で講演したマーは「起業に挑戦することを勧めている。起業したら簡単にあきらめずやり続けてほしい」と述べていた。マーは、中国の貧しい家庭に生まれ、大学受験に何度も失敗し、自身も「落ちこぼれだった」と評する。進学した大学を卒業後5年間、英語教師をしていた。1995年に米国を訪れインターネットを知り、1999年にIT企業「アリババ」を創業し、中国のインターネット通販や電子決済サービスを普及させた。個人資産は約4兆5000億円。中国のカリスマ経営者として誰もが認める存在。10日に55歳の誕生日をもってアリババの会長を退任。AFP通信によるとマーは関係者に「教師時代の日々が懐かしい。経営よりも教師のほうがうまくやれる。最後は教師に戻りたい」と語っていたという。教師に復帰し、自身の経験を伝えていきたいという。会長の後任は、11月11日の「独身の日」巨大セールを仕掛けたことでしられるアリババ・ダニエルチャンCEOが務める(テレ朝)。

 

JCC株式会社