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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和元年11月)

「7~9月期GDP・年率プラス1.8%に・4期連続のプラス成長」

今月の特徴は1.7~9月期GDP・年率プラス1.8%に、2.決算の動向、3.景気の動向、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.7~9月期GDP・年率プラス1.8%に

内閣府が発表した今年7月から9月までのGDPの改定値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてプラス0.4%となった。年率換算するとプラス1.8%となり11月の速報段階の年率プラス0.2%から大きく上方修正された。これは最新の統計を反映した結果、企業の設備投資がプラス1.8%に大きく伸びたため。GDPの半分以上を占める個人消費も、プラス0.5%に上方修正された。全体としてGDPは4期連続のプラス成長となったが、10月に消費税率が10%に引き上げられた後の個人消費や、企業の生産活動を示す経済指標はいずれも大きく落ち込んでいる。このため10月から12月までのGDPはマイナスに転落するという見方が出ていて、国内の景気の先行きが懸念されている(12/9NHK)。

 

2.決算の動向

企業の4-9月期決算は厳しい内容となった。米中貿易摩擦の長期化などによる世界的な景気減速が製造業などを中心に影を落としている。「電気機器」関連139社の合計は前年の半分以下の1兆5000億円弱となり、「自動車・部品」関連55社の合計は前年比2割の減益となった。上場企業全体の純利益は14%減で、特に製造業は前年同期比で31%減となった。JXTGホールディングスは2020年3月期通期純利益予想を3200億円から1550億円に1650億円引き下げた。下方修正額の合計は7年ぶりに2兆円を超え、2020年3月期は金融危機後2年連続で最終減益になる見通し(テレ東)。

 

3.景気の動向

街の人に景気の実感を聞く先月の景気ウォッチャー調査は、消費増税と台風の影響で大幅に悪化し、8年5か月ぶりの低い水準となった。内閣府によると、2000人あまりに景気の実感を聞いた調査で、先月の景気の現状をあらわす指数は36.7で前の月に比べて10ポイント下がり、8年5か月ぶりの低い水準となった。主な原因は、消費増税にともなう駆け込み需要の反動と台風19号などの災害だった(日テレ)。一方、財務省が発表した10月の貿易収支は173億円の黒字だった。黒字は4カ月ぶりとなる。輸出額は6兆5774億円で、11カ月連続で前年水準を下回ったものの、輸入額がそれ以上に減少したことや原油価格が下がったことなどが影響した(テレ東)。他方で財務省が発表した9月の経常収支は1兆6129億円の黒字だったが、前の年の同じ月と比べると黒字額は2308億円減少している(NHK)。

 

4.エネルギーの動向

東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた、宮城県女川町の女川原発2号機が、再稼働の前提となる審査に事実上合格した。東北電力が再稼働に向け審査を申請したのは、震災発生2年後だった。東北電力は「資源の乏しい日本で、燃料が安定して調達でき、発電にあたって二酸化炭素が排出されないなどのメリットがある」としている。想定される地震の揺れを厳しく見直し対策工事の費用はおよそ3400億円で来年度中に終わる計画。30キロ圏内の自治体の中には、再稼働に厳しい見解を示すところもある。原発近くの半島部は重大な事故が起きた場合、速やかに避難ができるのか不安の声も上がっている。女川原発2号機が正式に合格すると、震災で被害を受けた原発では2基目となる。宮城県・村井知事は「非常に厳しい審査がなされたものと思う。賛成とも反対とも申し上げることはできない」とコメントした(NHK)。一方、中東の産油国・サウジアラビアが今、国を大きく変える改革に動き出している。国営石油会社・サウジアラムコが12月に株式上場し、最大2兆8000億円もの資金を調達するという。調達した資金は石油への依存から脱却する為の投資に使うとしている(テレ東)。

 

 

●新潮流

「国内に帰還し始める日本企業」

国内での生産を強化するために日本国内に工場を新たに作る企業が相次いでいる。日清食品は去年22年ぶりに滋賀に工場を新設させ、ダイキン工業は25年ぶりに大阪・堺市に工場を稼働させた。ユニチャームは福岡・苅田町に今春26年ぶりに工場を稼働した。ツインズはこれまで中国の工場に靴紐の製造を委託していたが3年前に新潟・加茂市にある国内工場に生産を切り替えた。山崎製パンは26年ぶりに神戸市内に工場を建てた。コーセーは42年ぶりに山梨・南アルプス市に、エステーは27年ぶりに栃木に工場を建設することになっている。36年ぶりに日本国内に新しい工場を操業する資生堂は、2020年下期から2022年上期にかけて大阪や福岡にも新たな工場を稼働させる予定である。資生堂・魚谷雅彦社長は「高い品質のものが作れる日本での供給体制を強化する。日本国内のみならず海外にもメイドインジャパンの価値を提供するのが重要な経営戦略」と語る。なぜ今、こうした国内回帰の動きが加速しているのか。大きな背景としてメイドインジャパンに高い信頼を置き「日本製品にこだわる」中国人観光客などからのインバウンド需要がある。さらに海外での工場における人件費高騰の問題もある。平成の時代、円高に直面した日本企業は苦境を逃れるために相次いで海外に進出したが、この時期は厳しい国際競争を勝ち抜くため生産コストの低いアジアなどに生産拠点を置くことが欠かせなかった。今、アジアのこうした国々の人件費は日本の半分ほどまで高騰しているために、これまでとは状況が変わってきた。さらに国内生産への切り替えによって、中国の工場で作っていた時は納品まで数か月かかっていたものが、日本で作れば2、3週間で納品することができるというスピード面でも日本で作った方がメリットがあるし、効率化が進んだ日本で作れば小ロットでの生産にもきめ細かく対応できる。平成の時代、日本の製造業は円高、高い法人税率、経済連携協定の遅れ、労働規制、厳しい環境基準、電力コストなどの6重苦に苦しめられてきたが、これら6重苦から解放されたことが何よりも大きいといえる(テレ朝)。

 

 

●注目点

「相次ぐ連携・ヤフー&LINE、ドコモ&アマゾン、KDDI&フェイスブック」

億人規模のユーザーを持つ検索サービス・ヤフーが無料通信アプリ・LINEとの経営統合を発表した。今後SNSやネット通販スマホ決済など幅広い分野で連携することになる。ヤフーとLINEの統合によってLINEのサービスを使って買い物をするとソフトバンクなどが展開するPayPayにポイントが付く可能性もある。また、LINEでのやりとりから興味を分析しZOZOTOWNRettyのお店を紹介するサービスを始めるかもしれない。一方、大手携帯キャリアのNTTドコモが発表したのは、インターネット通販大手のアマゾンジャパンとの新たな連携だった。新料金プランを契約すればアマゾンプライムの年会費が1年間無料になるという。またアマゾンの買い物をd払いで支払うとポイントが通常の5倍となる。連携の動きはほかの携帯キャリアでも出てきている。auを展開するKDDIフェイスブックと連携する。大容量のデータを送受信できる5Gを見据えて、AR・拡張現実やVR・仮想現実を活用したサービスを展開する方針だという。スマホカメラで洋服を撮影するとフェイスブックの写真共有アプリ・インスタグラムで自分の画像と合わせて試着できるようになるという(日テレ)。

 

 

11月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・Zホールディングス、第2位・LINE、第3位・三井不動産」

019年11月度のテレビ報道月間CM価値換算値ランキングでは45億7200万円でZホールディングスが第1位に輝いた。具体的には「LINE」との経営統合を正式に発表したことや「ZOZO」に対するTOBの成果発表等による報道が大きく寄与した。第2位は「ヤフーとLINE・統合合意・その先にあるもの」などの報道で「LINE」となった。第3位は「フェイスブック新オフィス・三井不動産開発のビルへ」などの報道で「三井不動産」、第4位は「東京土産・ディズニーと組む」などの報道で「オリエンタルランド」、第5位は「年末年始の休業拡大」などの報道で「ロイヤルホールディングス」、第6位は「ケンタッキー新ビュッフェ!チキン選び放題!食べ放題!」などの報道で「日本KFCホールディングス」、第7位は「新・渋谷パルコ・変わる?“買い物のカタチ”」などの報道で「パルコ」、

第8位は「賛否・コンビニ大手ついに“脱24時間営業”へ」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」となった。第9位は「還元率25%の新サービスとは」などの報道で「メルカリ」、第10位は「広州モーターショー開幕・レクサスが市販EVを初公開」などの報道で「トヨタ自動車」となった。

 

 

11月の人物ランキング

「第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長、第2位・Zホールディングス・川邊健太郎社長、第3位・LINE・出澤剛社長」

第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長77件(スーパーアプリ構想・孫社長の目指すものは?など)、第2位・Zホールディングス・川邊健太郎社長58件(ヤフーとLINE・統合合意・その先にあるものなど)、第3位・LINE・出澤剛社長45件(ヤフーとLINEが経営統合を発表など)、第4位・アキダイ・秋葉弘道社長14件(鍋料理の季節到来・しかし…台風や大雨で野菜が高値になど)、第5位・NTTドコモ・吉澤和弘社長11件(ドコモとアマゾンが連携・プライム年会費1年間無料になど)、第6位・ローソン・竹増貞信社長11件(お正月どうする?休む?人手不足深刻24H営業見直しもなど)、第7位・日本銀行・黒田東彦総裁10件(日銀はいつ動く?など)、第8位・日本ミシュランタイヤ・ポールペリニオ社長9件(ミシュランガイド最新版・去年6月オープンの店も掲載など)、第9位・セブンイレブンジャパン・永松文彦社長9件(ついに・経産省・コンビニ各社集め24時間営業見直し検討会など)、第10位・トヨタ自動車・豊田章男社長8件(東京モーターショー・来場者100万人達成へなど)。

 

 

●テレビの窓

「賛否・コンビニ大手ついに“脱24時間営業”へ」

たり前だったコンビニエンスストアの24時間営業が今大きく変わろうとしている。先週、セブンイレブン加盟店の一部オーナーが開いた会見で、過酷な労働環境が改善されない場合、来年の元日に一斉休業も辞さないという姿勢を明らかにした。コンビニが日本に最初に上陸したのは1974年セブンイレブン、その翌年には初めて24時間営業の店舗ができた。そのあと店舗の拡大が続き1983年には6300店だったものが2018年には5万8000店舗を超えるほど拡大をしてきている。一方で人手不足が大変深刻な問題になっており、24時間営業が難しくなる店舗も出てきている。経産省のアンケートでは休日が週1回未満というコンビニオーナーがなんと66%にも上っている。切実な現場の訴えを受けて先週、経済産業省はコンビニ各社から24時間営業の見直しや加盟店の負担軽減などのヒアリングをしながら新たなコンビニの在り方を検討し始めた。ほかにもコンビニ大手3社はいずれも時短営業の導入を認める考えを方針として示している。今やコンビニは単なる小売店ではなくなっており、災害への対応機能、行政サービスの提供など役割は多岐にわたっている。しかし、こうしたことで新たに派生する業務量が従業員にとっては大きな負担になっている(フジ)。

 

JCC株式会社