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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年2月)

「世界経済を直撃・コロナショック」「GDP7.1%マイナス・5四半期ぶり減」

今月の特徴は1.コロナショック・世界経済を直撃、2.GDP7.1%マイナス、3.日銀の動向、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.コロナショック・世界経済を直撃

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国の大手金融機関や国際機関で、世界経済や企業の業績見通しを下方修正する動きが出ている。バンクオブアメリカは、2020年GDP成長率見通しを従来から0.3ポイント引き下げ2.8%に修正。これは金融危機がピークを迎えた2009年以来の低水準となる。バンクオブアメリカのエコノミストは「長期化すれば世界的なサプライチェーンを傷つけ、アジアへの観光減少にも逆風になる」と指摘している(テレ東)。新型コロナウイルスの影響は日本経済も直撃している。電通資生堂などの大手企業は在宅勤務となった。大型旅館や食品メーカーが相次いで倒産している。第一生命経済研究所・経済調査部・首席エコノミスト・永濱利廣は「今後、宿泊施設、飲食、交通関連の倒産がさらに増えるだろう」とコメントした(テレ朝)。大手デパートの高島屋は、東京の新宿店や大阪店など9つの店舗で、28日から3月17日まで、営業時間を最大で2時間短縮すると発表した。融資の相談が増えている日本政策金融公庫は、臨時の電話相談窓口を開設することを決めた。同じく政府系金融機関の商工中金も、土日に電話相談を行う方向で準備を進めている。企業の入社式にも影響が出ている。東芝は4月1日に東京・港区の本社で予定していた入社式の中止を決め、代わりに少人数の規模に分けて、本社の会議室などに集め社長のビデオメッセージを視聴してもらうことを検討している。また家電量販店大手のビックカメラも、入社式の中止を決めた。ユニクロを運営するファーストリテイリングや、流通大手のイオンは入社式の延期を決めている(NHK)。

 

2.GDP7.1%マイナス

内閣府が発表した去年10月から12月までのGDP・国内総生産の改定値は物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてマイナス1.8%となった。年率に換算するとマイナス7.1%となり、速報値から大きく下方修正された形。GDPがマイナスとなるのは5期ぶりで、6年前に消費税率が引き上げられた直後である2014年の4月から6月期で年率マイナス7.4%となって以来の大幅な落ち込みとなる。GDPは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で1月から3月までの伸び率もマイナスになるという予測が出ていて、景気の先行きへの懸念が一段と高まっている(NHK3/9)。その一方で、政府が発表した2月の月例報告では「製造業を中心に弱さが一段と増した状態が続いているものの、景気は緩やかに回復。基調判断を維持している」としている。会見で西村経済再生担当大臣に対し記者たちから、「楽観的かつ根拠が不明瞭」との声があがったが、西村大臣は「GDPも含めた全体の判断として基調判断をした」と強気の説明をした(テレ東)。

 

3.日銀の動向

コロナウイルスの経済への影響について、日銀の黒田総裁は「中国国内の経済活動が抑制されることに加え、製造業のサプライチェーン、中国人観光客の流入の減少、その他を通じて日本経済だけでなく世界経済全体に影響することが懸念されている」とコメントした。株価急落を受け、財務省と日銀、金融庁が臨時の会合を開催した。財務省・武内財務官は「必要な対応策は政府として、日銀と一体となって考えていかなければいけない」と述べた(NHK)。

 

4.エネルギーの動向

東北電力の宮城県・女川原子力発電所の2号機が、再稼働の前提となる審査に正式に合格し、原子力規制委員会が、許可証を交付した。東北電力・増子次郎副社長は「ほぼ6年にわたって審査を受けてきたが、女川原発2号機の再稼働を今後進めていく上での大きな節目を迎えられた」と述べた。東北電力は、2020年度中に安全対策の工事が終わる予定だが、再稼働には地元の同意などが必要で、時期は不透明(フジ)。地球温暖化対策に取り組むため、防衛省は4月から自衛隊の駐屯地などで再生可能エネルギーの比率を高める取り組みを進めることにしている。これまでに佐賀県にある目達原駐屯地、福岡県にある小郡駐屯地など4施設で、約3割の電力を再生可能エネルギーでまかなうことになり、ほかの全国300超の施設でも導入を検討する(NHK)。

 

 

●注目点

「日用品をメイドインチャイナに依存する日本」

本で流通しているマスクのおよそ7割が輸入品であり、その多くが中国製である。今、マスクは中国からの入荷が滞っている。名古屋市のマスク製造工場では休日返上の増産態勢で1日に20万枚のマスクを生産しているが、1つの店に届く数はごくわずかだという(フジ)。マスクだけでない。「メイドインチャイナ」製品は他にも数多く存在する。東京・新宿区の100円均一ショップ「THE 100 STORES神楽坂店」で売られているキッチン用品や工具など、その8割くらいが中国製である。在庫はあるものの、中国から製品が届かない状況が続いた場合にはどうなるのかという不安があるという。「メイドインジャパン」の商品の中にも一部工程を中国で行っているモノも多いという。割り箸やビニール傘は輸入品のうち約9割が中国製で、日本以外の国ではあまり使われていないという。中国の工場がストップした場合、品不足になる可能性がある(日テレ)。

 

 

●新潮流

「コロナショック・イベント次々と自粛」

型コロナウイルスの影響は各方面に及んでいる。東京都渋谷区で開催された東京ガールズコレクションは政府のイベント自粛要請を受け、主催者が無観客での開催を急遽決めた。観客がいなくても大勢の出演者とスタッフが出入りするため、感染防止策を徹底し、会場に入れなかった観客に対しては、インターネットで生配信した。東京ディズニーランド、東京ディズニーシーは休園を決定し、ユニバーサルスタジオジャパンも休業を決めた。敢えて食のイベントの開催に踏み切ったのは東武百貨店池袋本店(東京・池袋)。地元産の素材を使った創作スイーツや黒豚、黒毛和牛がたっぷり入った贅沢な弁当が並ぶ大鹿児島展を開催した。試食を全面的に禁止し、実演販売員はマスクと手袋の着用を義務付けるなど、客に見える衛生管理を徹底した(テレ朝)。影響はスポーツイベントにも及んでいる。Jリーグは、94試合の延期を決定した。政府の要請を受け、ラグビー・トップリーグは16試合を延期した。さらにバスケットボールのBリーグも公式戦99試合の延期を決定。女子ゴルフは来週の開幕戦の中止を発表した。プロ野球はオープン戦、全72試合を無観客で行うことになった。北海道で行われているカーリングの日本ミックスダブルス選手権も全試合、観客を入れずに行われることが決定した(日テレ)。

 

 

2月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・イオンモール、第2位・スシローグローバルホールディングス、第3位・帝国ホテル」

020年2月度のテレビ報道CM価値換算値ランキングでは「イオンモール」が20億4600万円で第1位に輝いた。具体的にはイオンモールの「幕張新都心」や「オフィスを併設した複合施設の開発を強化」等のメディア露出が貢献した。第2位は「回転ずし驚きの進化(秘)最新冷凍技術&えび加工場テレビ初潜入」などの報道で「スシローグローバルホールディングス」となった。第3位は「東京五輪1964魂のレシピ・世界をもてなした伝説の料理人たち」などの報道で「帝国ホテル」、第4位は「フルオート物流展示施設・三井不動産・先進技術アピール」などの報道で「三井不動産」、第5位は「日産の九州工場もストップ・深刻“コロナショック”で」などの報道で「西武ホールディングス」、第6位は「マクドナルドの人気商品の秘密を全てぶっちゃけ!」などの報道で「日本マクドナルドホールディングス」、第7位は「みやぞん調査員が行く・ANA全面協力!羽田空港SP・羽田空港のホント」などの報道で「ANAホールディングス」、第8位は「アサヒビール・新CM“夏に楽しむカレー”」などの報道で「アサヒホールディングス」となった。第9位は「ローソン・レジなし店舗の実験店」などの報道で「ローソン」、第10位は「スペシャリストが選ぶ・健康効果が期待できる缶詰」などの報道で「マルハニチロ」となった。

 

 

2月の人物ランキング

「第1位・楽天・三木谷浩史社長、第2位・日産自動車・内田誠社長、第3位・経団連・中西宏明会長」

第1位・楽天・三木谷浩史社長76件(送料無料・公正取引委員会が楽天に立ち入り検査など)、第2位・日産自動車・内田誠社長29件(日産・大幅減益・米国・欧州など販売落ち込み・営業利益82%減など)、第3位・経団連・中西宏明会長15件(感染拡大・経済への影響・身近な生活にも…など)、第4位・日本銀行・黒田東彦総裁15件 (新型コロナ・最大の“不確実性”追加緩和もなど)、第5位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長14件(“もの言う株主”米国ファンド・ソフトバンクG株式取得など)、第6位・アキダイ・秋葉弘道社長13件(“一斉休校”で意外な影響・葉物野菜が安く・原因は?など)。第7位・西浦温泉冨士見荘・伊藤剛社長11件(新型コロナ拡大懸念・経済に打撃など)、第8位・八代目儀兵衛・橋本隆志社長11件(“ブレンド米”で大逆転!赤字経営&兄弟の確執など)、第9位・日本郵政・増田寛也社長9件(かんぽ・日本郵政・増田社長“失った信頼の回復を”など)、第10位・日本ケンタッキーフライドチキン・近藤正樹社長8件(ライバル店が続々オープン・激化するチキン戦争など)。

 

 

●テレビの窓

「シャープ・マスク生産開始へ」

型コロナウイルスの感染拡大でマスクの品薄状態が続く中、大手電機メーカー・シャープがマスクの生産に乗り出すことが分かった。マスクの生産を始めるのは三重県内の液晶ディスプレイ工場で、政府の要請に応じたという。クリーンルームと呼ばれる衛生環境が整った部屋を活用。来月半ばにも1日当たり15万枚で生産を始め、50万枚まで増やす計画。ネットオークションなどでマスクや消毒液が高額で販売される事例が相次いでいる為、経済産業省は大手ネットオークション事業者に対して来月14日からマスク、消毒液の出品自粛を要請した。デトロイトトーマツグループ・松江英夫CSOは「マスクの生産は衛生管理が大事。シャープの親会社のホンハイは今月頭から中国でマスクの生産を始めている」と述べた(フジ)。

 

JCC株式会社