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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年3月)

「東京五輪が延期、世界経済の前に立ちふさがるコロナショック」

今月の特徴は1.コロナショック、東京五輪延期の影響、2.102兆円超・2020年度予算成立、3.日銀の動向、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.コロナショック、東京五輪延期の影響

新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大によって東京五輪・パラリンピックの来年への延期が決定した。もともと、2019年の消費税引き上げがあって、景気が減速していたところに、新型コロナウイルスの影響が加わり、ヒトやモノが停滞して、景気をさらに厳しくした形になった。2020年のオリンピックパラリンピックで景気をV字回復させようというのが政府の目論みだったが、五輪を1年延期したことで生じてくる経済損失は6400億円ぐらいに上る可能性もある。消費税、五輪延期、新型コロナウイルスという3つのマイナス要素が重なったことで、経済が厳しくなる見通し。年度末を控える中、コロナショックの影響で2019年度通期の業績予想を修正する企業が相次いでいる。上場企業では135社が業績の見通しを引き下げている。丸紅はマイナス1900億円、JXTGホールディングスはマイナス3000億円、JFEホールディングスはマイナス1900億円。三井物産は、今年3月期の決算で500億円から700億円程度の損失が発生する可能性があると発表した(NHK)。

 

2.102兆円超・2020年度予算成立

国会では一般会計の総額が過去最大102兆6580億円となる2020年度予算が成立した。今後、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する追加の経済対策を盛り込んだ補正予算案の編成に入る。自民党・二階幹事長は「リーマンショック時の60兆円を当然念頭に置いて、その事業規模を上回るものを直ちにやる」と話した。日本維新の会・片山共同代表は「今後の日本の浮沈がかかっている。思い切った数字も中身もあるものを出して状況を変えてもらいたい」と話した(NHK)。

 

3.日銀の動向

新型コロナウイルスの影響でさらなる経済対策が求められる中、日銀は金融政策決定会合を前倒しで行ない3年ぶりに追加の金融緩和に踏み切ることを決めた。ETF(上場投資信託)の買い入れを年間6兆円から、当面12兆円に倍増させた。売り上げが減少している企業を支えるため、資金を金利0%で貸し出すことも盛り込んでいる(フジ)。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、金融市場の動揺が続き、日本国債を売る動きが出ているため、日銀は金融機関から1兆3000億円の国債を臨時に買い入れることを決め、「市場の安定維持に万全を期す」という異例のコメントを出した(NHK)。黒田総裁は、日銀が保有するETFに2兆円から3兆円の含み損が出ていることを明らかにし、この理由を「新型コロナウイルスによる経済への悪影響で株価が急激に下落しているためだ」と説明した。このまま株安が続けば日銀の財務が悪化し、国民の負担につながる恐れもある(テレ朝)。

 

4.エネルギーの動向

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で原油価格が大きく下落している。このことが、活況を呈していたアルゼンチンのシェールオイルの開発にも影を落とし始めている。アルゼンチン中西部のネウケン州では米国などの外資が主導し、5年ほど前からシェールオイルの開発を続けている。こうした中、石油元売り最大手のJXTGホールディングスは、新型コロナウイルスの感染拡大で原油の需要が落ち込んだことに加え、原油価格の急激な値下がりで損失が拡大したことから、今年3月期の決算で、最終的な損益がおよそ3000億円の赤字に転落するという見通しを発表した(NHK)。

 

 

●注目点

「新型コロナウイルス・“史上最速のワクチン開発”接種開始まで1年~1年半」

国・トランプ大統領は「史上最速級のワクチン開発が可能だ」と胸を張った。これはNIH(米国国立衛生研究所)が、1月中旬から製薬会社と共同で進めてきたワクチン開発を指しており、試験用のワクチンは、既に2月下旬に完成していたという。開発開始から約2か月での臨床試験は異例の速さ。実用化の時期について、NIHで新型コロナウイルス対策を率いるファウチ博士は「実際に安全性と効果を確かめてから一般に接種を始めるまでには、1年~1年半がかかるだろう」との見通しを示している。ワクチン開発を巡っては、疑惑も報じられており、ドイツの新聞は政府当局者の話として「トランプ大統領がワクチン開発を進めるドイツ企業に約1080億円を支払う見返りに権利を独占しようとした」と報道した。ドイツ・マース外相は「研究成果の独占は許されない。新型コロナウイルスに対しては対立ではなく協調することでしか我々は打ち勝つことはできない」とトランプ大統領をSNSで批判した(NHK)。

 

 

●新潮流

「トヨタ・NTTが資本提携・スマートシティーで強力タッグ」

ヨタ自動車NTTが互いに2000億円を出資する資本業務提携に合意した。トヨタ自動車・豊田章男社長は「モビリティーカンパニーへとフルモデルチェンジしていくためには、NTTとの連携は必要不可欠だった」と語り、NTT・澤田純社長は「トヨタとNTTがスマートシティーの社会基盤を一緒につくり上げる」と語った。両社は街全体をITでつなぐスマートシティーの事業で連携する方針。トヨタは2021年以降、静岡県に自動運転などの新技術を詰め込んだスマートシティーを建設する予定で、NTTは5Gなど通信インフラの技術などを提供する。スマートシティーを成長の柱に位置付ける両社の狙いが一致したといえる。立教大学ビジネススクール教授・田中道昭は「暗いニュースの中で唯一明るいニュース。2人の社長が記者会見で語ったことで注目したいのは、スマートシティー構想がGAFAへの対抗だと明言したこと。GAFAは米国の大手プラットフォーム企業。正直言って、GAFAに対抗するのは相当ハードルが高いと思うが、2社だけでなく、トヨタはもともとソフトバンクグループとも提携しているので、こういったところも巻き込んで3社連合を基軸にしてやっていくことで活路が開けるのではないか」とコメントした(テレ東)。

 

 

3月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・神戸物産、第2位・東日本旅客鉄道、第3位・三井不動産」

2020年3月度のテレビ報道CM価値換算値では「神戸物産」が第1位に輝いた。具体的には日テレ、TBS、フジの番組で神戸物産の「業務スーパー」としての特徴が大きく取り扱われCM価値換算値で50億6000万円になった。第2位は「高輪ゲートウェイ駅が開業」などの報道で「東日本旅客鉄道」となった。第3位は「三井不動産常務執行役員・植田俊に話を聞く」などの報道で「三井不動産」、第4位は「東京ディズニーランド&シー臨時休園を延長」などの報道で「オリエンタルランド」、第5位は「社長今何してる?」などの報道で「ローソン」、第6位は「東武鉄道・有料の座席指定列車6月から運行へ」などの報道で「東武鉄道」、第7位は「日銀・追加の金融緩和を決定」などの報道で「日本銀行」、第8位は「松竹芸人・劇場休館でライブ配信」などの報道で「松竹」となった。第9位は「ドコモ・5Gサービス開始」などの報道で「NTTドコモ」、第10位は「楽天市場の送料無料・一部店舗でスタート」などの報道で「楽天」となった。

 

3月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁93件 (日銀総裁「政策を実施し市場の安定を確保したい」など)、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長49件(外出自粛目前のスーパーは?など)、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長34件(最大4.5兆円の資産売却・ソフトバンクG・自社株買い2兆円など)、第4位・楽天・三木谷浩史社長26件(楽天・携帯料金・月額2980円・来月からなど)、第5位・トヨタ自動車・豊田章男社長19件(トヨタとNTTが資本提携へなど)、第6位・ローソン・竹増貞信社長17件(竹増が仕掛ける“これからのローソン”など)、第7位・NTT・澤田純社長12件(トヨタ・NTT資本提携へ“スマートシティーを推進”など)、第8位・学研ホールディングス・宮原博昭社長11件(パイロットを目指した男・非正規社員から社長になど)、第9位・KDDI・高橋誠社長11件 (「5G」サービスKDDIも今月26日から開始など)、第10位・ペッパーフードサービス・一瀬邦夫社長9件(“いきなり復活”大作戦・戦い続ける名物社長など)。

 

 

●テレビの窓

「NTTドコモが国内で初めて5Gサービスを開始、ソフトバンク、KDDI、楽天も続く」

TTドコモが国内で初めて開始した5Gのサービスは大容量のデータを高速通信できるもので、これまでの4Gに比べ最大100倍のスピードで動画をダウンロードできるようになる。利用する為には5G対応の機種が必要となり、サムスン「Galaxy」、シャープ「AQUOS」シリーズもこの動きに合わせて発売された。既に5Gが普及している中国のファーウェイも4月中旬に日本向け端末を発売予定でKDDIも26日、ソフトバンクは27日、楽天は6月に5Gサービス開始予定(日テレ)。KDDIが提供する5Gプランは月々のデータ通信量に制限がない無制限プランで、現行の通信料金に1000円を上乗せすることで利用が可能になる。またNetflixなど4つの動画コンテンツをセットにしたプランも6月以降提供するとしている。5Gサービスを巡ってはNTTドコモが4Gから500円上乗せのプランを、ソフトバンクは現行のプランに1000円プラスしたプランをそれぞれ発表している(フジ)。

 

 

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