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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年4月)

「IMF世界経済見通し・世界の経済成長率マイナス3%・世界恐慌以来最悪の不況」「国債買い入れ枠“上限”撤廃など日銀・追加の金融緩和を決定」

今月の特徴は1.世界の経済成長率マイナス3%、2.日銀の動向、3.ワクチン・新薬開発の動向、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.世界の経済成長率マイナス3%

IMFは今年の世界の経済成長率が新型コロナウイルスの感染拡大の影響で-3%まで落ち込み1929年の世界恐慌以降で最悪となる見通しを示した。これは2009年のリーマンショック後の-0.1%を大きく下回る見込み(NHK)。一方、中国の今年1月から先月までのGDP=国内総生産は前の年の同じ時期と比べてマイナス6.8%となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたもので、マイナス成長となるのは四半期ごとの統計が始まった1992年以降初めて。中国当局は「感染拡大を抑え込むために経済的な犠牲を払わなければならなかった」と説明している(日テレ)。米国議会は24日、ことしの第2四半期のGDP(国内総生産)の伸び率が年率換算でマイナス39.6%まで落ち込み、失業率は14%に跳ね上がるとする予測を公表した。この期間のGDPの見通しとしては統計を取り始めた1947年以来最悪で、第3四半期には大きく改善するとしているが4月からの第2四半期にどこまで落ち込むか見定めが難しい状況(NHK)。

 

2.日銀の動向

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日銀は27日、通常は2日間開いている金融政策決定会合を一日に短縮し追加の金融緩和に踏み切ることを決定した。前回3月の会合に続く追加の金融緩和で、具体的には、資金を低い金利で一段と潤沢に供給できるよう年間80兆円をめどとするとしていた買い入れの上限を当面設けず国債を積極的に買い入れることや、企業が発行する社債やCPコマーシャルペーパーの買い入れの上限も合わせて7兆4000億円から合わせて20兆円まで大幅に拡大し、厳しい資金繰りに直面する企業が資金を調達しやすくなるように支援を強化することにしている。さらに、3月に導入した0%金利で金融機関に資金を貸して積極的な融資を促す制度についても、金融機関が個人向けに行っているローンも日銀が預かることで仕組みを強化することにしている。また、日銀は国内の景気の現状について「感染拡大の影響により厳しさを増している」と、3月よりもさらに厳しい判断を示し、今年度の実質の経済成長率もマイナスになるという見通しを示した。政府が国債の新規発行を増やして大規模な経済対策に乗り出すことに連動して、日銀としても追加の金融緩和で政策を総動員する姿勢を打ち出した形(NHK)。

 

3.ワクチン・新薬開発の動向

米国ではいま新型コロナウイルスへの感染を予防するワクチンを開発するための臨床試験が世界に先駆けて進んでいる。バイオベンチャー・モデルナと米国の国立アレルギー感染症研究所が共同で開発する「mRNAワクチン」(メッセンジャーRNA)の可能性について、ウイルス学の権威・ポールオフィット医師は「“mRNAワクチン”はウイルス自体を使わず、新型コロナウイルスの表面にある“スパイクタンパク質”を作る遺伝情報が書き込まれた“mRNA”を体内に注入する。このワクチンが作り出した“スパイクタンパク質”が体内で見つかると、免疫システムが“スパイクタンパク質”に対する抗体を作り出す。ウイルスが侵入した時には、この抗体が“スパイクタンパク質”に結合し感染を防ぐ」と述べた。mRNAワクチンは従来のワクチンより短い期間で開発や製造ができるとされているが、オフィット医師は「あくまで将来を見据えての開発だ」と強調し、「安全性の証明が不可欠で、商用化には最低1年、おそらく2年近くかかるだろう。感染拡大の2波3波を想定したもので、1年以内に使われたら驚くべきことだ」と述べた。モデルナはワクチン開発に成功し当局の緊急使用許可が得られた場合は、この秋にも医療関係者などに提供できる可能性があるとしている(テレ東)。

 

4.エネルギーの動向

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、原油価格が急落している。東京商品市場では、中東産の原油の先物価格が一時、1万6000円を割り込み18年ぶりの安値となった。22日の東京商品取引所で、1キロリットル当たりの中東産の原油の先物価格が一時、前の日に比べて7720円値下がりし1万5710円となった。これは2002年2月以来、18年ぶりの安値水準となる。新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの経済活動が停滞している為、需要の減少が懸念され売り注文が広がった。原油の先物価格は米国市場でも大幅に下落するなど、世界的に値下がりが続いていて関係者は「売りが売りを呼ぶ状態で、しばらくは我慢の相場になりそうだ」と警戒感を強めている(TBS)。

 

 

●注目点

「急増するコロナ倒産」

国の倒産動向を集計する東京商工リサーチ。東京商工リサーチがまとめた新型コロナ関連の経営破綻は68件。発生地域は東京をはじめ30都道府県に広がっている。東京商工リサーチ情報部・原田三寛部長は「倒産が60件以上というのは非常に多いペース。これからは下請け、孫請けの会社の倒産という形で全ての業種、全てのエリアに広がってくることが予想される」とコメントした。東京都港区赤坂のネパール料理&Bar・マンダラ赤坂店ではコロナウイルスの影響で客足が激減し、都内にある3店舗のうち2つを閉めることになった。都内の居酒屋の店主は閉店を決めたが、秋まで家賃を払い続けなければならない上、内装の撤去費用もかかると辛い胸の内を明かした(テレ朝)。女性に人気のブランド・キャスキッドソンジャパンが東京地裁に自己破産を申請し破産手続き開始決定を受けた。帝国データバンクによると負債額は約65億円で緊急事態宣言で全店舗で時短営業・臨時休業となり先行きの見通しが立たなくなったことを受けたものだという。各業界を蝕んでいくコロナ倒産の第1期は宿泊業で、第2期は飲食業、小売業、第3期は食品納入業、食品製造業、第4期は製造業になるという。第5期は建設業の可能性があり、倒産も失業も増えてくる(フジ)。コロナ不況で苦境にあるタクシー業界は秘策を練り出した。日本交通は28日からタクシーでのステーキ店の配送サービスを開始。タクシーでの配達はオートバイよりも配送可能エリアが広く運送量も多いため様々なニーズに対応出来るという。新型コロナウイルスの影響でタクシー利用が減る一方、デリバリーサービスの需要は高まっており、国交省は先週から一定期間タクシーでの食品配送を特例的に認めている(TBS)。

 

 

●新潮流

「企業が手探りで臨むテレワーク」

くの職場が一斉にテレワークの取り組みを始めたが、現場からは戸惑いの声も聞こえてくる。東京都内のIT企業に勤める男性は、7人の部下を管理するグループリーダー。テレワークになっても普段の職場と同じように業務を進めてもらうため、導入したのが勤務時間の可視化システム。業務を始めるときには着席ボタン、休憩で離れるときには退席ボタンをクリックすることで勤務時間が記録されるシステムになっている。部下の勤務時間を確認することで、仕事の進捗状況や業務過多になっていないかを把握でき安心につながっている。男性は「在宅の方が生産性が上がっている感じがしている」と述べた。一方、社員がインターネットのどんなサイトを見て、情報収集をしているかなど、社員のメールの送受信までたどることができるシステムも登場した。このシステムには去年の同じ月と比べ、3倍近い問い合わせが寄せられているという。そうした中で「見られている意識が負担になっている」などとテレワークで働く側からの声も寄せられている。東京都内の会社に勤める女性は、先月下旬からテレワークが始まり、今ではパソコンの資料作成などが主な仕事となっている。パソコンの画面に自分の顔が写っていないと離席と判断されてしまうシステムにストレスを感じているという。働く姿が見えない社員の仕事をどう評価するかについては、企業にとっても悩みの種となっている。都内のITベンチャー企業が提供しているのがAI=人工知能を使ったシステム。テレワークで離れていても、上司と社員が目標を共有して成果を意識しながら働き、目標の達成度を互いが納得した形で評価していくシステムだという。リクルートマネジメントソリューションズ・武藤久美子シニアコンサルタントは「(テレワークの時代である)今こそ新しい働き方を切り開くチャンスだ」と指摘している(NHK)。一方、テレワーク時代の象徴となっているのがテレビ会議。サイバーリンクが開発した「パーフェクトカム」は自宅の私物を背景に映らないように加工ができる。人工知能「AI」が人物と背景の違いを認識し、背景だけをぼかし、シーンに合わせ、好きな画像を背景にすることができる。女性にとっても有用で「パーフェクトカム」を使うと、すっぴんでも一瞬で化粧をしたかのような顔に変身できるという。料金は1か月使い放題で税込1280円(TBS)。シスコシステムズが提供する「ビデオ会議・ウェブ会議サービス・CiscoWebex」では1対1でも大人数でも簡単に会議ができ、自宅からも参加が可能。もちろんテレワークやオンラインセミナーなどでも利用でき、録画も可能。自宅で利用する場合は背景をボカすこともできる。今後続々とテレワーク商品が登場してきそうである(日テレ)。

 

 

4月の人物ランキング

「第1位・アキダイ・秋葉弘道社長、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁、第3位・楽天・三木谷浩史社長」

第1位・アキダイ・秋葉弘道社長86件(“3密”回避へ外出自粛要請・海・公園・商店街の人出は?など)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁55件 (黒田総裁「緩和を一段と強化」など)、第3位・楽天・三木谷浩史社長28件(楽天携帯“最大の壁”アンテナはどこに建てる?など)、第4位・ロイヤルリムジングループ・金子健作社長23件(ロイヤルリムジン「解雇撤回」など)、第5位・リコー・山下良則社長20件(入社式で新入社員を集めず・動画や面談・感染対策に工夫など)、第6位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長20件(ソフトバンクグループ・営業赤字1兆円超の見通しなど)、第7位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長10件(激震・コロナショック~経済危機は回避できるか~など)、第8位・日産自動車・内田誠社長8件(異例の新年度・入社式・研修も…など)、第9位・出前館・中村利江社長8件(あのLINEが300億円出資!出前ビジネスの未来とは?など)、第10位・伊藤忠商事・岡藤正広社長6件(新型コロナで一変・各地で異例の入社式など)。

 

 

●テレビの窓

「巣ごもり需要で売り上げ増加のビジネス」

出自粛により長引いている、自宅の巣ごもり生活だが、少しでも楽しく自宅で過ごそうと工夫する動きが広がっている。外出をする際にもできるだけ人との接触を減らす様々なグッズやサービスの需要が高まっている。皇居周辺にはマスクをつけて走るランナーの姿があった。京都大学・山中伸弥教授による動画をきっかけにバフという感染予防マスクが売れているという。深刻なマスク不足は今も続いているが、新たに登場したのはプラスチックでできた透明なマスク。「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービスによると“透明で口元が見えるため、接客する店員の表情がよく見えて飛沫も防げると大好評”だといい、製造が追い付かないほど売れているという。一方、巣ごもり生活の影響で米国の動画配信大手「ネットフリックス」の純利益が過去最高となった。今年1~3月の純利益は去年と同時期の2.1倍となる約765億円。有料会員数は世界全体で1億8200万人を超えた。ネットフリックスの時価総額は1903億ドルとなり、ウォルトディズニーを上回った。これは日本最大であるトヨタ自動車の時価総額に迫る規模となる(日テレ)。全国の主なスーパーの3月の売り上げは昨年と比べて0.8%増えた。「巣ごもり需要」から食料品の売り上げが大幅に伸びたことが影響している。日本チェーンストア協会による3月のスーパー売上高:約1兆338億円。商品ごとの売上高でみると、衣料品は暖冬などの影響で22.3%減ったが、外出自粛にともなう「巣ごもり需要」の増加により、食料品が7.1%増えたことで全体の売上高増加につながった(TBS)。

 

JCC株式会社