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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年6月)

「日銀・金融緩和を維持・資金繰り支援策110兆円規模に」「月例経済報告・景気“下げ止まりつつある”」

今月の特徴は1.日銀の動向、2.株主総会の動向、3.景気の動向、4.ワクチン・新薬開発の動向、5.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.日銀の動向

日本銀行は金融政策決定会合を開き、大規模な金融緩和策の維持を決めた。黒田総裁は、新型コロナの影響で、2022年度末までの利上げは難しいとの認識を示した。また、新型コロナへの対応として打ち出した中小企業への融資を促す制度など、企業の資金繰りを支援する枠組みについては、これまでの75兆円から110兆円規模に拡大した。一方で、現在の景気については「極めて厳しい状態にある」との認識を示し、新型コロナの今後の動向や経済への影響には「不確実性が大きい」としている。黒田総裁は物価上昇率が低い状況が続くとの見通しから、2022年度末までの利上げは難しいとの認識を示した。米国の中央銀行にあたるFRBも2022年末まで事実上のゼロ金利政策の継続を表明するなか、日米で低金利が長期化することになる。ちなみに日銀が発表した6月の短観(7/2)では、大企業の製造業の景況感を示す指数がマイナス34と大幅に悪化した。前回の3月調査より26ポイントの悪化で、リーマンショック後の2009年以来11年ぶりの低い水準となる(TBS)。

 

2.株主総会の動向

新型コロナウイルスの感染の第2波が懸念される中、多くの株主総会では、感染拡大の影響で厳しい状況にある事業の立て直しに向けた戦略や、今後の危機対応をどのように説明するかが焦点となった。感染を防ぐため、三井住友フィナンシャルグループは、総会の様子をインターネットを通じて配信し、会場では株主用の座席を少なくした。その結果、出席者は去年の585人から107人に減り、総会は、去年より短い55分で終了した。昨年度決算が巨額の赤字となったソフトバンクグループの株主総会では、孫正義社長が財務の改善に向け、進めている4兆5000億円の資産売却の8割にめどが立ったと説明し株主に理解を求めた。多くの企業は、前年度よりも利益を減らし、3月期決算の企業の半数以上にあたる1200社が、先行きが不透明なため、今年度の業績を未定としている。今年3月までの3か月間の決算が587億円の最終赤字となったANAホールディングスの株主総会では、会社側はコスト削減を進めるとともに、手元資金の確保に万全を期すことを説明した(NHK)。新型コロナで販売低迷が続き、昨年度の決算では6000億円を超える最終赤字を計上した日産自動車の株主総会では生産能力を全体で2割削減する経営再建策が説明されたものの、株主からは厳しい声が相次いだ。総会では取締役選任の議案を賛成多数で承認した。日産は新車の投入を軸に経営の立て直しを急ぐ方針。ソニーは株主総会を開き、来年4月から社名を「ソニーグループ」に変更する議案を可決した。ソニーグループは本社機能に特化した会社となり、ソニーの名称はエレクトロニクス事業を担う会社が継承する(TBS)。

 

3.景気の動向

IMF(国際通貨基金)は今年の世界全体の成長率を下方修正し、-4.9%と発表した。今年の世界成長率を世界恐慌以来最悪とした4月時点から1.9ポイント引き下げた。新型コロナウイルスの影響で大きな不確実性があるためと説明している。新型コロナウイルスの影響は想定したよりも深刻で企業や消費者の活動自粛が続き、景気の回復が鈍くなると分析している(日テレ)。一方、緊急事態宣言の解除により、経済活動が再開し、景気がよくなっていくという見立てが上がってきていることから、株価は急速に回復している。厳しい現状を示す数値が発表されても、株価が下がらずに上がっている。働く人に景気の実感を聞く景気ウォッチャー調査を見ると4月はこれが7.9で、過去最低だったが、5月になると15.5で、過去3番目に悪い数字であるものの上がっている。7ポイント改善していて、さらに2、3か月先の見通しもよくなってきている。景気と株価がずれている印象があるが、いずれ同じカーブになっていくものとみられる。そもそも株価は、景気の先行指標であり、実際の景気よりも先に上昇していく傾向がある為である。ただし、今の状況を緊急緩和マネーによるバブルとの見立てもあり、この先、どうなるかについては、専門家の意見も分かれている(NHK)。

 

4.ワクチン・新薬開発の動向

米国にあるタカラバイオの子会社は米国の医薬関連企業・バイオシンタグマと共同でPCR検査の新しいシステムを開発したと発表した。このシステムでは一度に5184件のPCR検査が可能になり、約2時間でデータを解析することができるとしている。バイオシンタグマは米国の食品医薬品局に緊急の使用許可を申請していて、米国国内での早期展開を目指している。PCR検査を巡ってはスイスの製薬会社・ロシュが1日に最大4000件以上検査できるシステムを開発しているが、その手法と比べ処理能力は14倍以上になる(テレ朝)。フランスでは日本のメーカーが開発した検査工程を全自動で行えるPCR機器の導入が進んでいる。開発したのは、遺伝子検査の自動化に取り組んできた千葉県にある精密機器メーカーで、日本でもこの機器を導入する準備が進められている(NHK)。

 

5.エネルギーの動向

新型コロナウイルスの感染拡大で原油価格が低迷する中、米国ではシェールオイルの関連企業の経営破綻が相次いでいる。経営破綻したのは、米国のチェサピークエナジー社で、28日南部テキサス州の裁判所に日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条の適用を申請した。チェサピークは地下深い岩盤の層から取り出すシェールオイルやシェールガスを生産するエネルギー関連企業で、30年以上前に創業した老舗の1つだが、積極的な設備投資や技術開発などで負債は1兆円を超え、厳しい経営が続いていた。さらに新型コロナウイルスの感染拡大で原油価格が急落したことで多額の負債が重荷になり、資金繰りに行き詰まったものと見られる。シェールオイルの生産拡大で米国は世界最大の産油国となっているが、中東産の原油などに比べて生産コストが高く、米国では原油価格の低迷を受けてことし4月以降、関連企業の破綻が相次いでいる(NHK)。

 

 

●注目点

「5G・ポスト5G技術開発・国内メーカーなどに700億円規模支援へ」

Gの次世代通信規格は6G、ビヨンド5Gなどと呼ばれ、2030年ごろの導入が見込まれている。有識者会議の提言案では、大阪・関西万博が開かれる2025年までを「先行的取組フェーズ」と位置付け、通信設備や技術開発に集中的に取り組み、万博で「未来の社会像」を世界に示していくとしている。5Gでは海外の企業が多くの特許を取得しているが、次の通信規格では日本企業の存在感を高めたい考え。5Gやさらに次の世代ポスト5Gの通信規格は、スマートフォンなど、モバイル端末の通信だけでなく自動運転や工場の自動化など、様々な分野での活用が期待されている。政府はこの分野で日本企業の技術開発を後押しするため、昨年度の補正予算で設けたNEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)の基金から700億円規模の支援を行う方針を固めた。支援先として選定されることが固まったのはNEC富士通楽天モバイルなどで、基幹ネットワーク開発や基地局整備などに取り組むことになる。5Gでは基地局のシェアや特許で中国・ファーウェイなどが先行しており、政府としては情報漏洩など安全保障面でのリスクに対応するためにも日本企業が巻き返しを図れるよう支援していくことにしている。これについて高市大臣は「5Gでは日本よりもすぐれた展開をしている国や企業があるが、次世代のビヨンド5Gでは海外の戦略的パートナーと連携して国際標準化を進め、特定の事業者に依存しない規格にすることが重要だ」と述べ、2030年ごろの導入が見込まれる5Gの次の世代の通信規格作りでは日本が主導して国際標準化を進めることに意欲を示した。(NHK)。

 

 

●新潮流

「経済界が提言・コロナ検査体制拡充」

型コロナウイルス対策で政府に助言する基本的対処方針等諮問委員会メンバー・東京財団政策研究所・小林慶一郎研究主幹らは、18日、一日20万件の検査能力の確保を目指すことを盛り込んだ緊急提言を発表した。提言では「検査、医療体制を大幅に増強することで積極的に感染を防止し、経済社会活動を正常化する事が重要」と指摘した。第2波に備え、PCR検査や抗原検査の実施能力を9月末までに一日10万件、11月末までに一日20万件に整備するよう提案、スポーツ活動では選手や審判らに症状の有無を問わず定期的に検査を実施できる体制を整えることなどを挙げた。この提言には京都大学・山中伸弥教授、読売巨人軍・山口寿一オーナーら政財界、医療、スポーツ関係者ら110人が賛同しており、西村経済再生担当相や加藤厚生労働相に提出する予定。白鴎大学・岡田晴恵教授は「政府は一に10万件にするよう努力しているが、それを20万件にしようという提言で、陽性者と陰性者を分け、陽性者を隔離して医療につなげ、陰性者に堂々と経済を回してもらう。もう一度自粛するのはだめだというのがコンセンサスになっている。自粛できないと放置され大きな流行になると国民の健康被害が非常に大きくなり、経済の打撃も大きくなる」と指摘した(テレ朝)。現在のPCR検査数が約2万8000人で約3か月後の9月末には10万人というと大変な数値に思えるが、学者や評論家が唱えている机上の議論ではなく、かなり実務の方が唱えている話。経済界の首脳と言っていいような方々が賛同者に名を連ねている。日本の経済界からは検査の問題をしっかりしてくれという声が強い(テレ東)。

 

 

6月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ファーストリテイリング、第2位・日本KFCホールディングス、第3位・スシローグローバルホールディングス」

2020年6月度のテレビ報道CM価値換算ランキングでは「ファーストリテイリング」が22億7700万円で第1位に輝いた。具体的には夏用マスクの「エアリズムマスク」の販売開始が大々的に報じられた他に、「ユニクロが銀座にオープン」「ファーストリテイリングの柳井会長兼社長が京都大学がん研究に総額100億円を寄付」等が報じられた結果であった。第2位は「レジ袋無料を継続」などの報道で「日本KFCホールディングス」となった。第3位は「ジョブチューン」などの報道で「スシローグローバルホールディングス」、第4位は「すかいらーく融資枠1000億円」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第5位は「丸亀製麺のおトク!」などの報道で「トリドールホールディングス」、第6位は「夏の電車でのクーラーマナー」などの報道で「東急」、第7位は「世界最大級の船で大航海SP」などの報道で「商船三井」、第8位は「JR東日本“解除後”週末データ・新幹線利用が47%増」などの報道で「東日本旅客鉄道」となった。第9位は「キャッシュレス決済・ポイント還元事業・一定の効果あげた」などの報道で「LINE」、第10位は「東京メトロ日比谷線で虎ノ門ヒルズ駅が開業」などの報道で「東京地下鉄」となった。

 

 

6月の人物ランキング

「第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長、第2位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁」

第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長43件(孫正義会長兼社長・資産売却は「8割達成」など)、第2位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長38件(京都大学に総額100億円を寄付・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長公表など)、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁27件(“デジタル通貨”の開発競争・主導権を握るのは…!?など)、第4位・アキダイ・秋葉弘道社長18件(新型コロナが家計を直撃・7月にはレジ袋有料化もなど)、第5位・銚子電鉄・竹本勝紀社長13件(観光業救う・銚子電鉄のオンラインショップなど)、第6位・大戸屋ホールディングス・窪田健一社長13件(対立・「大戸屋」社長×筆頭株主・手作りか?効率化か?など)、第7位・アキレス・伊藤守社長10件(驚きの新素材を開発・どうするシューズ事業など)、第8位・ロイヤルリムジングループ・金子健作社長9件(激動のロイヤルリムジン・混乱の末に選んだ道など)、第9位・関西電力・森本孝社長8件(関電・金品受領に批判続出・発覚後初の株主総会など)、第10位・日本郵政・増田寛也社長7件(かんぽ生命問題・2400人余処分など)。

 

 

●テレビの窓

「キャッシュレスポイント還元制度・6月末で終了」

象約200万店舗のうち115万店ほどが参加した国のキャッシュレスポイント還元制度(経産省による今月11日発表)だが、6月末で制度が終了する。代わりにコンビニ各社は独自のポイント還元策を開始する。セブンイレブンは「PayPay」と連携し、抽選で最大10万円相当のポイントを付与、ファミリーマートはファミペイでの決済でクーポン券が抽選で当たるなどのキャンペーンをスタートさせる(日テレ)。ローソンは客離れを防ぐ為、来月1日から2か月間、会社の負担で独自のポイントを消費者に提供することを発表した。セルフレジで会計をした人に2%分をローソンなどで使える共通ポイント「ponta」か、NTTドコモの「dポイント」で付与する形式。今後セルフレジが増えることで客と店員の接触の機会が減る為、新型コロナウイルスの感染防止にもつながるとしている(TBS)。キャッシュレス決済のポイント還元制度で、制度に参加した食品スーパーの半数近くが終了後もキャッシュレス決済を増やしたい意向を示している。この調査は全国スーパーマーケット協会が今月中旬、全国の食品スーパー966社を対象に行い、301社から回答を得たもので、制度が終わったあとのキャッシュレス決済の扱いを尋ねたところ「増やす」という回答が48.5%、「現状維持」が32.3%、「減らす」という回答が16.2%だった。キャッシュレス決済のメリットを複数回答で尋ねたところ、「会計時間の短縮」が73.9%、「現金管理の負担軽減」が50.2%、「新たな客層の発掘」が44.1%などとなっている(NHK)。日本で加熱気味のキャッシュレス決済だが、フィンテック企業をめぐる不穏な動きがドイツで起きた。ドイツのオンライン決済大手・ワイヤーカードがミュンヘンの裁判所に破産申請すると発表した。フィンテック企業としては初めての大型破産となる。ドイツの検察当局は、マークスブラウン前CEOを粉飾決算と株価操作の容疑で逮捕したと発表。ワイヤーカードは、保有しているとしていた現金の半分以上にあたる19億ユーロ(約2300億円)が行方不明になっていると発表。検察当局は、ブラウン前CEOがワイヤーカードの財務状況を健全に見せるため、架空の取引で収益などを膨らませた疑いがあるとしている。(テレ東)。

 

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