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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年8月)

「衝撃・GDP-28.1%・戦後最大の落ち込み」

今月の特徴は1.GDP28.1%、2.安倍首相辞任の影響、3.ワクチン・新薬開発・検査の動向、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.GDP・-28.1%

内閣府は、ことし4月から6月までのGDPの改定値を発表し、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べて-7.9%となった。年率換算すると-28.1%となり、リーマンショック後の2009年1月から3月の落ち込み幅を超えて、最大の下落となった。速報値の-27.8%から下方修正された形。これは最新の統計を反映した結果、企業の設備投資が速報値の-1.5%から-4.7%に、住宅投資も-0.2%から-0.5%に下方修正されたためで、新型コロナウイルスの影響の大きさを改めて示す結果となった。西村経済再生担当大臣は、「前向きな投資、こうしたものも見られるところである。税制、あるいはIT補助金などさまざまな形でデジタル化の動きをさらに推進していくということで、前向きな投資に関してはしっかりと運用していきたい」と述べた(NHK9/8)。

 

2.安倍首相辞任の影響

安倍首相が辞任した。経団連の中西会長は安倍首相の辞任について「憲政史上最長の在任期間の中でアベノミクスの実行など、多大なる実績をあげてこられた。諸政策を継続的かつ強力に進めることを強く期待する」とコメントした。安倍政権の経済政策アベノミクスは日銀による国債の大量買入れなど異次元の金融緩和を推進させた。輸出の多い製造業にとって有利となる円安と株高をもたらし、大企業などを中心に恩恵を受ける形となった。製造業のトップ、富士フイルムHD・小森重隆会長は「閉塞感のあった日本経済をアベノミクスにより立て直した。世界の首脳との交流、対話などの外交を通じて世界における日本の存在感を高めるなど、極めて大きな功績があった」とコメント。東芝・車谷暢昭社長は「政府には安倍政権が最優先課題に据えた経済成長について、ウィズコロナ時代を踏まえた適切な施策を講じてほしい」とコメントした(テレ東)。

 

3.ワクチン・新薬開発・検査の動向

安倍首相は、新型コロナウイルスの新たな対策パッケージを発表した。インフルエンザとの同時流行に備え、一日平均20万件のPCR検査ができる体制を目指すこと、来年前半までに全国民分のワクチンを確保すること、ワクチンを海外から調達するために、今年度第2次補正予算の予備費を活用することが盛り込まれた。新型コロナウイルスは、感染症法で患者に入院勧告する2類相当とされているが、政令改正も含めて見直しを検討する(フジ)。英国製薬大手アストラゼネカが新型コロナウイルス新薬「モノクローナル抗体」の臨床試験を開始した。「モノクローナル抗体」とは免疫細胞から人工的に作る抗体のコピーである。治療や、病気の進行を予防するために使われる。治療薬の臨床試験は健康な48人に対して行われる(テレ朝)。

 

4.エネルギーの動向

CO2の排出量が少ない石炭火力発電所が公開された。発電効率45%で、二酸化炭素排出量は従来型より17%低い磯子火力発電所(横浜市)である。政府は効率の悪い石炭火力発電所について、2030年度までに9割の休廃止を求める方向で検討。運営するJパワーは保有する石炭火力の内4割が非効率とされている(テレ朝)。日立製作所は2019年1月に凍結を発表していた英国での原子力発電所の新設計画の再開を模索しているとフィナンシャルタイムズが報じた。ここ数週間、英国政府と資金支援などについて協議しているという。日立の子会社が英国政府に対し新たな資金支援モデルが構築できれば計画再開が可能と説明しているという(テレ東)。

 

 

●注目点

「景気がよくなっている実感がない中、なぜ株高が?」

ロナショックと言われて株価は一時期下がったが、その後少しずつ回復し、実は25日、一時的にコロナ以前の水準になった。GDPが戦後最大の落ち込みの中、なぜ株高が進むのか。25日発表された7月の白物家電の国内出荷額は1割以上も増えた。1人10万円の給付金や、巣ごもり需要の高まりも追い風になったとみられるが、好調なのは家電だけではない。東京株式市場の日経平均株価は一時、新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回った。上げ幅は一時400円を超え、なんとコロナ以前の水準を上回る場面もあった。景気が回復したということなのか。発表されたGDPは戦後最悪だった。さらに東証1部上場企業の最終利益が半減したことが分かっている。実態とかけ離れる株式市場の動きを加速させるのは、日銀の金融緩和による金余り。ニッセイ基礎研究所・井手真吾チーフ株式アナリストはこの状況について「お金はジャブジャブで行き場を失っている。投資マネーが株式に流れ込んでいるという格好。この先一本調子で上がっていくことはあまり期待できない」と分析した(TBS)。

 

 

●新潮流

「輸送・東北新幹線で海産物を輸送・空席を有効活用…初の試み」

R東日本は新型コロナウイルスで空席が目立つ客席を有効に活用しようと仙台駅(宮城県)から東北新幹線に海産物を積み込み、東京駅へ運ぶ実証実験を始めた。客席を使って運ぶのは初めて。新幹線での輸送はトラックよりも時間が短縮できる。電車やバスなどで乗客と貨物を同時に運ぶ形態を貨客混載といい、行うには国に届け出が必要だったが、2016年に届け出が不要になるなど手続きが簡素化された。JR東日本では2017年から新幹線で新鮮食材を輸送。JR東日本は今回の実証実験を通してにおい、客席の汚れがないか、停車時間に積み下ろしができるかを確認して実用化に向けて進めていきたいとしている(TBS)。宮城県の石巻で水揚げされたばかりの魚介類の行き先は東京駅構内の飲食店。羽田市場食堂東京駅店では、届いたアジやタイ、牡蠣などが振る舞われた。新幹線の空席を活用して魚介類を輸送することについてネット上では「空気を運ぶより有意義」などの声が上がっている(日テレ)。

 

 

8月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ローソン、第2位・東日本旅客鉄道、第3位・ミニストップ」

2020年8月分のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、第1位に36億5700万円で「ローソン」が輝いた。具体的には「レジ袋の辞退率が増加」や「コンビニ大手3社が共通のトラックで商品を共同配送する実証実験の実施」に加え、「成城石井の新商品等の紹介」「ウーバーイーツの宅配サービスの導入」「じぶん銀行のサービスがローソン銀行のATMで利用可能」等の露出効果があった。第2位は「夢追い人・JR東日本社長・深澤祐二」などの報道で「東日本旅客鉄道」となった。第3位は「ミニストップの社長イチ押しスイーツを超一流スイーツ職人が判定」などの報道で「ミニストップ」、第4位は「東武日光駅に発着するSL列車の名称を初披露」などの報道で「東武鉄道」、第5位は「コンビニおでんアクリル板設置で販売開始」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」、第6位は「登場・ドラえもん×マクドナルド」などの報道で「日本マクドナルドホールディングス」、第7位は「米津玄師・ユニクロとコラボ」などの報道で「ファーストリテイリング」、第8位は「義足の疑似体験・松本が体験」などの報道で「ソニー」となった。第9位は「日本テレビ小鳩文化事業団製作・点字カレンダー」などの報道で「日本テレビホールディングス」、第10位は「日本のカルチャーを発信!最先端アート巨大施設」などの報道で「KADOKAWA」となった。

 

8月の人物ランキング

「第1位・アキダイ・秋葉弘道社長、第2位・星野リゾート・星野佳路代表、第3位・日本郵政・増田寛也社長」

第1位・アキダイ・秋葉弘道社長27件(野菜価格高騰・今後の値下がりに期待など)、第2位・星野リゾート・星野佳路代表17件(遠出は減少・マイクロツーリズムで成果アップなど)、第3位・日本郵政・増田寛也社長16件(日本郵政グループ・保険営業当面再開せずなど)、第4位・Eggs’nThingsJAPAN・松田公太代表取締役社長15件(岐路に立つ外食業界など)、第5位・エー・ピー・カンパニー・米山久代表取締役社長15件(どうなる?外食業界など)、第6位・ソフトバンクグループ・孫正義社長14件(ソフトバンクグループ・巨額赤字から一転大幅黒字になど)、第7位・日本銀行・黒田東彦総裁12件(日銀・黒田総裁・感染者増に警戒感など)、第8位・アパホテル・元谷芙美子取締役社長7件(withコロナ時代の新形態・アパが開業「非接触型ホテル」など)、第9位・チョーヤ梅酒・金銅重弘社長7件(コロナでも絶好調!“梅商品”開発員2人で大ヒットの秘密など)、第10位・ノジマ・野島廣司社長5件(金融との連携・ノジマの狙いは?など)。

 

 

●テレビの窓

「日本の技術で“空飛ぶ車”」

ヨタなどが出資する会社が開発したSkyDriveの「空飛ぶクルマ」。モニターに行き先を入力すると自動的に目的地に到着する。将来的には上空500m、時速100キロメートルを目指す。鎌倉から六本木まで約20分で到着する想定で、渋滞の解消、災害時の救急搬送の活躍が期待されている。実現は可能なのか?軽量かつ変形しにくい構造を追求し、パナソニックNECなど日本を代表する企業がサポートしている。SkyDrive・福澤代表は「日本はかなり優秀な部品が存在する国なので、産業の地点としてはすごく有利なのかなと思っている」。先週、人を乗せた実験を初めて公開。4分間飛行。中国の企業はすでに遊覧飛行試験を行っている。自動運転なので客は写真撮影を楽しむことができる。ドイツでも都心部上空の飛行試験を行っている。3年後の実用化を目指しているという。慶応義塾大学大学院・中野教授は「地上との交信、管制との交信をどのようにしていくのだとか、いろいろ決めていく必要がある」と指摘した(TBS)。

 

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