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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年9月)

「日銀金融政策決定会合・徐々に持ち直しつつある」

今月の特徴は1.菅新政権発足、2.日銀の動向、3.景気の動向、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.菅新政権発足

本格的に始動した菅新政権。政策として携帯電話料金の引き下げや地方銀行の再編などを掲げている。アベノミクスに次ぐ、次なる経済政策、スガノミクスはどうなるのか。スガノミクスの要点は「古いしがらみからの脱却」「縦割り行政の弊害打破」、「地銀再編」や「観光強化」、「地方分権の促進」。菅総理は円高の製造業や企業マインドに与える悪影響については非常に懸念している。スガノミクスの原点は2008年に発足した「アビーロードの会」。この時のメンバーは菅義偉、安倍晋三、塩崎恭久、渡辺喜美で、脱官僚に向けた取り組み、リフレ政策を共有していたという(テレ東)。

 

2.日銀の動向

日銀は、金融政策決定会合を開き、長期金利が0%程度で推移するよう国債を上限なく買い入れて市場に潤沢な資金を供給し、短期金利はマイナスにする今の大規模な金融緩和策の維持を賛成多数で決めた。また、新型コロナウイルスの影響を受けた企業向けの融資を金融機関が増やすよう、130兆円規模の資金繰り支援策についても継続することを決めた。景気の現状については、経済活動が徐々に再開していることを踏まえ、これまでの「極めて厳しい状態にある」から「引き続き厳しい状態にあるが持ち直しつつある」に改めた。そのうえで、当面、新型コロナウイルスの影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加の金融緩和に踏み切るとしている(NHK)。

 

3.景気の動向

政府は、9月の月例経済報告で「景気は依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる」との判断を3カ月連続で維持している。米国向けを中心に自動車の輸出が増え、「輸出」と「生産」の項目の判断を引き上げた一方で、個人消費については、感染再拡大で夏の旅行や外食などを中心に足踏みが見られたことから5カ月ぶりに下方修正したほか、設備投資も判断を引き下げた。西村経済再生相は、4連休中の宿泊施設の稼働率が高かったことを挙げ、今後の持ち直しに期待を寄せた(フジ)。コロナ対策の経済政策について、これまで政府は、企業向けに持続化給付金や家賃支援給付金、実質無利子無担保融資など、また家計向けに特別定額給付金や「GoToキャンペーン」などで景気を下支えしてきたが、V字回復のシナリオには程遠い状況。菅新総裁は「不十分なら徹底して次の手を打っていく」とコメントしている(NHK)。

 

4.エネルギーの動向

日立製作所は英国への原発輸出について経済合理性がないとして撤退することを今月、正式に決めた。原発輸出は安倍内閣で成長戦略の柱と位置づけられてきたがこれで契約が見込める案件はすべてなくなった。菅内閣は安倍内閣の継承を掲げ今後も原発の再稼働を進める方針とみられる。一方で新たな動きが出てきた。水素は「脱炭素」に向けた次世代のエネルギー源として注目される一方、水素を活用できるインフラが少ないうえ、導入のコストが高く、普及が進んでいない。このため経済産業省は、福島県で水素の製造から利用までを一貫して行う実証事業を行うことになった。今年3月に福島・浪江町に完成した世界最大級の施設で製造された水素を活用して、企業などが燃料電池車を導入したり、工場や公共施設などで水素を燃料として熱や電気に使ったりする際に補助金を出すなどして、水素の普及を後押しする。経済産業省は、水素の活用技術を持つ企業が多く集まる関西圏や中京圏でもこうした事業を検討し、来年度予算案の概算要求に必要な経費78億円余りを盛り込む方針(NHK)。

 

 

●注目点

「携帯料金値下げどうなる?」

TTNTTドコモの全ての株式を取得し、完全子会社化にすることを発表。菅総理が目玉政策として掲げる携帯電話の通信料の値下げについては、NTT・澤田社長が「検討している」と話した。政府が3割強の株式を保有するNTTがドコモを完全子会社にすることで携帯電話の料金プランなどに政府の意向がどこまで働くのか注目されている(NHK)。こうした中、楽天は次世代高速通信「5G」について、月に2980円で使い放題のプランを発表した。楽天・三木谷浩史社長は「安くて分かりやすいのが一番」としている。楽天モバイルが発表したのは、これまでの4Gと同じ月額2980円で個人向けの5Gのサービスが使い放題の料金プラン。菅首相は今月16日「世界でも高い料金で20%もの営業利益を上げている事実がある」として世界的に見て割高な携帯電話料金の引き下げを公約に掲げている。KDDI・高橋誠社長は今月25日「総理大臣あるいは総務大臣からご意見を頂いている携帯電話の値下げについては、要請を真摯に受け止めなければならないと思って対応方針については検討していきたい」としている。MCA Inc.通信アナリスト・天野浩徳代表は「早ければ年末商戦に向けて料金引き下げは行われる可能性があるのではないか」と指摘した(TBS)。

 

 

●新潮流

「GoToトラベルキャンペーンに東京が正式追加」

0月1日からGoToトラベルキャンペーンに東京が正式に追加されることになった。都内の旅行代理店では、旅行の問い合わせが増えており、新宿駅前にある金券ショップでは、東京発着の新幹線のチケットなどが売れに売れているという(TBS)。パレスホテル東京では1週間の予約は、去年と比べて約3倍にもなった。皇居外苑が一望できる部屋、2人で1泊9万6800円のプランが、GoToトラベルや都の補助などを使った場合、実質半分近くの5万円ほどになるという。東京・文京区にあるホテル椿山荘東京では1人1泊4万円の国産牛のステーキも付いた宿泊プランの場合、GoToトラベルで宿泊費が35%引きとなり、1人2万6000円になる。都民限定の都の観光支援策も併せて使えば更に5000円引かれ、1人2万1000円となる(日テレ)。一方、新型コロナウイルス関連の倒産は飲食業76件、アパレル関連58件、宿泊業47件となっている。9月に倒産が増えている理由について東京商工リサーチは「政府・自治体などの支援によってギリギリのところで耐えてきた多くの事業者が限界を迎えてしまった。新たな支援策がないと倒産件数が増えていく可能性もある」。東京商工リサーチによると「GoToキャンペーンで支えられている事業者も多いが、新型コロナウイルスへの不安を払拭できないと効果は限定的となる」としている(TBS)。

 

 

9月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・良品計画、第2位・日本電信電話、第3位・オリエンタルランド」

2020年9月度のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、35億1500万円で「良品計画」が第1位となった。具体的には「日用品20点の価格を見直し、値段を下げた」「『3種類の防災セット』『LEDモバイルライト』の発売」「お菓子の量り売りスタート」等の露出等が大きく貢献した。第2位は「NTT・ドコモ完全子会社化へ」などの報道で「日本電信電話」となった。第3位は「ディズニー新エリア公開“徹底した感染対策”とは」などの報道で「オリエンタルランド」、第4位は「値引き商品情報をスマホに・ローソンとKDDI共同で」などの報道で「ローソン」、第5位は「海外渡航・来月から段階的解除へ」などの報道で「ANAホールディングス」、第6位は「異例・JRが終電繰り上げのワケ・首都圏・関西圏で」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第7位は「アダストリアのショールームでコーデバトル」などの報道で「アダストリア」、第8位は「スパルタ研修施設で学ぶ・掃除テクニック」などの報道で「ダスキン」となった。第9位は「高架下に全国の人気飲食店が次々出店」などの報道で「東武鉄道」、第10位は「コロナで注目“触らずに生活できる”新技術」などの報道で「三井不動産」となった。

 

 

9月の人物ランキング

「第1位・NTT・澤田純社長、第2位・ソフトバンクグループ・孫正義取締役社長、第3位・NTTドコモ・吉澤和弘社長」

第1位・NTT・澤田純社長54件(ドコモ完全子会社化・NTTが発表・“携帯料金値下げ”影響は?など)、第2位・ソフトバンクグループ・孫正義取締役社長30件(“ソフトバンク”が自治体・法人向けPCR検査など)、第3位・NTTドコモ・吉澤和弘社長24件(NTT・ドコモを完全子会社化など)、第4位・楽天・三木谷浩史会長兼社長22件(携帯値下げが加速?楽天が新プランなど)、第5位・星野リゾート・星野佳路代表13件(格差も・GoToトラベル東京追加・成功のカギはなど)、第6位・アキダイ・秋葉弘道社長13件(秋の味覚・風物詩に“ある変化”など)、第7位・エイチアイエス・澤田秀雄会長兼社長9件(10年後に実現!宇宙ホテル・大ピンチこそ未来を見つめるなど)、第8位・トリドールホールディングス・粟田貴也社長8件(外食で初の1兆円企業へ!客殺到ハワイカフェの秘密など)、第9位・ウェザーニューズ・草開千仁社長8件(ハウワンダフルな事業を・ウェザーニューズの挑戦など)、第10位・日本銀行・黒田東彦総裁8件(日銀・金融政策決定会合「大規模な金融緩和策」維持など)。

 

 

●テレビの窓

「最先端技術の実証実験・スーパーシティを前橋市が申請」

ーパーシティは住民や企業のデータを活用しながら車の自動運転や遠隔医療など最先端技術の実証実験を街全体で行うもので、政府は今年12月から申請の受け付けを始める予定。前橋市は申請が認められれば個人を認証するための独自のシステムを作り、市が持つ住民の個人情報と民間の銀行口座などのデータを連携させて手ぶらで様々なサービスを受けられる街作りを目指す。例えばバスに乗った際にその場で料金を払わなくても乗車したことが記録され自動的に決済が行われたり、診察は自宅で受け薬はドローンで届けてもらう遠隔医療などを想定している。市は申請が認められれば1年かけて計画案を作成したうえで令和4年度以降に希望する市民を対象に実証実験を行うことにしている(NHK)。

 

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