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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年10月)

「新型コロナの影響・終電30分繰り上げ・日本経済への影響は?」

今月の特徴は1.菅新政権の動向、2.日銀の動向、3.コロナの影響、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.菅新政権の動向

菅政権内で加速しているのが、携帯電話料金の値下げ、行政のデジタル化、不妊治療の保険適用。携帯電話料金の値下げについて、NTTドコモなどの携帯大手3社は「値下げは不可避」と事実上の白旗を掲げ、3社は1~2ヶ月以内に新しい料金体系を公表する見込み。ソフトバンクは新たに月額5000円を下回る大容量のプランを検討している。携帯電話料金の値下げについて、首相が民間企業の経営に直接介入するようなやり方に閣僚経験者は「強引。人気取りがすぎる」と話している(TBS)。

 

2.日銀の動向

日銀は29日までの2日間、金融政策決定会合を開催した。今の大規模な金融緩和策を維持することを決め、影響を受ける企業への資金繰り支援を継続するとしている。また、日銀は経済と物価の最新の見通しの中で、国内の景気の現状について、引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が再開するもとで持ち直しているとした。一方で、ヨーロッパや米国で感染が再び拡大するなど、経済の先行きは依然として不透明な状態が続いているとしている。黒田総裁は記者会見で、ヨーロッパを中心とした、感染再拡大の影響について「引き続き不確実が高く下振れリスクは大きい」と述べた上で、必要があれば、来年3月末となっている企業への資金繰り支援策の期限を延長する考えを示した(NHK)。

 

3.コロナの影響

新型コロナによる倒産が相次いでいる。都内で最も倒産件数が多いのが渋谷区で、帝国データバンクによると新型コロナの影響で渋谷区では22件が倒産、特に飲食店が多いという。ANAホールディングスの記者会見では、最終損益が前年度276億円の黒字から一転、今年度は過去最大の5100億円の赤字になる見通しと発表した。国際線の利用者が約9割減っていて、近年進めてきた国際路線の拡大が裏目に出た形。再建策の1つとして、社員を別の企業に出向させ人件費削減を図ると発表。来年春までに家電量販店やスーパーなどへ400人を出向させる方針。JAL(日本航空)も30日、今年度最大2700億円の最終赤字になるとの業績予想を明らかにした。鉄道でも、JR東日本やJR東海は今年度の最終損益が民営化後、初の赤字となる見通し。鉄道航空業界の巨額の赤字見通しについて、第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミストは「これまでに得たノウハウを、違う業態で活用する方向性も求められる」とコメント。今後は、政府の支援策にも方針転換が必要だと指摘する(日テレ)。

 

4.エネルギーの動向

所信表明演説で、菅首相は、温室効果ガスについて、「我が国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言した(TBS)。国連は日本政府が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする方針を表明したことを歓迎した。国連の報道官は「再生可能エネルギーの普及で発展途上国を助けてくれると確信している」と述べた(NHK)。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする政府方針をめぐり、加藤官房長官は「現時点において、原発の新増設や建て替えは想定しない」と強調した。原発をめぐっては、自民党・世耕参院幹事長が「新しい技術を取り入れた原発の新設といったことも検討を進めていくことが重要ではないか」という考えを示していた(TBS)。

 

 

●注目点

「JR東日本が終電30分程度繰り上げ・経済への影響は?」

型コロナウイルスの影響で利用客が減少していることから、JR東日本は来年春から終電を約30分繰り上げると発表した。経済的への影響について経済アナリスト・森永康平は「外食産業全体としては首都圏でみると1500~2000億円くらいが毎月市場規模として指摘されている。単月で250億円くらい減収要因になる可能性がある」と指摘した。終電繰り上げの理由について、JR東日本・深澤祐二社長は「感染流行が収束した後も鉄道利用の水準は元に戻らない」為としている。テレワークも浸透していることからコロナ前には戻らないと判断したようだ。JR西日本西武小田急京急福岡西鉄も終電を早めるのではと言われている(TBS)。経済評論家・加谷珪一によると経済面のマイナスは大きく、サービス業や娯楽業を中心とした売り上げ減、中でも特に駅前の居酒屋などには大きな打撃が予想されるという。一部ではタクシー利用率が上がるという声もあるが、「コロナ禍で社会全体の景気が低迷する中、利用者が増える可能性は低い」と話している。鉄道ジャーナリスト・梅原淳は「影響は東京だけでなく全国に及ぶのではないか」などと指摘している(テレ朝)。

 

 

●新潮流

「日英EPAに署名・来年1月1日発効めざす」

茂木外相は東京都内で英国のトラス国際貿易相と会談し、日本と英国との間のEPA(包括的経済連携協定)に署名した。日英EPAは英国のEU(ヨーロッパ連合)離脱にともない交渉が行われていた。EU離脱後に英国が主要国間で結ぶ初めてのEPA。日英EPAでは関税の優遇措置が引き続き適用されるほか、自動車部品などの関税は即時撤廃。来年1月1日の発効を目指す。英国はTPP(環太平洋経済連携協定)への加入にも関心を示していて、トラス国際貿易相は西村経済再生担当相とも会談する(日テレ)。こうした中、トヨタ自動車日産自動車などの自動車大手が英国政府に対し、英国とEUがFTA・自由貿易協定を結べなかった場合に発生する関税コストの補償を求めていることが日本経済新聞の取材で分かった。通商交渉が決裂すれば英国からEUに輸出する乗用車に10%の関税が課せられ事業継続が難しくなる。英国の自動車工業会によると自動車業界の追加関税コストは年間45億ポンド、約6000億円に上る。英国の去年の自動車生産台数は約130万台で日産、トヨタ、ホンダの日本勢が約半分を占めている(テレ東)。 

 

 

10月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・セブン&アイ・ホールディングス、第2位・オリエンタルランド、第3位・KDDI」

10月度の「テレビ報道CM価値換算」では、「セブン&アイ・ホールディングス」が40億6100万円で第1位に輝いた。具体的にはイトーヨーカ堂が「創業から100周年を迎えた」ことや「味しみおでん」「タンパク質がとれるサラダ」等のプライベートブランド商品の販売などによるテレビ露出が多かったことが寄与した。第2位は「ディズニー・日付指定なしも入園可に」などの報道で「オリエンタルランド」となった。第3位は「携帯料金値下げへ“プラン”発表」などの報道で「KDDI」、第4位は「創業121年の国民食!吉野家を徹底調査」などの報道で「吉野家ホールディングス」、第5位は「鬼滅の刃・勢い止まらず・日本最速の100億円突破」などの報道で「東宝」、第6位は「携帯料金・値下げの動きが加速」などの報道で「ソフトバンク」、第7位は「フライドチキンがロッカーに・新サービス」などの報道で「日本KFCホールディングス」、第8位は「非接触最新テクノロジーを調査!」などの報道で「くら寿司」となった。第9位は「アップル5G対応iPhone発売」などの報道で「アップルジャパン」、第10位は「京都に超高級ホテル開業・1泊8万2000円~勝算は」などの報道で「三井不動産」となった。

 

 

10月の人物ランキング

「第1位・ANAホールディングス・片野坂真哉社長、第2位・楽天・三木谷浩史会長兼社長、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁」

第1位・ANAホールディングス・片野坂真哉社長48件(苦境・航空・鉄道が巨額赤字“コロナ自粛”影響直撃など)、第2位・楽天・三木谷浩史会長兼社長26件(新たな・がん治療法の薬が承認など)、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁23件(金繰り支援・期間延長も・日銀黒田総裁「先行き不確実性高い」など)、第4位・JR東日本・深澤祐二社長16件(終電最大37分繰り上げ・経済的ダメージは大など)、第5位・アキダイ・秋葉弘道社長15件(売り場に異変は?・秋の味覚など)、第6位・KDDI・高橋誠社長13件(携帯料金・値下げの動きが加速など)、第7位・NTT・澤田純社長10件(ドコモへのTOB「応募の場合早めの対応を」など)、第8位・NTTドコモ・吉澤和弘社長7件(ドコモ“低価格”に参戦か・他社新料金プランに対抗策など)、第9位・星野リゾート・星野佳路代表6件(GoToトラベルだけじゃない・自治体の補助で観光割引など)、第10位・ジップエア・西田真吾社長6件(ジップエア客室乗務員・約100人採用へなど)。

 

 

●テレビの窓

「新しい生活様式を快適に・IT見本市・CEATEC」

Tを中心に最新技術が集まる国内最大級の展示会「CEATEC2020」がオンラインで開催され、350を超える企業が参加した。ことしの最大の特徴は透明ディスプレイ、触らないタッチパネルなどwithコロナ時代の「新しい生活様式」を意識した最新技術が紹介された。新型コロナウイルスの患者の鼻の穴の中に入るPCR検査用の綿棒を医師が遠隔で操作することができる装置。実用化されれば患者のくしゃみによる飛沫を浴びることなく検体が採取できる。電子部品メーカーが開発した触らないタッチパネルは指を近づけるだけで操作ができ、接触感染を防ぐ効果がある。透明ディスプレイは、飲食店やオフィスなどあらゆる場所にコロナ対策として設置されているパーティションとしての役割だけでなく、空港の窓口や飲食店など様々な場面での活躍が期待できる。シャープは体温や脈拍数など4つの数値を体に触れずに測定できる装置を開発した。村田製作所グループのミライセンスが開発した技術「3D触力覚技術」は特殊な波形の振動で脳に錯覚を呼び起こすことで、将来的には離れた場所から医師が手術や患者の体に触って診断をする遠隔医療に活用できる(テレ朝)。

 

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