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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年11月)

「7-9月期GDP改定値・年率22.9%プラス」

今月の特徴は1.7-9月期GDP改定値・年率22.9%プラス、2.日銀の動向、3.コロナの影響、4.ワクチンの動向、5.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.7-9月期GDP改定値・年率22.9%プラス

内閣府はことし7月から9月のGDP(国内総生産)の改定値を発表し、年率に換算した実質の伸び率は+22.9%となった(12/8NHK)。20%を超える大きな伸びだが、コロナ前の状態に回復するには時間がかかりそうである。緊急事態宣言の解除後GoToキャンペーンなどの後押しもあり、外食や旅行などの消費が戻ってきているが、それでも戦後最大となった4月-6月にかけての落ち込みの半分程度しか取り戻せていない上、年明けの景気には不安が残ると専門家は指摘している(テレ朝)。

 

2.日銀の動向

日銀は10日、政策委員会の通常会合を開き、特別制度の導入を決定した。支援の対象はコスト削減や経営統合などを通じ経営基盤を強化しようとする地方銀行や信用金庫となる。日銀に預けている当座預金に年0.1%の上乗せ金利を支払うとしている。制度の申込期間は今年度から2022年度までの3年間で今後制度の詳細を決めた上で実施する。信用組合、労働金庫、農協、漁協を対象に含めるか関係先との協議を踏まえ決定する。日銀としては新型コロナウイルスの影響が長期化することも見据え、地域金融機関の経営改善を促し地方経済の下支えにつなげたい考え(NHK)。

 

3.コロナの影響

企業の間では、コロナ禍の長期化に備えようという動きが出てきている。経営が悪化している航空大手・ANAホールディングスは、財務基盤を強化するため、新たに株式を発行し、最大3300億円程度を調達すると発表。国内外の投資家向けに新たに株式を発行する公募増資などで、来年1月までに最大で3321億円程度の資金を調達し、財務基盤を強化する。ANAは、新型コロナウイルスの影響で利用客が大幅に落ち込み、今年度はグループ全体の最終的な損益が過去最大の5100億円の赤字に陥る見通し。感染拡大後、取り引き先の金融機関から劣後ローンで4000億円の融資を受けることを決めているが、感染が収束する見通しが立たない中、財務基盤をさらに強化する必要があると判断した。ANAが公募増資を行うのは8年ぶりで、増資で得られた資金を将来の需要の回復を見据えて、二酸化炭素の排出が少ない新型の旅客機の購入や長期債務の返済などに充てる方針。日本の航空業界では、日本航空も今月、公募増資を行って1800億円余を調達する方針を明らかにしている(NHK)。

 

4.ワクチンの動向

英国フィナンシャルタイムズは「ファイザーなどが開発したワクチンを英国規制当局が緊急承認する見通し」と報じた。早くて12月7日にも接種が始まるとしている。フィナンシャルタイムズによると「英国は西側諸国で最初の新型コロナウイルスワクチンの承認国になる用意がある」としている。米国製薬大手ファイザーとドイツ企業で共同開発している新型コロナウイルスワクチンは臨床試験の最終結果で有効性95%。米国では12月10日に承認審査、12月11日に接種開始の見通し。米国ファイザーは来年6月末までに約6000万人分の日本へのワクチンを供給予定(フジ)。

 

5.エネルギーの動向

再生可能エネルギーとして普及が期待されながら日本では普及が遅れている洋上風力発電について、千葉県の銚子市沖など、促進区域に指定された4つの区域で発電を希望する事業者の公募が始まった。洋上風力発電には風車の土台を海底に固定する着床式と、海上に浮かべる浮体式の2種類があるが、着床式の公募は今回が初めてである。受け付けは来年5月までで、選ばれた事業者は30年間、該当する海域を使用することができる(NHK)。セブン-イレブン・ジャパンは“再生可能エネルギー100%”の店舗運営の実証実験を行っている。太陽光発電で電力を創り、夜間は電気自動車のリユースバッテリーから誕生したオリジナル蓄電池で電力を貯めて利用している。災害時などには蓄電池に貯めた電力を店舗の冷蔵ケース稼働に使用し、地域のライフラインを担っている。また海のプラスチックごみ問題を背景にペットボトル回収も行いプラスチックごみ対策も行っている。店舗の前には「ボトルtoボトルを推進するペットボトル回収機」が設置されていて、ペットボトル5本でnanacoポイントが1ポイント付与される仕組みになっている(TBS)。

 

 

●注目点

「トヨタがタイ・インドネシアでEV発売」

ヨタ自動車は、電気自動車をタイとインドネシアで販売すると発表した。販売するのはレクサスブランドの小型SUV=多目的スポーツ車で、車両は日本から輸出する。1回の充電で360キロの走行が可能で、価格は日本円にして約1200万円。東南アジアに電気自動車を投入するのはトヨタとしては初めてである。電気自動車では、中国など海外メーカーが積極的に新車を投入していて、この分野の競争が激しくなることが予測されている。日本政府はこれまでのところ、ガソリン車、あるいはディーゼル車の新車販売禁止を打ち出していないが、2050年までに、脱炭素社会を実現させるためには、二酸化炭素を排出する車は販売のみならず、使用もできなくなると考えられる。当面は、燃費を向上させることで排出量を減らす方針で、燃費規制を今のリッター20キロから、2030年度には1.5倍に引き上げる方針。ちなみに電気でモーターを動かして走行するのが電気自動車で、水素をエネルギー源にして、充電しながら走るのが燃料電池車である。これらの車は走行中に温室効果ガスを出さない、いわゆるゼロエミッションカーと呼ばれている。このほか、ガソリンを燃焼させてエンジンを動かし、走行中に充電、発電された電気で走行するのがハイブリッド車である。電気自動車のように、バッテリーを外部電力で充電して、必要に応じてガソリンで走る車をプラグインハイブリッド車という(NHK)。

 

 

●新潮流

「コロナ不況も株価29年ぶり高値」

生労働省はコロナの影響で7万1000人余が解雇されたと発表。年末に向けて中小企業などの廃業が増加する懸念も高まっている。コロナ不況とも言われる一方で、株価の値上がりが止まらない。東京株式市場で日経平均株価が29年ぶりに2万6000円を突破した。一連の株高の動きはニューヨーク株式市場から波及した。11月16日、新型コロナウイルスのワクチン実用化への期待から株価は3万ドルに迫る史上最高値をつけ、これを受けた東京市場も航空会社や鉄道会社の株などが買い戻され、値上がりした。日経平均株価は終値で2万6014円をつけ、バブル期の1991年5月以来約29年ぶりに2万6000円を上回った。各国の新型コロナへの経済対策のお金が回り回って株価上昇を支えている面がある。具体的には米国、日本、ヨーロッパの中央銀行がコロナで打撃を受けている経済を下支えするために市場に大量のお金を流している。野村證券によると日米欧だけで3~10月中旬で710兆円ものお金が流れた。こうしたことからバブルを懸念する声も出てきている(テレ朝)。 

 

 

11月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・すかいらーくホールディングス、第2位・モスフードサービス、第3位・宇宙航空研究開発機構」

2020年11月度における「テレビ報道CM価値換算」では、「すかいらーくホールディングス」が27億5200万円で第1位に輝いた。具体的にはグループ内の専門店「から好し」をガストに取り入れたという内容の報道や、「全体の9割程度にあたるおよそ2800店舗で、大晦日と元日の営業時間を最大で7時間あまり短縮する」などの露出が寄与した。第2位は「帰れま10・モスバーガーのメニューベスト10」などの報道で「モスフードサービス」となった。第3位は「はやぶさ2・カプセル12月6日帰還へ」などの報道で「宇宙航空研究開発機構」、第4位は「これが新スタジアムだ 8Kで体感! 国立競技場」などの報道で「大成建設」、第5位は「ズムサタvsシューイチvsバゲットvsヒルナン・テーマ・秋の紅葉狩りデートコーデ」などの報道で「バロックジャパンリミテッド」、第6位は「ユニクロ・人気コラボ商品・発売で客殺到」などの報道で「ファーストリテイリング」、第7位は「商品&人材戦略で大成功・異端児社長の大胆経営!」などの報道で「キリンホールディングス」、第8位は「ソニー対クラウド天王山」などの報道で「ソニー」となった。第9位は「活況!業務スーパー・食品価格の意外な実態」などの報道で「神戸物産」、第10位は「楽天・唾液・PCR検査キット販売」などの報道で「楽天」となった。

 

 

11月の人物ランキング

「第1位・星野リゾート・星野佳路代表、第2位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長、第3位・JR東日本・深澤祐二社長」

第1位・星野リゾート・星野佳路代表12件(逆境に負けない観光業・講師・星野佳路など)、第2位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長11件(~“SDGsと資本主義”~など)、第3位・JR東日本・深澤祐二社長10件(JR東日本「時差通勤」でポイント還元へなど)、第4位・アキダイ・秋葉弘道社長10件(防止・レジ袋有料化で急増!?エコバッグ万引きなど)、第5位・日本銀行・黒田東彦総裁10件(日銀支援で再編進むか?など)、第6位・キリンホールディングス・礒崎功典社長8件(売り場に異変は?・秋の味覚など)、第7位・ANAホールディングス・片野坂真哉社長7件(不安・新型コロナの影響は・大手企業の雇用にも…など)、第8位・トヨタ自動車・豊田章男社長7件(携帯料金・値下げの動きが加速など)、第9位・マザーハウス・山口絵理子社長6件(途上国から世界ブランドを・女性リーダーの挑戦!など)、第10位・神戸物産・沼田博和社長6件(大手に負けない店を作れ!独自商品に挑んだ親子物語など)。

 

 

●テレビの窓

「鬼滅の刃ブームにあやかり企業がコラボ」

画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が大ヒットするなど、とどまるところを知らない“鬼滅人気”が、意外な場所にも影響を与えている。企業はこの人気をチャンスと捉え、さまざまな関連商品を発売している。「鬼滅の刃」の人気に、企業とのオフィシャルコラボも登場。コンビニ大手・ローソンでは、11月10日から「鬼滅の刃」のキャラクターをパッケージにデザインした商品「『鬼滅の刃』いちごミルク(198円)」の販売をスタートさせた。JR九州と「鬼滅の刃」がコラボした「SL鬼滅の刃」が熊本駅に登場。映画「無限列車」を再現するためプレートには「無限」の文字が描かれている。山梨・北杜市の写真スタジオでは七五三の撮影をすると「鬼滅の刃」のキャラクターに扮して撮影ができる無料サービスがついてくる。日清食品は「出前一丁」ならぬ「鬼滅一丁」を発売。限定キャンペーンではカップ麺のふたどめフィギュアが当たる。ダイドードリンコはコーヒーのコラボ缶を発売。デザインは全28種類。販売数は昨年同月比の約1.5倍。北海道の競馬場の騎手の服の柄が主人公・炭治郎の服とそっくりと話題に。今回のブームをきっかけに応援する鬼滅ファンが増え、牧場には馬のエサのニンジンが届くようになったという(日テレ)。

 

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