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『第3の目』
ドキュメント・アナライザー による分析

「サブプライムローン問題」の軌跡を検証

 この7月俄に世界資本市場の不安要素として浮上した「米国のサブプライムローン危機」問題。この問題が、日米欧の中央銀行をして市場の資金流通量を大幅に増加させたり、政策金利の引き下げを決断させたり、はたまた日銀にも公定歩合の引き上げを断念せざるをえない状況に追い込んだ。
 7月時点では、米連邦準備委員会(FRB)のバーナンキ議長が最大1千億ドルと見積もっていた損失見通しが、9月24日には国際通貨基金(IMF)によって最大2千億ドルの損害をもたらす可能性があるとの試算をあきらかにさせるまでになった。
欧州ではこの問題により、金融機関の合従連衡の動きさえ起こっている。
 この問題の非常にややこしいところは、米国の信用力に乏しい住宅購入者に銀行が資金を貸し付け、しかも貸付債権を他の金融機関等に金融債権として売却したところにある。その大量の債権が国境をまたぎヨーロッパや日本の金融機関等に浸透してしまったところにその複雑で、影響が大きい本質がある。この問題は、早期には解決できず、相当長い間日米欧の金融・資本市場に燻りつづけると考えた方が妥当である。
 日米欧という先進資本主義国を襲うこの「サブプライムローン危機」という大問題をテレビメディアはどう扱ってきたのか、そしてその実体はどうなのか、7月から9月中旬までを『ドキュメント・アナライザー』を用い定量的に追跡・分析した。

 調査期間は7月1日から9月19日までとした。
 対象とするテレビ局は、東京地区のNHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京、とした。

(調査内容)
1、 サブプライムローン問題が浮上した7月から最近までの報道番組の局別総時間(日別)
2、 サブプライムローン問題が浮上した7月から最近までの経済関係のテレビ報道の局別総回数(日別)
3、 サブプライムローン問題が浮上した7月から最近までの経済関係のテレビ報道の局別総時間(日別)
4、 サブプライムローン問題に関するこの間のテレビ報道の局別総時間(日別)
5、 経済関連報道に占めるサブプライムローン問題の局別比率(日別)
6、 報道内容の変極点の考察
7、 この問題についての各局の報道姿勢
8、 まとめ
6、報道内容の変極点の考察
以下に変極点とその報道要約を列挙する。


① 米国景気は住宅市場の調整はまだ続くが生産活動に底入れ感がでており景気は緩やかに上昇。サブプライムローン問題については金融機関が損失吸収可能。信用売り残の積み上がり、M&Aで流通する株が減少で相場上昇の可能性が高い。(7月5日)

② 米国サブプライム問題?ローン自体が問題ではない。サブプライムローンを組み込んだ債権格付けへの懸念。今になって見直し。タイミングのずれ?急に円高が進んだのはサブプライムローンを組み込み、債権の暴落懸念→リスク回避→円キャリー取引手控え→円高。(7月11日)

③ ウォールストリートジャーナル電子版はヘッジファンド2社がサブプライムローンなどを担保とする債権に投資、約1900億円の資産が無価値になったと説明。(7月18日)

④ 予想を下回る業績発表が相次ぎ、サブプライムローン問題の再燃で大幅下落。NYダウは13716.95(-226.47)、ナスダックは2639.86(-50.72)。株安を受けてNY外国為替市場もドル売りが広がり120円台。
 NHK総合『ニュース7』 2007-07-25 19:18:01 - 19:19:25
【野村ホールディングス・米国での事業見直し検討へ】
証券業界最大手の野村ホールディングスは、300億円を上回る損失を計上し、米国での事業の抜本的な見直しを検討することになった。24日のニューヨーク市場でも住宅ローン専門会社の業績悪化をきっかけに株価が大幅に値下がり。野村ホールディングスの会見。野村ホールディングスは6月末の時点でも、サブプライムローン関連で700億円余の残高がある。(7月25日)

⑤ 米国では住宅ローン大手・アメリカンホームモーゲージインベストメントが破産法の適用を申請する見通しと複数のメディアが報じた。またドイツでは、IKB産業銀行がサブプライムローンに絡んだ投資で損失し筆頭株主の政府系金融機関が1兆円以上の資金支援に乗り出す。ドイツの中央銀行総裁は不安の沈静化に努めているが、ヨーロッパの他の銀行にも影響をするのではとの懸念もある。(8月3日)

⑥ ECB(欧州中央銀行)は9日、サブプライムローン問題による信用不安の拡大を防ぐため15兆円以上を市場に緊急供給。大規模な緊急供給は米同時テロ以来。資金供給量は948億ユーロ(約15兆円4000億円)。背景にあるのは仏BNPパリバがサブプライムローン問題の影響で傘下の3ファンドを凍結すると発表したこと。9日のヨーロッパ主要株式相場は全面安で米国株も急落。(8月10日)
 NHK総合『ニュースウォッチ9』 2007-08-10 21:02:05 - 21:09:23
【世界株安・原因はまたも米国住宅ローン問題】
ロンドン・122.7ポイント、ニューヨーク・378.18ドル、東京・406.51円の下落。米国・低所得者向け住宅ローン「サブプライムローン」は利用者が増えていた。債権は証券に形を変え発行されヘッジファンドや金融機関など世界中の投資家に売られていた。米国ではローンを返すことができない利用者が増え、ローンが不良債権化し証券に損失が発生し投資家に影響が広がった。6月には米国・ヘッジファンドが巨額損失、ドイツ・中堅銀行が経営悪化、フランス・大手金融機関(BNP PARIBAS)が参加ファンドの運用凍結したと発表した。損失穴埋めのため、世界中の株を売却する動きが広がった。こうした中、日・米・欧の中央銀行が動いた。ヨーロッパ中央銀行(ECB)は948億ユーロ供給、米国・連邦準備制度理事会(FRB)も240億ドル供給した。しかしニューヨーク市場は2007年2番目の下げ幅を記録した。日銀は資金1兆円を支給したが日経平均株価は400円以上値下がりした。アジアにも影響が広がり、東京・406.51円、韓国4.2%、香港・2.9%、フィリピン・3.0%の下落となっている。
テレビ朝日『報道ステーション』 2007-08-10 22:31:25 - 22:37:55
【またも世界同時株安】
今回はパリから世界に広がった。引き金となったのは低所得者向け住宅ローン・サブプライムローンの焦げ付き。フランス・BNPパリバは3つの傘下投資ファンドを資産価値を適正に評価できないとし凍結。(8月10日)
TBSテレビ『筑紫哲也ニュース23』 2007-08-10 23:34:32 - 23:36:49
【株価急落・米国住宅ローン焦げ付き問題】
米国住宅ローン焦げ付き問題・サブプライムショックが世界の金融市場を揺さぶっている。米国から始まった株安はヨーロッパを経由して日本にも波及。ロンドン・東京・ニューヨークの株価の値下がりを表示。東京証券取引所の映像。日経平均株価のグラフ。下落の引き金となったのはサブプライムローン問題。サブプライムについて説明。フィスコ株式リサーチ部・村瀬智一部長のコメント。フランス金融グループ・BNPパリバがファンドの凍結を発表し、影響がヨーロッパにも及んでいることが発覚。欧州中央銀行が金融市場に15兆円もの資金供給したこともかえって問題の深刻さを印象付けた。この資金供給に米国・FRBと日銀も協調。(8月10日)

⑦ 【日銀利上げ見送りへ】
今回の金融政策決定会合ではサブプライムローン問題の日本経済への影響を検証。先週世界各国で株式相場急落し、為替相場で一時1ドル=111円台に急騰。円高で輸出企業の業績悪化懸念。日銀は利上げを見送る見通し。米国FRBが緊急で公定歩合を引き下げた中で日銀が利上げに踏み切るのは難しいとみられる。
【日銀・利上げ見送りへ】
日銀は22日から2日間の日程で金融政策決定会合を開く。会合ではサブプライムローン問題が日本経済に与える影響などを検証する。世界各国で株式相場が急落し、日経平均も先週7年ぶりの急落となった。為替相場は急速な円高が進み、111円台まで急騰した。円高で輸出企業の業績が悪化する懸念も出ているなか、日銀は不安定な市場の動きが日本の実体経済にどの程度影響を与えるのか慎重に見極める必要があるとして、利上げを見送る見通し。米国・FRBが緊急利下げを実施しているなかで日銀が利上げに踏み切るのは難しいと見られる。
【米国・FRBバーナンキ議長・あらゆる手段を活用】
サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱について、米国・FRB・バーナンキ議長は21日、ポールソン財務長官と共に議会を訪れ、上院銀行住宅都市委員会・ドッド委員長と会談し、あらゆる手段を活用して市場の混乱に歯止めをかける用意があるとの決意を表明した。FRBは金融不安を食い止めるため先週、公定歩合を緊急に0.5%引き下げた。一方FF金利は据え置いた。今後の金融市場の動向によっては議会からFF金利の引き下げを求める声が強まる可能性もある。(8月22日)

⑧ NHK総合『ニュースウォッチ9』 2007-08-23 21:26:02 - 21:33:35
【日銀・利上げ見送り】
日本銀行は短期市場金利の引き上げを見送った。短期市場金利は住宅ローンや企業融資にも影響を与える。金利を低く抑えるため、日銀は資金を市場に大量に供給し続け、銀行は企業に低い金利で融資を行なってきた。日本経済の回復で市場は過剰な設備投資や不動産の買占めの懸念が広がり始めたため、日銀は金利を引き上げようとした。日銀は2006年7月から金利を上げていて、8月にも金利が上がるといわれていたが、米国・サブプライムローン問題で世界同時株安が起き、急激な円高が進んだため、日銀は金利の引き上げを見送った。今月初めの市場関係者の見方は「利上げある」80%だったが、23日次点では10%となっている。住宅問題で市場が大混乱し、欧米の中央銀行、日銀は市場に大量の資金を供給し、米国・FRBが公定歩合を引き下げる対応をしたため日銀が利上げをすれば、足並みが乱れ市場が混乱する恐れもあった。9月6日にECB、9月18にFRBが金融政策決定会合が行なわれ、19日に日銀の金融政策会合が行なわれるため、各国の対応をみながらの判断となる。(8月23日)

⑨ サブプライムローン証券市場関連の懸念が再燃。消費者信頼感指数や住宅価格指数の低下が株価下落の要因。住宅建設と不動産業界の人員削減数は去年の2倍。金融業界の人員削減数は07年7月時点で約8万5000人(05年約5万人)。雇用が悪化すると消費にも影響。今後の雇用の経済指標に注目。
NHK総合『NHKニュース』 2007-08-29 08:32:51 - 08:34:02
【NY株価・大幅に下落】
28日のNY市場では、同日発表された統計で8月の個人消費が7月よりも大きく低下していたことから、サブプライムローン問題が米国の実体経済にも悪影響を及ぼしているのではないかという懸念が広がって、平均株価が280ドル余値下がりした。外国為替市場ではドルが売られて円高が進み、1ドル114円台で取引されている。東京株式市場への影響が注目されている(8月29日)

⑩ 【米国、借り手救済で対応策】
ブッシュ大統領・サブプライムローン対策発表会見映像。対応策は、低所得者向けローンの適用条件拡大や、値下がり住宅売却時に税制面で優遇するなど。(9月1日)

⑪ 【英国・銀行で取り付け騒ぎ】
米国のサブプライムローン問題の余波で英国の銀行で取り付け騒ぎが起きている。英国住宅金融大手ノーザンロック銀行は市場からの資金調達に行き詰まり、中央銀行であるイングランド銀行から緊急融資を受けた。しかし預金者の不安は解消されず、これまでに少なくとも5000億円が引き出されたと見られている。
18日から米国でFOMCが始まり、0.5%の利下げが予想され、マーケットの金融不安に対する対処で、マーケットから好感されるような利下げ幅でないと意味はないと考えており、公定歩合も0.5%下げる可能性がある。(9月18日)

⑫ FRBは18日にFOMCでフェデラルファンド金利の誘導目標を引き下げ年4.75%に決定し、即日実施した。利下げは2003年6月以来となる。公定歩合も5.25%に引き下げた。
日銀・福井総裁会見。米国のサブプライムローン問題の影響について、景気不透明は長引く可能性を示し注意してみていく事を明らかにした。
【世界経済・不確実性増加】
日銀・福井総裁は「アメリカのサブプライムローンの焦げつきの影響で世界経済の不確実性が増加している。混乱の解消までにどの位時間が必要か判断するのは容易ではない。日本経済への影響は判断するためにはもう少し時間をかけたい」と述べ、長期化する可能性があるという認識を示した。(9月19日)

⑬ 欧米大手銀行・巨額の円調達・相次ぐ
アメリカの低所得者向け住宅ローン・サブプライムローン問題の影響で、欧米の金融市場の混乱が続いているため,欧米の大手銀行が東京市場で1000億円を超える規模の円を調達する動きが相次いでいます。このうちドイツ銀行は1470億円、バンクオブアメリカは2300億円、ロイヤルバンクオブスコットランドグループは1000億円を調達。(9月24日)


7、 この問題についての各局の報道姿勢
 テレビ東京は、さすがに経済報道に強いだけあり7月以前から報道を続けてきた。
 NHKがこの報道に本腰を入れ始めたのは7月25日の「証券業界最大手の野村ホールディングスは、300億円を上回る損失を計上し、米国での事業の抜本的な見直しを検討することになった。」という報道からである。この時は、野村ホールディングスの損失を報じただけだった。
 しかもこの問題で世界同時株安、米欧の政策金利の切り下げに発展する大ショックに発展であると認識し始めたのは、「ECB(欧州中央銀行)は9日、サブプライムローン問題による信用不安の拡大を防ぐため15兆円以上を市場に緊急供給」のニュースが流れる数日前からである。
 「取引開始から90%を超える銘柄が値下がりし、終値は418円の下落で東京市場は全面安となった。原因は米国、平均株価が一時450ドル近く値下がった。その理由は所得が低い人向けの住宅ローン『サブプライムローン』であった。『サブプライムローン』の焦げ付きで金融機関・ヘッジファンドで多額の損失が表面化した」と報じる7月27日の段階では、まだ単純なサブプライムローン焦げ付き問題との認識であった。
 7月20日の段階ではテレビ東京でさえも『Newsモーニング・サテライト』 で、「IBMの好決算が好感されダウは上昇、FOMC議事録が午後発表され利下げは当分ないとの観測で上昇幅は縮小したが引けにかけて上昇」との報道をしているようにこの問題の深刻さについてはまったく報道されなかった。
 ともあれ、この問題については終始テレビ東京が米国発のニュースを中心に朝早くから報道し、それにNHKがこの問題に関する大きなニュースが飛び込むとそれを報道するといった姿勢が際立った。
 日本の場合、国際経済に関する報道は国内政治問題に比較すると、テレビメディアがそれ程力を入れ難い分野であるようだ。


8、 まとめ
 今回の問題が引き起こしたショックは、欧米日の各中央銀行が「資金の緊急供給」「政策金利の引き下げまたは引き下げを断念する」といった事態を引き起こした。
 資本市場も株式の乱高下や円高を呼び、9月24日にはNHKが欧米の金融機関が日本市場から巨額の資金調達を試みていると報じた。
これまでのこの問題の報道ピークは、8月10から18日までであるが、9月17日から新たなピークを迎えているようでもある。
 又7月25日から9月3日までの期間の経済ニュースは、かなり高い比率でこの問題が報道時間を占めている。(報道の比率表を参照)
これからもこの問題は、日米欧の先進資本主義国に大きな影響を与えて行く気配を感じさせる。

【統計資料より抜粋】


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